Avant baiser
―ドォン!
スイーツハウスの扉が、壊れないのが不思議な程の勢いで開いた。
「なまえー!今帰ったぜぇ!」
この家の主のご帰還である。
背後には狩ってきたであろう様々な食材が山積みになっている。
「トリコ!おかえりなさい」
パタパタとスリッパを鳴らして、奥の台所から出てきた妻のなまえが出迎えた。
上から下、右から左、とぐるりとトリコの身体を見渡す。
目視した限りでは身体のどこにも異常は見られないようだ。
なまえは夫の元気な様子にほっと胸をなでおろした。
「とりあえず、怪我とかしてないみたいでよかったわ」
「おう!俺えらいだろ?」
「えぇ、上出来です」
ニッと歯を見せ無邪気に笑うトリコになまえも自然と笑顔になる。
「じゃぁ、今日もご褒美な!」
と言うなり突然腰に捕まれ、トリコと同じ目の高さに抱き上げられた。
「もうー。はいはいっ」
トリコにせがまれるまま、なまえは眉間辺りにちゅ、と唇を落とした。
「今日も無事のお帰り、なによりです」
Avant baiser
―頑張った貴方へのキス
(なまえ!もう一回!)
(んもう、ご飯冷めても知らないよー!)