20万打リクエスト | ナノ




女は元より潔く、そして母はより強し



ガラッ


「いらっしゃーい!」

「…アレ銀さん。」


神楽の"彼氏できた発言"からなんやかんやあり、新八が帰った後も暫くうるせぇハゲ親父と居酒屋で酒を飲み荒らしているところに現れたのは夕日だった。


「何してんのお前。」

「何してんのって…1日中玉転がして疲れたから一杯引っかけて帰ろうと思って。」

「オイ小僧、なんだこの卑猥な姉ちゃんは。」

「…銀さん、誰この卑猥な頭したオッサン。」

「あーコイツはアレだ、俺の玉転がすのが好きな女。」

「オイ結局卑猥な姉ちゃんじゃねえか!!お前がそんなふしだらな性生活してるから神楽ちゃんまであんなことになってんじゃねえのかテメェ!!!」

「うるせえな!!!別に俺の性生活は関係ねえだろ!!」

「関係あるに決まってんだろ!!身近な大人を見て学ぶだろそういうのは!!やっぱお前のせいだわコレ絶対お前のせいだわ!!」

「責任押し付けんのも大概にしろよ育児放棄ハゲが!!!」

「あっ!ついに言いやがったな!!!?ついにそのワード言いやがったな表出ろコルァアアア!!!」

「おじさーん、生ビールくださぁい。で、誰なのこの人?」

「あ"?神楽の親父だよ、とーちゃん。」

「え……………えぇ!?」

「オイ!!今頭見て驚き直しただろ!?なんなんだお前ら!!神楽の保護者はろくなのがいねぇのか!?それともこの星にはろくな大人がいねぇのか!?」


一旦落ち着こうと席に座り直すと、夕日はビールを持つ手を差し出して乾杯を求めた。


「初めまして、夕日です。すいません、さっきは卑猥な頭とか言って。露出度高めな頭とか言って。」

「いやそれは今初めて言われたよね。ハゲいじりが止まらねえなアンタ。」

「それより神楽ちゃんに何かあったの?二人してなんか騒いでたけど。」


夕日の問いに、俺とハゲはまたカウンターの酒を眺めて項垂れた。


「神楽にさぁ……あの、アレが…アレができたんだよ。そうだ、お前呼べば色々聞き出しやすかったわ、よく考えたら。」

「…アレって何。」

「アレだよ……か、…かっ…」

「もしかして彼氏?」


隣でとっくりが割れる音がした。店のもん破壊すんじゃねえ怪力が。

つーか女ってのはやっぱそういうのに敏感なのか?勘が働くのか?


「…実際どうなわけ、14歳の交際って。」

「うーん、ませてる子は普通にチューとか色々してたんじゃない?」


またとっくりが割れる音がした。今度は二つ分。
色々ってなんだよ!!!あの、神楽が……ないないないない!!!!


