短編 | ナノ




多忙な副長を癒したい女中彼女



やっと夕食時を過ぎ静かになった食堂で一時の休憩中。
最近噂のSNSでとある文章を目にした。

"疲れた男性にかける言葉の正解は「いつも頑張ってて偉いね」だとか「頑張ってる姿は素敵だけど身体が心配だな」とかじゃない。正解は「おっぱい触る?」だ。"

その文章の"疲れた男性"という単語から真っ先に彼の姿を思い浮かべる。私の恋人であり真選組副長の土方さんの姿を。

今も何処かで町の安全を守っているのだろう。
夜になれば部屋に籠ってまた仕事をする。
疲れた彼を癒したいと思ったことは今までも多々あって、その度色々なことを試してきた。
もし本当に疲れを癒せるなら、やってみるしかないと拳を握り、まずは自分の仕事を終わらせようと明日の朝食の準備に取りかかった。





「土方さん、お茶お持ちしました。入っていいですか?」

深夜にも関わらず明かりのついた部屋の前でそう声をかけると、短い返事が返ってくる。
そっと襖を滑らせ熱いお茶の乗った御盆を机の脇に置いた。

「まだ起きてたのか」
「寝ようとしていたところです」

やっと此方に目を向けた土方さんが私のパジャマ姿を見て少しだけ口角を上げた。パジャマに描いてあるマヨネーズ柄が目に入ったからだろうか。お茶を手に取りずずっと啜るとふぅと息をついた土方さんに、得た知識が正しいものなのか試してみようと思った。

「土方さん」
「んぁ?」
「疲れてますか?」
「…まぁな」
「あの、…おっぱい触ります?」

は?と目を丸くした土方さんに私は真顔で、土方さんを癒したいですと宣言した。これだけ聞くとまるで私が天然の男性経験のない生方キャラのように聞こえるかもしれないが、そんなことはない。もう土方さんとはそれなりの付き合いだ。

「おっぱいじゃ癒えませんか?」

首を傾げた私を一瞥し再びお茶を一口飲み込むと至って真面目な表情がまた此方を向いた。

「試してみる価値はあるな。」

くるりと私の方へ身体を向けると胡座をかいた足をポンポンと叩き低い声でこっち来いと呼び寄せられる。この人は本当に、効果的に疲れを癒すことしか考えてないのかもしれない、なんて思いながら距離を詰めるとフワと逞しい腕が私を胡座の中に誘いそこにすっぽりと納まった。
背中に感じる土方さんの体温が愛しい。

「正直に言う。今、すげぇ疲れてる。」

後ろからギュッと抱き締められ肩口に頭を埋めた土方さんが小さく弱音を吐く。普段厳格で自分に厳しい人が、私にだけこうやって弱い姿を見せてくれていると思うと胸の深いところがキュンと締め付けられた。
土方さんの手を上から包んで胸へ運ぶ。

「実験、してみましょう?」

癒されるかどうか、言いながら骨ばった大きな手を癒し効果があるとされるそこに宛がい重ねた自分の手で上から柔く揉むように動かす。

「おまっ、下着は!」
「してません」

こうなることを予期して下着を着けてこなかった私は変態なのだろう。こういうことで土方さんに罵られるのは馴れている。実験なんてただの名目で、本当は私が土方さんに触ってもらいたくて触りたくて仕方がないだけなんだ。

「こんな格好で所内フラつくんじゃねぇ。」

私を叱りながらも動き出した掌が下から持ち上げるように胸をゆっくりと揉みしだき始めた。
私と土方さんの仲は、もう屯所中に知れ渡っているんだからこんな格好で彷徨こうと誰も手出しなどしてくる筈もない。深夜だから、皆寝てるし。そんな言い訳は飲み込んで後ろから周った土方さんの指を見下ろす。形の整った指は間接の部分が少し太くて手の甲には血管が青く浮き出ている。優しく握るように胸を包み円を描くようにゆっくり動く。視界いっぱいにその厭らしい手の動きが映って深く息を吸った。

「確かに癒されるかもしれねぇな」

耳に唇を寄せながら囁かれ耳朶をぬるりと舐められると、ぴくんと肩が揺れた。
私の肩口に顔を乗せ胸を見下ろすと、そこを上から下へ撫で下ろしパジャマの皺を伸ばす。胸の輪郭が露になり薄い布の下で主張するように頂がぷっくりと突起しているのが目に入った。
パジャマの布をピンと張ったまま意地悪くそこにだけ触れないよう人指し指を動かされ、私はついに短く声を漏らした。

「なんだ、耳からも癒してくれんのか?あんまり声出されても困るけどな。」

私の声に癒し効果があるかどうかは別としてこの人の声は本当にズルいんだ。鼓膜のもっと奥の脳の芯から揺らされるような艶のある声。呼吸の度に上下する私の胸を見下ろしながら、髪の隙間から首筋に舌を這わされれば無意識に膝を擦り合わせ腰をくねらせてしまう。
突然布の上からクイと突起の先端に触れられ抑えていた声が漏れる。固くなったそこを転がすようにくるくると円を描かれる。布の上から触れているせいでどこかもどかしいその刺激が余計に堪らない。
必死に声を抑える私の様子を楽しむように突起の先端ばかり人指し指を小刻みに揺らし擦り上げる。

