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ふらふらとどこかに行く貴方を探すのはあの時から俺の役目。今日も貴方を探して資料室に。

「紅炎様。こちらに居らしておられたのですか。あちこち探し回ってしまいました。」
「何か用か。」
「いえ。ただ俺は貴方の護衛でありますから、常に一緒にいなければいけません。例え貴方が俺より強くて護衛など必要なくても。」

俺の言葉に何一つ表情を変えない紅炎様。俺にはこの人の考えている事が何一つ分からない。ただ知っている事とすれば、この人が知識欲の塊であるということだけ。それを知っていても俺は何にも出来ないのだけれど。

「ではなんだ?お前は俺の盾になり死ぬということか。」
「貴方がそう望むのならそう致しましょう。貴方が私に敵に勝てと命ずるならば命を賭してでも勝ちましょう。俺を使うのはあなた次第なんです紅炎様。」

そう言い切った俺に紅炎様は不敵に笑うと手元にあった書物をまた読み始めた。こうなってしまうともう手がつけられないので傍に立って待つ。
俺が紅炎様の護衛に付いてからもう五年が経とうとしている。最初は王位と関係ない場所に居たのに今では炎帝なんぞと呼ばれている我が主は王候補だ。なんという人に付いてしまったのだろう。まあ俺が決める権利なんてないんだけれど。所詮敗戦国の王子だった人間だ。敗者は勝者に従わなければならない。戦争とはそういうものだ。俺が元いた国が負け煌帝国の傘下に入った時紅炎様が何故か俺だけを殺さなかった。疑問に思ったけど元々俺はそこまで元いた国が好きなわけでも嫌いなわけでも無かったから王家の人間は全員斬首という法から逃げられて幸運だったという訳だ。俺はそこまで頭がいい訳でもなく見目もそこまで良くはない。こんな俺が何故紅炎様に気に入られたのだろう。

じっと紅炎様の背中を見ながら考えていると巻物の内容が見て取れた。それは俺が知っている内容の巻物でさらにあの巻物は読むために何個か別の巻物が必要なはず。
その場所を思い出しながら巻物が積み上がっている棚の周りを歩くと巻物はあった。が、いかんせん届かない。前に見た時はもっと取りやすい位置にあったはずなのに。小さい背が憎らしや。でも、取れないのは仕方ないからほかの巻物で代役でもたてるか。

「なまえ。」
「はい?なんでしょう、紅炎様。」
「巻物はいらん。お前が説明しろ。もう読んだことがあるのだろう?」

紅炎様は俺がしていた事を丸わかりだ。別にやましい事をしている訳じゃないからいいのだけれど。
近づいていき紅炎様が分かりらなさそうな所を説明する。俺はこの時間が好きだ。よくではないがたまにあるこの時間が。紅炎様と対等になれたような気がしてくるから。

そうしているうちに紅炎様の部下が呼びに来た。それは戦の知らせだった。多分、紅炎様はこの戦に行くんだろう。ならば俺も行かなければならないわけで。紅炎様はフェニクスがあるからすぐに傷を治せるけれど本当はそんな傷すらつけて欲しくない。


「行くのですか。紅炎様。」
「ああ。お前もこい。なまえ。」
「仰せのままに。」


※※※

今回の戦は簡単に勝てる戦のはずだった。煌帝国が攻め入ったその国は経済的に破綻していて軍事費用も出せないほどだった。けれど、煌帝国にとって誤算だったのはただ1人の金属器使いがいた事で。

そいつのせいでわが煌帝国の軍の3分の1が倒れた。あまつさえ、紅炎様に傷を付けた。もうそこで俺の理性は切れた。

「おいゴラァてめぇ!紅炎様に何傷つけてんじゃボケェ!ミンチにして殺す!」

紅炎様に傷つけた。あまつさえ紅炎様の顔に傷をつけた。もうダメ、こいつ生かしておくべきか!絶対殺す。死んでも殺す。

「なまえ落ち着け。別に気にしてない。」
「ダメです。俺が気にします。こんなにも綺麗な顔なのに傷がついてもカッコイイけど、だめです!」
「お前が手を下さなくともこいつは直に死ぬ。もう魔力を使い切っている。」
「それでも!」
「俺は、早く戻って続きの書物を読みたいのだが。」

頭をがしりと捕まれ囁かれる。耳元で囁かれる言葉に顔に熱が集まる。耳元で言わないで欲しい。でも、紅炎様がもういいと言うのならばもういいか。今後こいつが俺に関わることなんてないんだし。

「紅炎様。あなたに付く害虫すべて俺が駆除しますからね。俺の家系は元来誰かに仕える家系なんですよ。それも、主と決めた者を死んですら守る位にはしつこく。ま、俺は、金属器使いなんで?そこまで簡単には死にませんよ。だから俺に………」



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お題元:確かに恋だった



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