海行く話.3
変態呼ばわりした人物が上様だと分かるや否や、固まった夕日。
いやお前が正解だよ、どう見ても変態だよ。
白いパッツパツの海パン…いや待てあれブリーフじゃね?ブリーフだろ。
しかもゴーグル着けてんのはいいけどゴム閉めすぎだから。そっちもパッツパツだから。寄りによって透明なやつだから目見えてるし。ゴムの圧がハンパねぇからすげぇ顔になってるし。
どう見ても変態だよ。
そして数秒後、どうゆう思考に至ったのか、夕日はパーカーをズァバッと音を立て脱ぎ捨てた。
あー、今のちょっと谷間が見えてくるライン一番エロかったのに。
呆気なく水着姿になった夕日は何故か山崎の後ろに隠れて何やら早口で謝罪し始める。
「上様ぁあ!!大変失礼致しました!!変態って言うのは、あの、違うんです!!あの、白い水着、素敵です!!私も白なんでお揃いです!!アレですっ私も変態なんです!!いや私の方が変態です!!ホラこんなもんほぼ紐で出来てますし!私の方がよっぽど布の面積狭いですし!!あ、でも胸隠してる分私の方が……脱ぎます!!脱ぎますね!?脱ぐのでどうか首だけはご勘弁をぉおお!!!」
テンパりすぎて絵に描いたように目をグルグル回しながら水着に手をかけようとする夕日を山崎が必死に止める。
オイ然り気無く触ってんじゃねーぞジミー。俺と代われ。
「おぉおうっ、トォォシィ!この子が噂の夕日ちゃんかぁ?お前のこと性的に狙ってるっつぅぅ子だろぉ?」
「そうですぜィとっつぁん。土方さんがチキッて手ェ出せずにいる女でさァ。」
「てめェか!!!とっつぁんに余計な情報吹き込んだのぉぉお!!!」
「悪かったなトシィ、お前の見合いの相手無理矢理ぶっこむのもうやめるからよぉぉう!お前もさっさとあの子にぶっこんじま
「うるせぇえええほっとけぇええええ!!!!」
「夕日殿と申すか。此度は余の海水欲に付き添うて貰い感謝する。」
「いや上様、海水欲じゃなくて海水浴で
「夏というのはどうも水欲が増すものでな、どうしても海に来たくて片栗虎に無理を申した。」
「水欲って完全に使い方間違ってます上様。卑猥な言葉みたいになってます上様。」
やっと落ち着いてきた夕日の隣で山崎がツッこむ。
少し場が落ち着いてきた所で、長官のオッサンが例のごとく「その辺に昼キャバあるらしいからちょっくら行ってくらぁ。なんかあったら俺の首もお前らの首も飛ぶからなぁあ。」と吐き捨て姿を消した。
誰かあのオッサンの首飛ばしてくんねェかなマジで。
「しょ、将軍様すみません、気が動転してしまい申し遅れました…私、夕日と申します。本日はお日柄も良く海水浴日和で
「堅苦しい挨拶は良い。今日はお忍びで来ている故、将ちゃんと呼んでくれぬか?」
目を泳がせながら挨拶をする夕日に将軍が近付き、握手を求め手を差し出した。
ちょっと待て将軍すげえ鼻血垂らしてんだけどぉぉお!!!下心見え見えなんだけどぉぉお!!!コイツぜってぇ水欲じゃなくて性欲が増してんだろぉぉお!!!
「……わ、分かりました…よろしくお願いします、将ちゃんぅうううぉぉおおおおおえぇええええ!!!!」
吐いたぁぁああああああ!!!!!吐いたんだけどこの子ぉぉおおお!!!
「どっ、どうしたぁぁああああああ!!!!!」
突然の嘔吐に思わず体が動いて夕日に駆け寄った。フラつきながら俺の腕に掴まる夕日。
その場の全員が焦り出す中、夕日の小さな声が耳に届く。
「ぎ、銀さん…あの人本当に将軍様なんだよね…?あの…凄いの、…臭いが…。ウップ!」
「やめろバカ!聞こえんだろ!!」
「しかもね、よく見たらあれ水着じゃなくてブリーフだよね…?しかもなんかシミ付いてた…すごい臭いがした…半乾きの雑巾に腐ったイカ包んだみたいな臭いがした…」
やめて夕日ちゃんんんんんんん!!!
意識朦朧としてるからって言い過ぎだからぁぁあああああ!!!聞こえてるからぁぁああああああ!!!!!
将軍のゴーグル涙でいっぱいになってるからぁぁぁあああ!!!
「上様ぁぁああ!!!!見てください!!あちらで板に乗ってる男見えますか!?!?あれはサーフィンと申しましてアレが出来る男は無条件にモテます!!!上様もやってみてはいかがでしょうぅう!?!?」
ナイスだフォロ方ぁぁああああああ!!!!!
