咲きほこる氷の華

31輪



『……着いたか。ジャスト10分』

ベ「さっすが姫♪俺たちよりも移動スピードが速いんだな」

フ「そーですねー。あっという間に着いちゃいましたし」

『そうか?余りスピードは出していないが……』

「「え……」」


……二人して見詰めてくるのは止めてくれ。
視線で体に穴が開きそうだ。

本当に開きはしないが。


『…………おかしなこと言ったか?』

フ「あ、いえー。最強の名は伊達じゃないと実感しただけですからー」

ベ「だな」

『そうか……?』


釈然としないが……


フ「はいー。あ、ミーたちはここで待機してますんでー」

ベ「今回は俺たち手を出すなって言われてんだ。てことで姫ガンバ♪」

『あぁ』


それじゃ任務開始だ。
ヴァリアーに入ったからと言って別に方法は変えなくてもいいだろう。

そお思って歩を進め、辿り着いたのは無駄に装飾のついているアンバランスな扉。


『……金の無駄遣いだ』


こんな扉などに金をかけるよりも警備を強化したらどうだ。
こんなにも近づいていると言うのに気づかないとは……


『詰まらないな』

「ッ!何者『遅い』ガッ」


一振りの剣で喉元を切り裂く。
応援を呼ばれたりしたら面倒だからな。

万が一、止めを指し損ねたとしてもこれが一番手っ取り早い。

……代わりに血を被ることになるが。
こればかりは仕方がない。避ければ何とかなるし。


『さて、と。ここはどれだけもつかな?』


一歩、中へと踏み出せばそこから波紋のように徐々に氷が広がっていく。

このペースだと数分もしない内に凍りつく。
分かってはいたけど、やはりここも弱い。暇潰しにもなりやしないよ。


『…………詰まらない』


あと少し。
ようやく彼らが異変に気がついて出てきたところだ。

だけど残念。
もう時間切れだ。


『……3……2……1』

「いたぞ!侵入者だ!かかれー!!!」

『……0』


  ピキイィン…


カウントが終わったと同時にすべてが凍りつく。
辺りは一面の氷の世界。

あと一歩というところまで迫ってきていた彼らはまるで氷の世界に咲いた大輪の━━━氷の華。


『依頼はアジトの壊滅…………これで終わりだ』


パチンと指を鳴らせば、氷がすべて崩れ落ちる。
粉々になった氷は、キラキラといつまでも降り注ぐのだった。


31輪 : 氷の華
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