咲きほこる氷の華

37輪


チ「なっ……何を言ってるんだ!兄さんはお前に殺されてっ『違う』何故言い切れる!!」

『…………僕の家族が殺されたのも今日だからな。時間的に不可能だ。僕の家とお前の家がどれだけ離れているか知っているだろ』

チ「そ、そんな……」


「そうだよな」と、ある場所に視線を動かす。
その視線の先にいるのはベル。

否、金髪碧眼の男。

チェロとよく似た、けれどどこか影を含んだ男。
病的なほど白い肌に目の下にある隈が、より一層危険な雰囲気を醸し出している。


チ「え……兄、さん?」

?「ククク気づかれたか。流石氷の魔術師マジシャンだなぁ?フィオレ」

『気安く呼ぶな、ジェオ』

ジ「つれねーなぁ。ま、そりゃそーか。何たって、お前の家族を殺せと命じたのは“俺”だもんなぁ?」


クツクツと昔から好きになれない笑いをする男。
父さんたちが何故この男を僕の婚約者に選んだのか、未だに分からない。

いや、分かりたくない。
こいつは僕の仇だ。それ以外の何者でない。


『…………何故、自分の家族まで殺した』

ジ「あ?そんなんウザかったからに決まってるだろ。俺のことにいちいち口を出してきてウザイの何の。挙句の果てには婚約者なんてもん勝手に決められてなぁ。俺はな、お前が大っ嫌いだったんだよフィオレ」

『奇遇だな。僕も昔からお前のことは好きじゃなかったし、婚約者など絶対嫌だった。……だが、だからと言って殺すことはないだろう!自分の家族だぞ!!』

ジ「家族だから何だよ。本当はあの時お前も殺す気だったんだが…………まぁ、いい。予定が狂ったが直接俺の手で殺してやるよ」

『貴様……』


互いの殺気がぶつかり合い、その場を支配する。
チェロは圧倒的な力の差に気後れしたようでいつの間にか後退している。

どうやら僕の意を汲んでくれたらしく、ヴァリアー・ボンゴレ共に手を出す気はないようだ。


一瞬の静寂。
その静寂を破るように、同時に地を蹴ったのだった。


37輪 : 身勝手
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