「神楽ちゃん可愛いからね、そりゃ彼氏の一人や二人できるでしょ。」

「二人はダメでしょ!!ちょっとホントにやめてくんない!?ストレスで毛根が死滅しそうなんだけどぉ!!」

「いやもう死んでんだろ。つーかお前はいつなの?」

「なにが?」

「初体験。」

「………私の聞いたってどうしょもないでしょ。」

「いや参考にな。な、お父さん。」

「お父さんやめろ。でもそうだな参考にはなる。でもこれで14歳とか言われたら俺は神楽を拐って宇宙へ帰る。」

「14ではないよ…」

「16?」

「…違う。」

「まさか!!12!?そっち!?」

「違う!!……20。」

「………意外と遅ェな。」

「ホラぁ!!そういう反応するじゃん!!だからやだったの!!私にだって純粋だった時代はあるんだよ!!」

「あー、アイツに惚れてた時代か。」

「そうだよ!!!」

「でもちょっと安心したわ、アンタみたいなアバズレでも20まで守り抜けたんだと思うと。」

「ちょっと!!私がいつアバズレ発言しました!?なんで勝手にアバズレ扱いなの!?」

「いやもうお前のアバズレオーラは隠しようがねえよ。まぁ今は銀さん一筋かもしんねぇけど。」

「どうかな。」

「え。」

「つーかよくよく考えたらお前こんな良い女に玉転がして貰ってんの?良い女つってもうちのマミーには負けるけどな。」

「あ、私神楽ちゃんに、ちょっとマミーに似てるって言われたことありますよ。」

「…マミーの方が美人だけどな。」

「ふふ、神楽ちゃんもそう言ってた。」

「でも…神楽がアンタを慕う気持ちはなんとなく分かる。お前ら見てると、思い出すのかもな。家族ってやつを。」


赤い顔で言ったオヤジを見て、夕日は少し照れ臭そうに微笑んだ。


「私、幼い頃に父を亡くしてるし…まだ彼氏を親に紹介した経験ないんだけど…こんな風に、心配してもらえたら嬉しいな。」

「心配してんじゃねえ。俺はアイツが恋愛にうつつを抜かして仕事が疎かになったら迷惑だから、その辺わきまえた付き合いしろって言いたいだけだからね。」

「俺だって別に一発殴らせろとかそういうアレじゃないからね、ただ顔を見ておきたいというか身元を知っておきたいというかただそれだけだからね。」

「えっアレ?もう会う予定なの?」

「うん、明日。」

「明日!?!?早く帰りなよ!?!?おじさん!!お勘定!!」


夕日に促されて店を出てからも、ふいに襲われる喪失感というか戸惑いというか、感じたことのない感情に無意識に頭を抱えてしまう。


「なぁ、明日お前も居てくんない?ブレーキ役で。」

「残念だけど明日仕事なんだよね。なんとか頑張ってよ、お互いブレーキ掛け合ってさ。新八君もいるんでしょ?」

「はぁ…まじか。先にお前の予定聞いとくんだった…。」

「ふふ、神楽ちゃんはパパが二人もいて幸せだね。ちょっとめんどくさそうだけど。」

「俺ァあんなじゃじゃ馬娘産んだ記憶はねェ。」

「将来本当に娘が産まれちゃったらもっと大変なことになりそうだね。」

「正直あのハゲの気持ちが分からなくもない…。」


目線を後ろに向けると項垂れながらブツブツ言うハゲが目に入る。
夕日も俺に釣られるように振り返ると、その姿を見て呆れたように眉を下げて笑った。

…もし、娘が産まれたら…俺と、コイツの?
心配しすぎてハゲる未来しか見えねぇよ…。


「とにかく!二人とも大人なんだから、ちゃんと神楽ちゃんと彼氏君の話を聞いてあげなよ?」

「分かってるっつーの。俺たち大の大人だからね。ちゃんと笑顔で迎えられるからね。ね、お父さん。」

「お前はお父さんと呼ぶな。大丈夫だ、何があっても俺は神楽ちゃんを信じると決めた…決めたんだ…大丈夫だ。」

「既に目が血走ってるんだけど。全然大丈夫そうに見えないんだけど。ねぇお父さん、神楽ちゃんに何かあったら、私もちゃんと相談乗るから、安心してください。危険日とか避妊の仕方とかちゃんと教えときますから。」

「やめてくんないまじでぇぇええええ!!!!」

「でも大事なことでしょ、ね?銀さん。」

「そうだけど…そうなんだけど…確かに身近な女で一番性教育に詳しそうなのお前だけど…そうなんだけど…そうなんだけどぉぉおおおお!!!」


なんか色々と想像したら、また怒りとも焦りとも違う感情が沸き上がってきて電柱に頭を打ち付けた。
ハゲと共に。

血塗れになった俺たちを必死に夕日が宥めながら夜道を大の大人3人でギャーギャー騒ぎながら歩き、万事屋の近くまでたどり着く。


「つーかお前歩き?おいオッサン先帰ってろ、俺コイツ送ってく。」

「いや、いいよ!タクシー拾う。あ、ホラちょうど来た!!タクシー!!」


奇跡的に通りかかったタクシーを呼び止めると、夕日は最後に俺たちの肩にポンッと手を乗せ言い放った。


「大丈夫、神楽ちゃんは良い子に育ってるから!信じてあげて!ね、お父さん。」


その笑顔は、やけに包容力に満ちていて、何故だかやけに安心した。

あぁ、もしかして母親ってこんな感じなのかな…なんて感じてしまった。
母親の存在がどんなもんなのか、何も知らねェけど 、女ってのは強いんだなと思い知らされる。


タクシーに乗り込んだ夕日が窓を開けてこちらに手を降ると、隣のハゲが我に帰ったように夕日を呼び止めた。


「姉ちゃん、ありがとな。神楽をよろしく頼む。あとこのモジャモジャもな。」

「てめェに頼まれなくてもよろしくやってるっつーの。」

「…お父さん、お仕事忙しいみたいですけど…たまには帰って来てあげて下さいね。でも、お父さんがいないときは、銀さんと…私と、他にもたくさん、神楽ちゃんのこと、大事に思ってる大人が、ちゃんと面倒見ますから。」

「…ふ、神楽は幸せもんだな。安心したよ、アンタのおかげで。アンタも大概親バカそうだしな。」

「ふふっ、バレました?」


"それじゃ"とタクシーが発進して、静かになった夜道に、大の大人2人の影が伸びる。


「お前、あの子のこと、大事にしろよ。」

「…だから…なんでてめェに言われなきゃなんねーんだよ。」

「ガキの心配すんのはオヤジの役目だろうが。」

「生憎俺ァガキじゃねえ。」

「まだまだガキだろ。」

「まぁそうだな、毛根はまだピチピチの思春期かもな。おたくと違って。」

「あー思春期だからそんな縮れてんのそれ?思春期の難しいネジ曲がった感情を毛根から表現してんのそれ?」


まぁこの後当然のごとく一悶着あり、お互いバカらしくなって冷静になり作戦を練った。


作戦会議の末、行き着いた結果がどうだったかは、アレだ、…ポロリ篇観ろ。

結論から言うと、…やっぱ必要だったよな、ブレーキ役。



*コメント&お返事*

瑠奈様!リクエストありがとうございました!!
リクエストで、原作で神楽ちゃんメインのお話がいくつか上がっていたんですが、ポロリ篇でちょうどタイムリーだったこともあり彼氏篇を選ばせて頂きました!!
銀さんとパピーが居酒屋で飲み明かしてから、万事屋で朝まで待機するまでの"間"のお話にしてみました!
ヒロインも、神楽ちゃんに対して親バカですが、男性陣の頼りなさとはまた違った愛を感じ取って頂ければ幸いです!笑
こういう場面でやはり頼りになるのは母親なんだな、と銀さんもパピーも感じているのを表現したかったんですが…海坊主さんのキャラがいまいち掴みきれずハゲ弄りばかりしてしまいました…笑
でも、ちょうどアニメで見たばかりの場面を描けて楽しかったです!!
万事屋×ヒロインの日常が見たいとも書いてくださっていたのに、万事屋登場せずすみません!
万事屋との絡みはまた続編の方でもどんどん書いていくつもりなので、そちらでお応え致しますね!!

bbsへの書き込みもありがとうございました!

改めまして企画へご参加頂きありがとうございます!
是非今度もよろしくお願いします!

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