「サーフィンか…板に乗れば良いのだな。」
「えぇ!!総悟!すぐ板とヘリ手配しろ!!そう言えば!そよ姫様はどちらに?」
「ここに来る手前で友人を見つけたらしく海で遊んでおる。」
「山崎、あっちにゃ近藤さんがいるがストーカーに勤しんでる可能性が高い。お前そっちに就け。」
「はいよっ!」
真選組は将軍を引き連れ海へと向かって行き、海の家に残ったのは俺と夕日だけになる。
「ウッ」
「オイ大丈夫か。水貰ってきてやるからここ座ってろ。」
水を飲んだ後も、テーブルに項垂れる夕日。どんだけクセェんだよあのブリーフ。
「あー、やっと落ち着いてきた。死ぬかと思ったわ…。」
「臭いで死ぬ前にお前下手したらさらし首だよマジで。」
「なんか吐いたらお腹空いたな。」
「オイ何聞かなかったことにしてんだ。」
「すいませーん!焼きそばとビールくださぁぁい!!」
「聞けぇえ!!すいませーん両方とも2つでぇええ!!!」
よく吐いた後に酒なんか飲めるなとどうでもいいことに感心しながら、ビールを啜りながら焼きそばを食べ終える。
酒を飲んで上昇する体温。蒸せ返るような暑さに額からは汗が落ちる。
「そろそろ水入るか。」
「えっ。」
「お前も汗かいてんじゃん。デケェ浮き輪持ってきゃ泳げなくても浮いてられんだろ。」
「う、うん。」
「初めてなんだろ?海。見てるだけじゃ勿体ねえだろ。」
そう言って少し微笑めば、夕日も微笑み「そうだね」と返事をする。
それから「ちょっと待って」と座敷のスペースに置いてあった荷物を漁り出し、取り出したのは日焼け止め。
シャカシャカとボトルを振って、白い液体を腕や足に塗りたくり始める。
隣に腰掛け、改めて夕日の身体をねぶるようになめるように見ると、肌は白いし、細いとこはほっせぇのに出るとこ出てて、なんつーか筋肉とかあんまりないせいなのかやたら柔らかそうに見える。つーか絶対柔らかい。
乳もアレだ、10代後半から20代前半のパッツパツな感じとはまた違って、垂れてる訳じゃねぇけど柔らかそう。つーか絶対柔らかい。
ジッと眺めていたら、首の後ろに塗った日焼け止めが背中に向かって垂れ流れていることに気付き、つい出来心で…指でツーッと撫でてみた。
「ぃっ!!」
…………今ピクンッてしたよな。変な声出したよな。
「ちょっと!!急に触んないでよ変態!!」
「……お前首弱いの?それとも背中?」
「…別に、どっちも弱くない。」
少し赤くなった顔で俺を睨みながらまた日焼け止めを塗り始めた夕日に、イタズラ心が芽生える。
「背中塗ってやろうか?」
「いい!!」
「だってお前背中全然塗れてねぇよ?言っとくけど背中が一番焼けるからね。皮ベロベロになっても知らねぇよ?」
「………。」
俺の言葉を無視して必死に背中に手を伸ばす夕日。
………こうなると逆に火が点くのがドSってもんだろ。
背中に集中している夕日の手から日焼け止めをヒョイと取り上げ、わざとらしくシャカシャカと振って見せる。
「……変な触り方したらブッ殺すから。」
観念したのか、珍しく物騒な言葉を放ちながら俺の方に背中を向けてきた。
うん…このクッと出てる肩甲骨、94点。
日焼け止めを手に出して、肩の後ろの辺りに触れると、一気に夕日の身体に力が入ったのが分かる。
やっぱコイツ背中弱ぇな。にしても肌スベッスベなんだけどコイツ。毛とか生えねぇの?
両肩に塗り終え、少しずつ下へと手を動かせば、逃げるように腰を仰け反らせる。
うん、このウエストから尻にかけてのクビレ、98点。やっぱ柔けぇし。
水着の紐を少しずらしながら背中に手を滑らせ、腰へと下ろしていくと、夕日は大きく息を吸った。
あ、腰の方が弱い?
うん、この反応、125点。
下の水着のギリギリ上まで日焼け止めを塗り、イタズラっぽくクビレのラインを謎って腹の方へそっと指を滑らせてみたら、思いっきりはたかれた。
「っ信じらんないバカ!変態!天パ!ハゲ!」
「あーわりぃ、ついな、つい……つーかお前、顔真っ赤だけど。」
「…だって…い、息止めてたから。」
「へぇ、息止めないと、声出ちゃうわけか。」
「ブッ殺す…神楽ちゃんにブッ殺させる…!!人の性感帯弄んで許されるわけがない!!ブッ殺されて当然!!」
珍しく怒った夕日は、然り気無く性感帯ということを暴露しつつ顔から耳まで真っ赤にしたまま、浮き輪を手に取り海へと歩き出した。
その姿を追いながら無意識に鼻唄を歌った。
一言で言うとアレだ、すげェ楽しいわ、海。