かわい子ちゃんの味方だぜ



「ちょっと、いまのトランシーバーの声加恋サンじゃないですか?」

「うるせーメガネ」


沖田は切れたトランシーバーをポケットにしまった。

加恋がこう自発的に指示をしてくることは、あり得ないことではないが珍しいのは確かだ。



「なんか将軍がどうとかって…」

「おいチャイナ、まだ勝負が終わってねェ」

「沖田さん!」
「お前、戻らなくていいアルか」

丸無視して勝負を続行させようとする沖田に、さすがに新八と神楽が口をはさむ。

「アナタ自分の彼女のこと心配じゃないんですか!?」

「彼女じゃねーペットだ」


ぴしゃりと言い放つ沖田に、もはや2人は唖然とするしかない。


「俺らの関係はお前たちが思ってるような甘ちょろいもんじゃねえよ。

俺はな、べつにあいつのことが好きで好きでたまらないわけじゃねぇんでさぁ」


なんてことだ。

こんな台詞、とても加恋には聞かせられないーーーー!
と凍りつく2人だった。



どおぉおおん!

不意に。

そんな音が地をゆるがした。


「なんだ、向こうの広場で…爆発が!!」

「テロだ!!!」


怒号が飛び交い、たちまちあたりは大混乱となる。

「ちょっこれヤバイんじゃない?、これヤバイんじゃないですか!?」


まさか加恋さんの妙な指示のあとに、こんなことが本当に起こるなんて!


「来やがったな。
おいチャイナ喜べ、次がファイナルステージだぜィ…」

スラァと剣を抜き取る沖田は目をギラつかせながら、こんなことを言う。

「このままじゃおまえ、祭が中止になるぜ」

「むをっ!?」

その言葉に、神楽は鋭く瞳の色を変えるのだった。


「本当に将軍様を狙って来やがった!」

「加恋さんの指示通りだ、あれ見ろ!カラクリの大群が!」


隊士たちの指差す先では、数時間前には河原で可愛らしく並んでいたカラクリたちが大挙して押し寄せてきている。


土方がすぐさまさけぶ。

「櫓の周り、固めろ!
ネズミ一匹寄せ付けるなァ!」

「トッ…
トシィィィイ!!!」

煙幕の中、なんとも情けない大将の声がひびく。

「なんだってんだ近藤さん」

「これ、名刀虎徹ちゃんが…うそォォオオ」


武州から上京する際、2人は武士としての栄光を想ってたがいに上等な剣を購入していた。

近藤が名刀虎徹を買うと聞き、土方は義兄に無心をし、その金で近藤に張り合うように兼定を探し求めたものだった。



「うそぉおおお」
「うるせーな言ってる場合かよ!」

「だってこれまだローンが…ちょ、うそぉおおお!」


剣とともに近藤の心は折れてしまったようだった(ムリもない)。

しかし、これで加恋の無線には寸分の狂いもなかったことがわかり彼らは内心舌を巻いていた。


西から再び火の手が上がる。

しかし、その中から出てきたのは崩れ落ちるカラクリたちの方だった。



「祭の邪魔する悪い子」

「だーれだーー」

「あっ!あれは妖怪祭囃子!!」


どす黒いオーラをまとって現れたのは、祭を台無しにされた怒りに狂った沖田と神楽だった。

「祭の神が降臨なさったぞ、勝機は我らにあり!

いけえええええ!」



その後、三郎に将軍を討たせようとしていた源外を止めるまでおよそ半刻にわたって戦いは続いた。

back 4/5 next


back