2/SS.言えるわけない


C.C.は頬を染めながら、うっとりした表情でプリンを完食する。

「ごちそうさま。
夢のような一時だった」

嬉しい気持ちを隠すことなく表に出すような笑顔に、空は心の中で叫んだ。
『かわいい〜〜〜〜!!』と。

初めて見るC.C.の表情、それだけで空は作って良かったと心の底から思った。

「どうした?
そんなボンヤリとした顔をして」
「……えへへ。
ルルーシュがここにいたら驚いていただろうなぁ、って」

普段は見れない貴重なC.C.を目撃できたのは自分だけ────そう思うと顔が緩んでしまう。

「ルルーシュもこの“プリン”とやらを食べたのだろう?」

C.C.はニヤリと口角を上げる。
いつもの彼女に戻った瞬間だった。

「どうだ?
完膚なきまでに叩き潰せたか?」
「んー、どうなんだろう。ルルーシュは黙々と食べただけなんだよなぁ……。
ナナリーが『すごく美味しい』って言ってくれたからダメージは受けたんじゃないかな」
「……そうか。
アイツは何も言わなかったのか」

『あたしは料理が作れない』の偏見をブチ壊すことは出来たし、ナナリーとスザクに満足してもらえたから大勝利だ。
でも、できればルルーシュの感想も聞きたかった。

「結局、美味しいか口に合わなかったかは最後まで分からなかったなぁ」

空は溜め息をこぼした。

一方その頃、ルルーシュは。
ナナリーと二人きりの時間をダイニングで過ごしていた。

「お兄さま。
スザクさん、全然変わっていませんでしたね」

スザクが7年前に『俺のことだと分かるように』と教えてくれたサイン。
数時間前にスザクがしてくれたそれを、ナナリーは思い出してふわりと笑った。

「ああ、そうだな。
スザクが無事で本当によかった」

『変わらない』と言われたものの、複雑な気持ちで内心否定する。
変わってしまったのは自分が一番よく分かっていた。

「でも驚きました。
あのプリンを空さんが作ったなんて」
「……ああ、そうだな。
俺も驚いた」
「とても美味しかったですね」
「(ただの偶然か? まさかあの女がアレを作るなんて……)」

面白くない気持ちになり、ルルーシュは静かに唇を噛んだ。

「もしかしてナナリーがリクエストしたのか?
その……プリンが食べたいって」
「いいえ、わたしは何も……。
……てっきりお兄さまが空さんに頼んだと思ってました」
「まさか。
言うわけないよ、俺が」

自分の好物を作ってくれ、なんて。

ルルーシュ・ランペルージの好きな食べ物はぷるぷるしたものだ。
ふわふわプルプルのプリン、それが一番の大好物だった。

言えるわけない。
口の中でとろけていく絶妙な甘さのプリンを、すごく美味しいと思ったなんて。


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