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「兄貴なにやってんだよ、俺が下界に降りたらクソ怒るくせに自分は良いのかよ?」

「俺は…、ワタルに呼ばれたから…。」


実は俺たちダーヤ一族は、自由に天界と地上を行き来することができる。しかし俺たちの父上、ダーヤ・トールが地上で為体な姿を晒してしまい、お祖父様に神の威厳を保つ為に、と天界と地上の行き来を制限されてしまったらしい。


「俺だってなぁ、地上に行きたいのを我慢して過ごしてんだよ!兄貴がそんな理由で降りるのなら俺だって勝手に降りるからな!」


父上がどんな醜態を晒したかは知らねえが、俺は真面目で良い子にやっている。ちょっとぐらいご褒美に遊ばせろ!という気持ちで、俺は兄貴の返事も聞かずにひょいと地上に飛び降りた。


「うわっ!まぶしっ、なんだ!?」

「ん?」


俺が降りた先には、ヤンキーのような派手な髪をした男が3人の男と向かい合っていた。なんだ?喧嘩か?


「なにをやってる?」

「おまっ…何者だ…?」

「先に俺の問いに答えろよ。」


ピッと軽く竜巻を起こすと、男はハッとした顔をしながら口を開いた。


「…こいつらが、ガキからかつあげしてたから俺が間に入った。」


そう説明する男と向かい合っている男たちは、顔を青くして俺を見上げている。


「やべえ…やべえよ…」

「この方は、ひょっとして…!?」

「逃げろ…!!!」

「ああん?俺から逃げられると思ってんのか?」


ピッ、ピッ、ピッ、と3つ渦を作り、ヒュッ、ヒュッ、ヒュ、と男たちに向けて竜巻を放った。


「「「うわあああああ!!!!!!」」」

「やっぱりダーヤ様だ…!」

「なんでこんなとこに!?」

「ごめんなさあああいもうしませんからぁ!!!」


シュン、と仕上げに男たちを吹き飛ばすと、俺の目の前のヤンキーが「ダーヤすっげー」と声を漏らす。


「あ?呼び捨てか?」

「竜巻ってことは、ダーヤ一族のリトだな。」

「シカトかよ。良い度胸してる。」


ピン、と軽く渦を放つが、そいつは「クッ…」と力を込めて俺の渦に耐えた。なかなかやるじゃねえかこの男。


「名前はなんだ?」

「ユーヒ。ユーヒ・ウノだ。」

「ユーヒな。了解。また来るわ。」


面白い奴に会ったな、と、俺は機嫌よく天界に帰宅した。

ユーヒは威嚇のオーラを放っていた。恐らくそれが、あいつの力なのだろう。3人の男を相手にしていてもまったく怖気付くことなく相手を怯ませていた。

ああいう奴がもっと増えると、俺も少しは楽になるのになぁ。と、俺はユーヒを評価してやり、手下にしたくなったのだった。





この目で見た、ダーヤ一族の力はやはりすごかった。それに比べて俺は…。

相手を威嚇することはできる。しかしそれだけだ。攻撃をするには、もっと俺自身が強くならないといけない…と、俺は寮のトレーニングルームで己の身体をいつも以上に気合を入れて鍛えていた。

これはきっと、ダーヤ・リトの力を目の当たりにしてしまった影響だ。


「頑張ってるな、ユーヒ。」

「あぁ、ワタルさん、ちわっす。」


筋トレ仲間のワタルさんは、俺が使っていたベンチプレスの横に腰掛けた。


「聞いてくださいよ、俺今日ダーヤ・リトを見たんすよ。」

「えっ、まじ?」

「凄かったっす。あんなふうに、俺も力を身に付けたいっす。」

「…まあ、ダーヤ一族だからな。でも、分かる。その気持ち。俺だって強くなりてえよ。」


そう言いながらワタルさんは、ふっと手に息を吹きかけた。ボッと手に収まる小さな炎をジッと眺めている。


「炎が出せるの良いっすよね。」

「ええ、どこが?全然だよ。」

「なんでっすか?炎は水や雷、風と同等にすごい力だと思いますけど?つまり力こそ小さいかもしれませんが、持ってるものはダーヤ一族にだって負けていませんよ。」


俺の素直な気持ちを言っただけだが、ワタルさんは一瞬目を丸くして驚いたような顔をしたあと、クスクスと笑みを見せた。


「ユーヒ良いこと言ってくれるな。確かにそうだな。俺自身がもっと“炎”の力を信じてやんねえとな。」

「そうっすよ。炎は普通に怖いっすよ。」

「お前のオーラもガチでやり合ったとしたらクソこえーけどな?」

「まあお互いもっと“力”をつけましょう。」

「そうだな。」


俺とワタルさんはそんな話をしながら、筋トレに精を出した。


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