その飴はピーチ味
「沖田さんが好きです。」
「俺ァ積極的な女は好きじゃねェ。」
こんな会話があったのが先々週。
そう、私は告白をした。
同い年でありながら、真選組で隊長をしている彼。
仕事柄のせいか、同年代にしてはどこか大人びた雰囲気を持っていて、いつも飄々としている。
そんな彼が好きで、気持ちを押さえられなくなって勢いで告白した結果、見事にフラれたというわけ。
フラれたからには、もう会えないことも覚悟していた。
だけど、予想に反して彼は今までで通り…いや、今まででより頻繁なほどに、私の働く甘味屋へと足を運んでくる。
「よう、団子娘。」
「いらっしゃいませ。今日は何にします?」
口に棒つきの飴をくわえて、いつものようにお客さんがいない時間に現れて、外の長椅子へ座る。
私の気持ちを知りながら、こうしてからかいにくるんだから、ズルい人だ。
ズルいというか、私の反応を見ては楽しんでいるから、ただのドSだ。意地悪だ。
飴をチュッと音を立てて口から出した彼はいつものように団子を頼んだ。
飴のせいで濡れた口元から、つい目が離せなくなる。
「何見てるんでぃ。」
「その飴になりたいなぁって。」
「噛み砕かれてェってことか?」
やっぱり噛む派なんですね。
どちらかというと噛み砕かれたいんじゃなくて舐め回された…いやなんでもない。
でも、
「それもいいかも、しれませんね。」
目を反らして呟く。
もう彼への思いは届かないものだと開き直った私は、最近ではストレートに思ったことを口に出すようになっていた。
それをからかうのが彼の楽しみらしいから。
「やっぱり今日は帰りまさァ。」
「……?」
お団子を頼んだくせに、帰ると席を立つ。
今まで、座っていた彼を見下ろしていたけど、今度は私が見下ろされる。
「他に食いてェもんができた。」
そう言ってまた飴を少し舐めて、すぐに口から出すと、その口で私の唇を奪う。
またチュッと音を立てて。
突然の出来事に硬直した私を、心底楽しそうな意地悪い笑顔で見下ろすと、飴をボリボリと噛みながら立ち去っていく。
「次は噛み砕いてやるから、楽しみにしときなせェ。」
それでもやっぱり飴になりたい。