かわい子ちゃんの味方だぜ



「さて、加恋はその分働かなきゃね!」

ガタンっといきなり立ち上がった加恋におれは驚き飛び退く。

どいつもこいつも静かに席を立てねーのか!


「働くってオメー、なにをどう…」


加恋はおもむろに、隊服の胸の辺りを探りトランシーバーをとり出した。


「あーあー、聞こえてるかな?

こちら加恋、みなに告ぐ!将軍様の周辺に数名ついて下さい!

それから今夜の見世物用のカラクリが見える者は直ちにその周辺に張るよぉに!

あと、えーっと、将軍の周辺…あ、これはもう言ったか、えー以上ですどーぞ!」


『おい加恋!?こちら土方!
なんだいきなりてめーいまどこにいやがる!しまりねぇ無線するんじゃねーどーぞ!』

「こちら加恋、土方さん死んでどーぞ!」

『どーぞの使い方ちげえだろゴルァァァア加恋!おいてめぇ聞いて』

ブチッ!

激高した鬼の副長の声は虚しく途切れ、加恋はさーやれやれ任務完了〜とトランシーバーをしまい、伸びをする。


「こいつぁ驚いたな、お前いっちょまえに指示なんでできんの」

「えへへ〜加恋かっこいい?」


かっこいいかっこいいとおだてると、いえーいと手をあげる。

にしても、だ。
加恋の無線の指示を思い返す。


将軍の周辺の配備を増やし、かつカラクリへの注視を促していた。


『死んでった中にかけがえのない者もいただろう…』


源外のじいさんの言葉が頭で鳴り響く。
銀時の中にはある仮説があった。

加恋の「仕事」は、とんでもなく適切におもえる。


俺はもう一度加恋をみた。

ずずっとお茶をすっている彼女の背中を、まるで自分の姿のように見つめていた。
ちょっとドキドキしていた。


もしかしたら加恋は、この子は、本当はとっても………



「おっ、上がったぞォ!」


どこからかそんな声がきこえて。

大きな音とともに夜空に大輪の花が咲いた。

パラパラ…という、火花の散る独特な音色が辺りに残る。


「わァお銀ちゃん、すごいすごい!綺麗だね!」

「ああ、さすがに風流だな」


屋台に腰かけたまま、後ろに向けた顔を見上げてしゃぎたてる加恋におれも大きく頷く。


どれ、ひとつ立って見てみるか。

屋台の暖簾を手であげながら人通りに立つ。

盛り上げるように、二発目の花火が打ち上げられた。


「夏の風物詩は妙に切なくていけねぇな…」


幻想的な花火は華々しいが、どこか寂しい気持ちを運んでくる。

なんだろうか、この懐かしいような忌まわしいような…


その時だった。


後ろにえげつない殺気を感じて俺は脳で知覚するより先に腕を木刀へとすべらせる。

が。



「クク…動くなよ」


耳に不敵な、押し殺したような笑い声が届いた。

その声に、目を見開く。


「てめぇは…!」

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