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「とまぁ、こんな感じで白雄様の付き人になったんですよ。」
「あら?でも、お兄様が少し助けたぐらいでそんな気持ちになるかしら?」
「ははっ。鋭いですね白瑛様は。………俺には弟がいたんです。それも、あの時の白雄様位の。唯一生き残った俺の家族でした。ずっと、一緒にいればいいものをあの時の俺は復讐に心を奪われてしまっていた。安全だと、この人ならばいいと思える人に弟を預けたんです。でも、その人は、俺の国を奪った国の武人だった。」

その当時の事を思い出すと悔やんでも悔やみきれない。あぁ、どうして俺はあんな奴に弟を任せてしまったのだろう。

「気づいた時にはもう、遅かった…。弟の元に戻るとそこには、何も無かったんです。跡形も無く消されていた。どんなに周りに聞き回っても弟の消息を知るものはいませんでした。」
「まさか、まだ弟さん見つかってないの?」
「えぇ…。死体すら見つからない。でも、絶対にあいつに殺された。弟を預けた屋敷に残っていたんです。大量に流された血の跡が。」

白雄様と白瑛様が息を呑む。話を理解出来ていない白龍様だけがにこにこと笑っていて心の安定剤になっている。今でもこの事を思い出すと、どうしようもない復讐感に駆られるのだけれど、今は、もうこの国の武人だから。俺はこの国の為に生きて、この国の為に死ななければならない。白雄様が治めるに値するこの国を守る為に。

「まあ、それであの時の白雄様が俺の弟に重なって見えたんですよ。ずっと側にいれば護れたのにってね。だから、俺は護りたいものがあるとずっと肌身離さず持ち歩く事にしているんです。」
「でも、なまえは本当に大事なものは絶対に自分から離れた所に置くよな。」

そう優しく笑い俺の頭を撫でる白雄様はたらしだ。この成長しすぎた感。俺の側より同僚の側の方が安全だからと任せるんじゃなかった。こんな子に育つなら俺が育てた方がよかった気がする。

「……そんなことありませんよ。」
「わー!僕もなまえの頭撫でたい!」

今まで放っておかれていたからか白龍様が小さい手を一生懸命伸ばしてくる。
そんな目で見つめられたら抱っこせざるえないじゃないか!

「しょうがないですね。……よいっしょ。これで手届きますかー?」
「うん!えへへ、いいこいいこ!」

ぐっしゃぐっしゃと頭を掻き回される。うぐ、前がみえない。

「は、白龍様、もう、やめ……。」
「まだ、だめー。……わっ!」
「もう、やめにしような。ほら、なまえが嫌がってるだろ?人が迷惑なことしちゃダメだ。」

白雄様が白龍様を抱き上げて助けてくれた。一息ついてちらりと白雄様をみると俺を愛おしそうに見つめるから苦笑いしてしまった。

そんな目で俺を見つめる必要などない。
俺はこの国の、白雄様が見つめるこの国のものだから。一々、ただのものに愛情を持ってしまうといけない。何も出来なくなってしまう。
白雄様は、自分の身の回りの方たちを唯々愛していればいい。どうせ切り捨てられるこの命など愛さなくていい。

「なまえは本当に優しいな。」
「は?」
「今更気づいたんですか?お兄様は。」
「え、いや、白瑛様ー?」
「いや、随分と前から知っていたと思うよ。だけど、なんというかなまえという存在がこんなにまで近くにいた記憶が子供の時位しかないから。」

な?と言われて赤面する。いや、まぁ、確かにあの白雄様が攫われた事件の後は白雄様のお付を外され戦の方へと行っていたが。その方がいいと思っていた事は覚えている。俺の周りにいると色々な視線に晒される。白雄様はこんな視線感じちゃいけない、みたいな事を思っていた。
俺から、離れてた方が安全だからと。
そう思ってはたと気付く。さっきの白雄様の言葉。

『でも、なまえは本当に大事なものは絶対に自分から離れた所に置くよな。』

それに、これは当てはまってないか?もしかして、自分は自分が知らない位それが、顕著に現れているのか?それとも、白雄様が俺のことを気にしていた、とか。そんなことありえるわけがない。

「なまえ、風が出てきた。そろそろ室内に戻ろう。体調を崩してしまう。」
「え、あ、はい。」

エスコートするみたいに手を違和感なく出してくるから思わず握ってしまった。そしたら、本当に嬉しそうに白雄様は笑う。顔に熱が集まって熱い。やめて欲しいなぁ、不意打ちすぎる。

俺は、

貴方のその笑顔が好きだから。
護りたいと思った。

その意志が強い瞳が好きだから。
護っていかなければと思った。

貴方の全てが好きだから。


愛しいと思ったんだ。






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