▽雪村視点
この人はよく分からない。いつもニコニコ笑っているだけで、あまり喋らないし。あ、でも喋らないのは俺が相手だからか。…よく分かんないや。けど喋ったとしても二言三言で終わるだろうから、別に話そうとも思わないけど。
「雪村君の写真撮ったの」
「あ、どうも」
いつの間にか俺の写真を撮っていたらしく、山菜さんは俺に俺が映っている画像を見せてそう言った。その画像に映っている俺は、まるで俺じゃないようなほど輝いていてそして笑っていた。俺って、サッカーしてる時こんなに笑ってるんだ。山菜さんの画像を見て、初めて気づいた。何だか急に恥ずかしくなって、俺はその画像を消してくださいと頼んだけど山菜さんはもう一度パシャリと俺を撮ってくるだけ。
「あ、の」
「今日撮った写真は全部私の大事な宝物だから、消せない」
「いや、俺が映ってるのだけでいいんで」
それも駄目と山菜さんは首を横に振った。そして優しく微笑む。突然そんな顔されて、俺はドキリと胸が高鳴ったのを感じる。…笑うと可愛い。じゃなくて、ドキリって何。何ときめいてんだろ俺。この人といると調子狂う。
もうそんな風に笑いかけないで欲しい。わけがわからなくなる。
「雪村君のこと、もっとたくさん撮りたいな。駄目?」
「俺を撮ってもつまらないですよ」
「ううん、そんなことない。雪村君のこともっと知りたいの」
そう言われて俺はさらに分からなくなった。この人、一体何考えてんだろう。こんな期待させるようなこと言って、何をしたいんだろう。本当に…よく分からない。
俺にはまだわからない
(この人の考えてることは)
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