7

「なまえ、好きだよ。」

幻聴が聞こえた。そんなことあってはいけない。あるはずがない。
手を引く白雄様を見るとにこにこと今まで通りに笑っている。そうだ、今のは幻聴だ。白雄様が俺の事を好き、などと。

「なまえー?聞こえて無かったかな?

……好きだよ、なまえ。そうやって、意味がわからないっていう顔してるところも。普段の笑みも戦っている時の笑いも。全部、全部好きだ。なぁ、これからは俺の傍に居てくれ。」

愛おしそうに笑うから、呆然とする。いけない。いけないのだ。白雄様はこの国の皇子で、俺は外部の雇い武人だった得体の知れない奴だ。ここに、居させてもらっているだけでも反感を買うのに。もし、俺が白雄様と好き合ってしまったら。付き合ってしまったら。

「………いけません。ダメなのです。勿論、白雄様のお側にいる事はいいのです。けれど、そういう感情のままいられぬのです。
貴方は、この国を背負っていくお方。俺などと共に居てはいけない。」
「何故だ!お前はそこまで、自分を卑下する必要などない!」
「そうじゃない!自分を卑下しているわけじゃない…。俺は、得体の知れない外の奴だ。それを知っているのはこの王宮の中に何人もいる。考えてみてくださいよ、そんな奴と付き合った皇子を支持すると思いますか?ましてや、俺は男だ。なおさら、だめ、でしょう。」

握られた手が無性に暖かく感じる。
もう、離してくれないだろうか。この手に縋りたくなってしまう。

「……なまえ、お前の考えは良く分かったよ。じゃあ、なまえ自身の気持ちは?それを教えてくれ。もしかしたら、それで俺は諦めるかもしれない。」

引っ張られ顔を両手で挟まれる。逃がすまいとでも言うように見つめられ、抵抗出来なくなってしまう。
でも、もしかしたら、諦めてくれるのかも。なんて、考えてた俺はやっぱり何処かおかしかった。

「……あいしてます。愛してるんです、白雄様!どんなに離れていても、貴方のことを想ってしまう。こんなに誰かに執着をしたことなどない。好きで好きでどうしようもなくて、でも、貴方は皇子だから……告げられなくて。………なんで、俺なんかを好きになっちゃうかなぁ。俺は、男で、年上で、人を何人と殺してきた奴なのに。」
「じゃあ、なまえは俺と夫婦にならなきゃな。」
「だ、から。ダメだって…言ってんでしょ……。」
「何故?好きあっているのに。想いもつたえあった。どこが駄目なの?昔、なまえは俺に言ったよね。愛し合っているなら、付き合えばいい。体裁など気にせずに、って。だからさ、俺もその言葉通りに従おうと思うんだけど?」

涙が次々に流れ零れてくる。なぜ、練家の人達はこれ程までに俺を泣かせにかかるのだろう。国がなくなった時や父や母があんな目に遭わされた時でさえ泣かなかったのに。

子供みたいに泣く俺を白雄様は抱きしめた。あやす様に緩く柔らかく頭を撫でられる。

「なぁ、なまえ。俺と共に生きてくれますか?」
「…………貴方が、それを望むなら。俺は共に在り続けましょう。」

狡い言い方をしてしまった。けれど良いじゃないか。これくらいは。俺は昔から白雄様を想っていた。先に惚れた方が負けなんだ。昔から俺は白雄様に負け続けている。
こんな俺でも、白雄様は太陽のような笑顔で迎えてくれるから。
それに答えるように俺も笑った。

「ふふ!良かったわねなまえ!」
「あ、……白、瑛様。み、見てたんですか…。」
「だって、二人とも私たちの目の前で告白するんですもの。見たくなくたって見えちゃうわ。
応援するわよ。例え、この国の皆が貴方達のことを祝福しなくても私だけはしてあげるわ。」

この世にはまだ太陽が居たのか。
白雄様、それに、白瑛様。

俺はこの2人が居なければ日の目に出ることは無かっただろう。

言葉にするのは慣れていなから、心の中で言おう。


貴方方に会えて本当に良かった。
大好きですよ。






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