「ぁ、っ!それっ、やっ!」

下腹部がどんどん熱を持ち時折ぴくんぴくんと収縮した。土方さんの指の動きが全部見えてしまうのも、快感を助長する。このまま達してしまうんじゃないか、溺れ始めた私の思考を醒ますように声が落ちてきた。

「こっち向け。」

私の腰を軽く持ち上げくるりと回すと向かい合う体勢になる。土方さんの長い睫毛が一本一本見える程距離が縮まり下腹部の奥がまたキュンとした。男前はズルい。

「顔、エロすぎ。」

呆れたようにふっと笑うとちゅっと啄むように唇を食まれた。一瞬だけ離れてまた吸い付くように重なり、ちゅっちゅっとわざとらしく音を立て何度も角度を変える。たまらなくなって自ら舌を差し出せば絡めとるように深く交わる。背中に回った手が後頭部に周りぐっと押さえつけられ息もつけないようなキスに頭がくらくらした。
またちゅっと音を立て離れた唇が意地悪く弧を描く。

「俺を癒してぇんだっけか。要するに、ご奉仕してくれるってことだよな?」

え、と少し戸惑った私の耳元に口を寄せ低く色っぽい声がまた鼓膜を揺らす。

「脱がせて。」

先程私がしたのを真似るように土方さんの手が私の手をベストのファスナーへ誘導した。ジジとファスナーを下ろしワイシャツのボタンに指をかける。穴が空くほど見られているのが分かって居たたまれず必死にワイシャツのボタンだけを見て視線から逃れようとする。だけど白いワイシャツが少しずつはだけて奥の肌色が広がるほど、逞しい胸板が視界に広がりそれが私の情欲を掻き立てるものだから、思わずキュッと下唇を噛んだ。

「次は、お前の。」

ワイシャツを肩から落とす前に手を取られ、今度は私のパジャマのボタンの元へ運ばれる。ここでやっと、下着を着けてこなかったことを少し後悔した。
戸惑った目線を向けても急かすように顎で早くと指図され、仕方なく震える指でボタンをひとつひとつ穴にくぐらせていく。

「、」

最後のボタンを外している時、土方さんが唾を飲んだのが分かった。ボタンが外れ開いた隙間から熱い掌が入ってきて腰のくびれから背骨の凹凸を撫でる。
やっぱり布の上からではなく素肌に直接触れるこの感覚が好きで自ら唇を重ねにいった。

「やっぱ直接触った方が癒されんな。」

心音を確かめるように谷間に掌を当て、そのままふわりと胸を包まれる。掌の体温が肌を伝うだけで気持ち良くてズボンの下で反り立つモノに腰を擦りつけた。私の身体を少し後ろに反らせそれを腕で支えると首を屈めた土方さんの唇がパジャマの隙間に侵入する。

「ぁんっ!」

空気に触れた冷たい下が先端をちろりと優しく撫でる。そのままちろちろと動かされこれ以上ない程に固くなると口に含まれチュパと吸いながら離される。大きな声が出そうになるのを耐える為必死に土方さんのワイシャツを掴んだ。
ついにそのまま後ろにドサリと押し倒され、その拍子に前の開いたパジャマが重力で更に開き胸元が全て晒される。
それをそろりと撫でられながらまじまじと眺められ恥ずかしさのあまり顔を横へ背けた。

「癒し効果…あるな。」

納得したように呟きながらまた執拗にやわやわと揉みし抱きながら両の突起を攻められ私は遂に悲願する。

「ひじ、かたさん…もう、入れて、欲しいで、す。」

涙目で訴えるとパジャマの上から太股の内側を撫でられ、腰がびくんと跳ねた。
ツゥとまた布の上から触れるか触れないか程度の刺激を秘部に与えられる。それだけで高い声を部屋に響かせてしまった。

「バカ。静かにしろ。」

誰のせいだと思ってるんだ、なんて軽く怒りすら覚えたけど口を塞ぐように荒いキスをされ、思考はまた快楽へ溺れていく。
下着とパジャマの布越しに淡い刺激しか与えて貰えず身体の奥の熱が燻る。性的な涙が目尻から落ち、うまく酸素を取り込めない程息が上がる。そんな私の様子を満足げに見下ろすと、土方さんはやっと私のパジャマと下着に纏めて指をかけた。

「やっぱり、好きな奴には尽くす方が性に合ってる。」

その言葉にふと近藤さんに尽くす副長としての土方さんが脳裏を過った。仕事を邪魔してこんなことをしている私は、副長の女失格だろうか。そんなことを思っているとふいに割れ目に侵入してきた指が蜜を絡めながらぬるぬるとそこを上下し始めた。

