「そーゆーのを小さな幸せって言うんだってば」


「え?」

ある日の朝それは唐突に始まった。名前1は目覚め顔を洗おうと横に顔を動かした所で目を見開いた。そこには、リクオ、雪女、黒田坊、首無、猩影、烏天狗がいた。それも、土下座をしながら。

「え、え?どうしたんですか。というか、リクオ様!顔を上げてください!」
「名前2!お願いがあるんだ!」
「お、願い?」

リクオは土下座をしたまま話し出す。名前1はおろおろと目をさまよわせながらも聞く体制を整えた。

「女装してくれない!?」
「……………ええっと?除草でしたら、昨日のうちにやっておきましたが?」
「そうじゃない。女の格好をしてくれと言っているんだ。」
「……分かってるよ、首無。現実逃避してただけじゃないか。……えっと、とりあえずリクオ様顔を上げてください。それから話を聞きますから。」
「分かった。」

リクオは渋々といった感じで顔を上げた。そして、話し始めた。

「実はね、氷麗がお見合いすることになったんだよ。だけど、氷麗は相手のことが見る事すら嫌なほど嫌いなんだって。それで、お見合いを取り消そうとしたんだけどそれも無理になっちゃって。そこで朗報が届いたんだ!相手は氷麗の顔を知らないんだって。それじゃあ代役をたてようってことになったんだ。」
「話は分かりましたけど、なんで俺なんですか?毛倡妓とかいるじゃないですか!それに、女がだめでも俺じゃない他のひといるでしょうに。」
「毛倡妓は今鴆くんの所なんだよ。それに、お酒の席だし何しでかすかわからないでしょ?だったら男の方がいいと思って。女装をしても似合って、さらに腕っ節も強い、この二つを持ってるの名前2しかいないんだ!お願いだよ!引き受けてくれない?」

リクオに上目遣いで見られ詰まる名前1。数度唸り、そして諦めたようにため息を吐いた。

「わ、かりました……。やりますよ。」
「ありがとう!名前2!」
「ありがとう!名前2!ほんとに相手の顔見るの嫌だったの!」
「うん、氷麗が喜ぶんならもう、それでいいよ。」

名前1は乾いた笑いをこぼす。そして、人間の姿から妖怪の姿へと変わった。

「こっちの方がいいでしょう?」
「そうだね。氷麗!化粧してあげて!もう時間は少ないから!」
「了解しました!」


***

「わぁ、すごいね。誰も名前2って分かんないんじゃない?」

名前1は金髪を結い上げ、首筋が見えている。着物も金糸で縫われた鶴などがおり値の張るものだとひと目でわかる。化粧もしており傍から見たら女にしか見えない。

「そう、でしょうか?にしても、女性は大変ですね。こんなよく分からない粉物を顔にペタペタと……。」
「粉物って……。」
「まぁまぁ!そろそろ相手方も来る頃だし、広間に行こう。」

名前1達が広間へ行くとそこには机と座布団があり、その一つに鯉伴が座っていた。

「は?」
「俺の娘の見合いだからな。どんな奴でもぶっ飛ばす心積りでいるから安心しろ!」

名前1が何かを言おうと口を開きかけたとき、烏天狗が襖を勢いよく上げ叫んだ。

「婿候補どの来ましたー!」

名前1は鯉伴の隣に座り、小声で話しかけた。

「無駄な事言わないでくださいよ。」
「俺にとって、お前のことで何一つ無駄な事なんてないからな。」
「なんですか、それ。」

そんな風に鯉伴と話しているとすっと襖が開いた。そこには1人の白髪の男性が居た。背は高くな赤い目をしている。どこか好戦的な目をした男に名前1は軽く眉根を寄せたがすぐに顔を取り繕った。




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