▽春奈視点

私からすれば木暮君は弟みたいなもので、恋とか愛とかそういう感情を抱くことはないと思っていた。それなのに、木暮君のふとした瞬間の仕草や表情に胸がドキリとなるようになった。無邪気に笑う顔が可愛いなとか、意外と男らしいとことか…気づけば気になる存在になっていた。目が合う度にドキドキする。ドキドキするたびに深呼吸してみて気持ちを落ち着かせようとしても逆にひどくなっているような感じ。もしかして。

これって恋、なのかな。

***

「木暮君!!また悪戯したでしょ!」
「ウシシシッ。騙される方が悪いんだろ〜」

今日もまた木暮君の悪戯の被害者が出た。立向居君だ。彼のグローブの中に大量のビーズを詰め込んでいたらしい。毎回悪戯は随分と可愛いものだから、本気で怒ったことは今まで一度もない。理由は多分それだけじゃないかもしれないけれど。少し考え込んでしまって、私はいつの間にか木暮君を追いかけるのをやめていた。立ち止まって俯いていたら、木暮君が戻ってきて声をかけてくる。

「…おい、大丈夫か?腹でも痛い?」
「あはは、違うよ。なんでもない…それより捕まえたっ!」
「うわっひ、卑怯だ!そんなのありかよ!」

心配してくれたってことが嬉しくてニヤける頬、それを隠すように私は木暮君を捕まえてデコピンを食らわせた。木暮君は悔しそうな表情をしながら暴れる。でも木暮君の力はわずかに私には及ばずに、逃げ出すことはできない。可愛いなあ、なんて思いながらクスリと小さく笑ってしまう。すると木暮君は拗ねたようにそっぽ向いてしまった。そんな木暮君がたまらなく愛しく感じる。

「木暮君顔真っ赤だよ?可愛い!」
「う、うるさい!!音無のばーか!!」

クスクスと笑う春奈にドキリとしつつも木暮はバタバタと暴れて春奈の腕から逃げようと試みる。が逃げれそうにない。当分


これって恋、ですか?
(恋のようです)


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