「んんんっ、ふっ、ぁ」

手の甲で口を塞ぐ私を鋭い目がずっと見下ろしている。濡れすぎたそこを指で開かれるとくちゃと音を立てた。極限まで敏感になった神経の塊を暖かい指先が最弱の力加減でゆるゆると擦り出す。さんざん焦らされたせいですぐに絶頂が目の前に見えてきたのに、達する前に指は離れた。

「ぁ、あっ!イかせ、て、下さいっ」

土方さんのワイシャツを掴んで悲願した。何も言わずに柔らかく微笑んだ土方さんは畳に肘を付き私の首筋に顔を埋める。下腹部に集まった熱をまた全身に引き戻すように身体中を愛撫され、頭がおかしくなりそうになった。ふやけるほどに舐め続けられた胸にもまた舌が這う。それがお腹を辿り骨盤の骨を辿るように足の付け根に下りていく。

「ゃ!ダメっ、声、出ちゃ、う」

そこを舐められることを予期して黒い頭を押さえ制止を試みるも、力で敵う筈もなく太股の内側を唾液で濡らされる。
また指で開かれたそこに熱い息がかかる。それほどの距離にいるのになかなか触れない舌の刺激を待つうちに、全身に散らばった熱がまたそこに集結し始めた。

「ぁあっ!」

突起に来るとばかり思っていた刺激が蜜坪の入り口やってきて、予期していなかった快感に声を上げてしまう。
くちゅくちゅと骨ばったあの指が浅い出入りを繰り返しながら、舌先が遂に突起に触れビリビリと電流のような快感が全身を襲った。
とてつもない快楽に追い詰められ、もう声を抑えなければなどという自制も効かなくなる頃、ズブと指を奥まで沈めかき回され同時に突起を優しく押し潰されるようにちろちろと舌で擦られ卑猥な音に耳も犯されながら土方さんの指をギュッと締め付け絶頂を通り越した。
達したことを悟った土方さんは余韻を与えるように動きを徐々にゆっくりにしてから指を引き抜いた。

「は、ぁ…ぅ、」

必死に息を整えていると足元でカチャカチャとベルトを外す音が聞こえてきた。

「っ、ま、待って…」
「ゆっくりしてやるから。」

そういう問題ではない、入れるのを待ってくれと言っているのに。
噛み合わない会話とは反対にまるで型を合わせたようにピッタリと私にハマるそれを取りだし宛がわれる。溢れ出て畳まで伝う愛液を絡めるように数回割れ目を擦ると、達したばかりでキツく締まるそこをゆっくりと解しながら入ってくる。

「ーっ、んん、ぁ、ひじか、たさん…」
「ん?」
「気持ち、いい」

最奥に到達するといつも土方さんは暫く動かないまま私をギュッと抱き締めてくれる。それが何よりも私の心を暖め癒してくれるんだ。

「大好き、です」
「俺、も」

お互いの気持ちを確かめ合うようにゆっくりゆっくり腰を沈められ甘い快感がまた込み上げてくる。ぐぷっずぷっ、決して激しくはない律動が厭らしい音を奏でた。私の中で絡み合う熱がお互いを相乗するように高まっていくのが分かる。私の身体を起こし上に座らせ繋がったまま何度も何度もキスをする。そのまま後ろに倒れた土方さんの上にへたりと身体を乗せれば腰を捕まれ下から再びゆっくり突かれる。
達した直後の私を労る動きから土方さんの優しさを感じて胸の奥まで熱くなった。

「は、ぁっ、」
「お前の中、すげぇ気持ちいい。もっと動いて、いいか?」
「んっ、は、いっ」

繋がったままくるりと身体を転がされると視界が反転し土方さんの向こうに天井が見えた。私の顔の横に手を着き身体を起こした土方さんが律動を徐々に早めていく。

「く、っ」

限界が近いのか眉を寄せた土方さんは、私がまだ二回目の絶頂を迎えていないことが気に食わなかったのか右手の親指を一度私の口に含むと下へ持って行き、腰を打ち付けながら親指の腹で突起を撫で始めた。

「あぁんっ!ダ、メっです、そ、れっ!やぁっやっ!ぁああっ!」

2ヶ所を同時に襲う快感はあっという間に熱を上げ、絶頂へ導かれる。奥の良いところばかりを突かれ、濡れた親指が小さな突起に絶妙な摩擦を与える。

「あぁっはっあ、んんっ!あ、ぁ、あっ!ぁあっ!」

二度目の絶頂を迎え私のそこが熱く一定のリズムで収縮したことで土方さんも限界に到達し激しく腰を打ち付けると勢いよく引き抜き、私の上に熱い欲望を放った。

暫く息を整えると土方さんは私の上の白い液体を拭き取り横抱きにして布団の上に寝かせると床に散らばる服を集めて着直しまた机に向かった。

「ふぅ、動いたらスッキリしたな。」
「…癒されましたか?」
「おう、ありがとな。」

私は疲れました、という言葉は飲み込んで重たい瞼を下ろした。
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