ベンチに座って部員を応援していた水鳥の肩に突然誰かの頭が乗っかった。どうせ茜だろうと、水鳥は確かめもせずに応援を続ける。茜が水鳥の肩に頭を乗せて甘えたりすることがよくあるため、今回も茜と信じて疑わなかったのだが、100%茜であるとは限らない。しかし水鳥は茜と信じきっているため、確認をするなどという選択肢はなかったのだ。水鳥が違和感を感じたのはそれから10分経ってからのことだ。たまたま頬に当たった毛が、茜のふわふわしていて甘い匂いがするものとは違ったのだ。今頬に当たった毛はふわふわというよりツンツンで、匂いも甘いものではない。水鳥は恐る恐るその毛の人物を見れば、1年生の剣城京介だった。

「な、なな、つ、剣城?!」
「…気づくの遅いですね」

予想もしなかった人物がそこにいたため、水鳥は自分でも驚くほどの声を出していた。その驚かせた本人は気づくのが遅かったことに腹を立てているのかブソっとしたいつもの表情を浮かべている。水鳥はとりあえず落ち着こうと深呼吸を一つしてみるが、一度高鳴った心臓は中々落ち着こうとはしない。剣城はそんな水鳥を見て小さく笑って、背を向けた。
 水鳥は背を向けた剣城を見て何故かユニフォームを引っ張ってしまった。

「…?」
「あ、え、あれ?何であたし、剣城のユニフォームを…?」

自分でもわけが分からずあれあれと言葉を繰り返していると剣城は先程と同じように優しい笑みを一瞬だけ浮かべた。そして落ち着いてください、とでも言うように頭をぽんぽんと撫でた。今までその行為は水鳥が茜にしてきた行為で、されたことなど一度もなかったのだ。だからどう反応していいか分からない水鳥は頬を染めて、剣城を見る。するとそこであまりの顔の近さに更に頬を染めた。剣城は頬を真っ赤に染めた水鳥を見てぷっと吹き出したかと思うと、そのまま顔を近づけ頬に口付けた。

「、っ」
「…先輩の反応が可愛すぎるから悪いんですよ?」

それからそう耳元で囁かれる。水鳥が口付けられた頬を押さえて剣城を見れば、彼は悪魔のような笑顔を浮かべていた。年下のくせに生意気なんだよ、そう言おうと開いた口はいつのまにか閉じられていた。


甘えなのか悪戯なのか
(どっちにしろ心臓に悪いっての!)

−−−−−
パトロールさんへ。
甘えん坊剣城さんと水鳥さん


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