▽倉間視点

恋人になったからといって、変わったことなんて特にはない。
いつものように、学校へ行って授業を受けて、放課後はサッカーをして、そして帰って寝る。毎日がその繰り返しだ。空野と付き合い始めて変わったこと、ただ一つあるとすれば空野と一緒に帰るようになったぐらいか。付き合いたての頃に比べれば会話も増えて、自然に笑えるようにもなった。それだけで俺は満足だったはずなのに、最近では満足できないようになった。
空野にもっと触れたい、抱きしめたい、キスしたい、そんないやらしい感情が俺の心の中にある。空野はきっとそんな俺を知ったら軽蔑するだろう。男の俺が考えていることなんて、女の空野にしてみれば決していいものではないから。

なんて言ってはみるが、ただ俺は逃げているだけだ。触れたいけど触れられないのも、抱きしめたいけど抱きしめられないのも、キスしたいけどキスできないのも、全て勇気が出なくて逃げているだけ。一歩も踏み出すことが出来ずに自ら空野との距離を作っているわけだ。情けないって分かってる。でも、もし触れようとして拒否されたらと思うと怖い。男の癖に、なんて言って空野は笑うかもしれない。

「まじで俺ださすぎ」

そんな自分を嘲笑しながら呟いた言葉に意外にも反応があった。

「何がダサいんですか?」

ゆっくりと振り向けばクーラーボックスを腕に抱えた空野が立っていた。軽々といったような感じでクーラーボックスを持っているところに少し腹が立ったが今はそんなことどうでもいい。
俺はほんの少し勇気を振り絞ってみようと決心した。キス、までは流石に無理だろうからまずは手を握るくらいのことをしてみようか、と思ったけど今こいつクーラーボックスで手が塞がってるからそれは無理だし、ってことは抱きしめることもできない…。つまりはキスしか選択肢には残っていないわけで、いきなりキスなんて…無理に決まっているだろう。いや、でもいきなりキスは流石に引くか?でもいつまでも進展なしっていうのも男としてどうなんだと言われそうだ。
考えれば考えるほど訳が分からなくなっていく。空野も流石に待ちきれないのかイライラが表情に出てきている。

「倉間先輩、言いたいことあるんじゃないですか?」
「あ、あ、の、な、」
「はい」

まっすぐ空野に見つめられるととてもじゃないが、言えそうにない。というかどんな状況でも「キスしたい」なんて簡単に言えるもんじゃない。相手が初キスともなると、更にだ。さて、どうしたもんか。

さりげなく嫌がられずに触れられる方法があるなら、ぜひ俺に教えて欲しいもんだ。


さり気なくの方法を教えて


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