これがわたしの運命で構わない



「よう蓮、元気かい」
「はい、先日の強盗の件はありがとうございました!」

まあいいってことよ、沖田さんがへらっと手をふった、そのときだった。


「たーいーちょーうっ!」

ものすごい勢いで何かがすり抜けたと思ったら次の瞬間、すらりと立った沖田さんに少女が飛びついた。

「隊長!おつかれさま!」

可愛らしい声でそう言って、ぎゅううと隊長にしがみつく加恋におもわずぎょっとした。


「ちょっ……ちょっとォォォ!
何してんの加恋ちゃん!だめじゃない天下の真選組一番隊隊長に何てことしてんの!」

つーか知り合い!?混乱しつつも慌ててたしなめる。

が、少女は聞く耳を持たなかった。

「たいちょーう迎えにきてくれたのね!」

心底嬉しそうにしがみついて、その胸にすりすりと頬を寄せる加恋を口をぱくぱくさせながらガン見する。

沖田さんは鬱陶しそうにその戯れを手で抑えながら、俺に投げかける。

「わりぃね、うちの部下が邪魔んなって」
「あぁいえ、邪魔だなんてそんなことは。
…て、いうか、え?」


え、部下?は?誰が?

そこまで考えて俺はぎょっと飛びのいた。

……………え?

ええええええ!?じゃあ……加恋ちゃんのすきなひとって沖田さん!?

「ちょ、ええ!?」

一人で騒ぐ俺を怪訝そうに見ながら、いつまでも絡みつく加恋ちゃんの頭をしつこい、とたたく沖田さん。

ふたりの姿は現実味がないようで、しかしどこか自然な様だった。

慣れたような仕種に呆然と瞬きをする。


「あの、沖田さん…」
「ん?」

それ、と恐る恐る少女を指させば沖田さんはあぁ、と頷いて面倒くさそうに欠伸をした。


「女でさァ、俺の」


俺がこいつのあるじ的な。
お腹すいた、くらいのノリでそうかました沖田さんの声に、町の喧騒が消え去った気がした。


女でさ、俺の。
おんなでさ、おれの。
オンナ、オレノ、オンナ

繰り返し繰り返し反復して、ふわふわしたその言葉が何度も何度も頭を駆け巡って…………………


突然、すとんと理解できた。


「え゙え゙えええええぇぇぇ!!」


ほのぼの午後、快晴。

お江戸の霞んだ青いそらに、絶叫がこだましたのだった。

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