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*翌日*


「…………」

「お、おーいリベルタ〜…?」

「…………なに」

「た、頼むから機嫌を直してくれ。殺気がビシバシ刺さる…」

「やだね」


殺気が刺さろうが体感的にブリザードになってようが関係ないね。大体なんで俺が参加しなければならないんだよ。居ても居なくても変わりはしないのに、なに考えてんだあのくそ親父。俺が女だって知ってんだろ?

それにそもそもこの国の継承法からして女王は認められてない。なら、王位継承者はジルで決まりじゃないか。


「マジで意味わからねぇ…」


あ゛ー!!考えるだけでもイラつくし!


「シシシッ、ハローベル♪ジル様のお越しだぜ♪……ッと!?」

「チィッッ」

「ベル様なにを!?ジル様ご無事ですか」


うざっ。余りにもイラついた俺は無言でナイフを投げつける。どうせならそのままくたばっちまえばいいんだ。
元はと言えばすべてこいつが元凶なんだし、ちょっとしたことで直ぐ兄貴面してくるしっ!

そんな八つ当たりを自覚しながらも投げる手は休めない。がすべて避けられお手本のような舌打ちを1つ。


「あり?もしかしなくても俺少しばかり不味いときに来たカンジ?」

「そうですねー、少しばかりというよりもかなり不味い時ですかね。おかげで私は助かりましたけど」

「お前妙に晴れ晴れとしてない?どれだけ虫の居所が悪かったんだよ…」

「お気に入りな筈のクッションが複数個、他にも姿見などが駄目になったくらいですね」

「ベルお前…」


何せジル様があと数分来るのが遅ければ私がサボテンにされていたので!と笑顔で宣うアル。
そんなことはない、と言いたい所だが相当苛ついていた自覚はあるので2人の会話に顔をしかめたまま押し黙る。

ジルのあんぐりとした顔から視線を逸らした。……仕方ないだろ。昔の自制心は見る影もなくどうにもムカつきを抑えきれなかったんだよ。
因みにボロボロにした部屋は既に修理されている。


「視線がうるさいバカジル」

「あ゛?そういうベルまだまだお子ちゃまだなぁ?」


一瞬の静寂。
漫画的表現で言えば俺とジルの間に火花が散ったか、背後で雷が鳴ったか。どちらにせよ緊張が走る。


「カッチーン」

「何?殺る?」

「上等!」


お互い笑顔で取り出すのは抜き身のナイフ。
修繕したばかりの部屋はまたもや瞬く間にボロボロになっていく。

だけどそんなの知ったこっちゃないね。
だって俺達王子だもん♪




Successore-継承者-




時は少し遡り、リベルタとジルの乱闘が始まって直ぐの頃。
乱闘が苛烈を極めていた頃には既に部屋から退出していたアルフォードとオルゲルトも、この時点ではまだ部屋に残っていた。


「おぉ、また始まりましたね。毎回よくやるな」

「全くです。そういえばアルフォード、少しお時間いただけますか?」

「?ええ、構いませんよ」

「では1度ここから移動しましょう。ここにいてはいずれ巻き込まれ兼ねません」

「それもそうですね」


お互いに流れナイフを避けながら会話をしていたが徐々に2人の投げ合うナイフの数が増えてきた。このまま避ける続けることが出来ない訳ではないが、気力疲れしそうなので激化する前に退出することにする。

そして何よりもここに居てはゆっくり話も出来ないしな。


「ここまで来れば大丈夫でしょう。それで、話とは?」

「そうですね……次期王位継承者についてです」


次期王位継承者、その言葉に目を細める。
オルゲルトは自他共に認めるラジエル崇拝者だ。さてこれは自分の意思でのことなのか、そてともラジエル派の腐れ貴族による差し金なのか…。

そこまで考えて頭を振る。もしオルゲルトがリベルタに不利益を招くようなことをすれば俺が対処するだけだ。俺の持ちうる全てを使ってな。
幸いにして、名家と呼ばれる侯爵家の生まれであったことに感謝しないとだ。


「次期王位継承者ですか」

「はい、単刀直入に伺います。あなたはどちらが王位を継ぐと思われますか?」


どちらが王位を継ぐのか、ね。そんなもの既に決まっている。


「ベル様にはベル様の良いところがありますが、より王位に相応しいと思われるのはジル様ですね」

「……貴方であればベル様と答えるとばかり思いました」


俺も俺で崇拝をしている訳ではないがリベルタ第一で物事を考えるからな、そう思うのも無理はない。
けど、普通に考えてもリベルタは王位を継げはしない。継承法でも王女は継承権を持ってはおらず、男児が産まれなかった時のみに限り中継ぎの王として認められている。

リベルタ1人だけであればまた状況も違っただろうが、ラジエルがいる。だから必然的に王位継承者はラジエルになる。

それはリベルタもわかっていることだ。だからこそ、パーティーに出席したがらない。


「聞きたいことはこれだけですか?」

「…ええ」

「では戻りましょうか」

「そうです、ね…向こうのことも心配ですからね」

「そんなに心配はしなくても大丈夫だと思いますよ。何たってあの2人ですから」


隙あらばナイフを投げ合うような2人だけど、原作とは違いそれは殺意からくるものではなくて、じゃれあいのようなもの。
恐らく2人の大事なコミュニケーションなのだろう。

今頃は2人共疲れて眠っていることだろう。


いいえ、心配なのはジル様達ではなく部屋の方で…

あっ…

良くて半壊、悪くて全壊しているでしょうね

…………人員を呼んでいきましょうか

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