バカップルのらびゅ&クソ小ネタA [ 23/87 ]


寝ている時までやめてくれ


夜中にふと目が覚めたのは、抱き枕を抱くようにして俺の背中に貼り付いている奴の腕が腹に回っていて苦しさを感じたからだ。


「ん…。るい苦しい…離して。」


るいの手首を掴んで俺の腹から手を退かそうとするが、るいはガッチリと俺の身体に腕を巻き付けているから離させるのも一苦労。


「すー…すー…。」


気持ち良さそうに眠るるいの寝息が耳元で聞こえるから、仕方ねえな。とるいの腕をそのまま俺の身体に巻きつかせた状態で再び目を閉じる。


しかしそれから数分間、寝付こうとするもなかなか寝付けない時間が続く。


「ん〜…わたるぅ〜」


そうしているうちに、俺はるいの寝言を聞いてしまった。俺の名を呼びながら首筋に唇を押し付けてくるではないか。


え、起きてんのか?と思ってチラリとるいの顔面に視線を向けるが、るいの目は閉じているからやっぱり寝ている。


気持ち良さそうに眠ってどんな夢見てんのかねぇ。と少し笑いながらも首筋から唇を離させようとするが、これもなかなか難しい。


「ゎたるくぅ…ん〜…かゎぃ…ふふ…。」


え、まじでお前どんな夢見てんの?


俺は、ふへっと表情を緩ませながら再び寝言を口にするるいに、顔を無理矢理るいの方に向け、眉間に皺を寄せながらまじまじと見つめた。


さては夢の中で俺を犯しているな?


そんなことを思った直後だ。

俺の腹に回っていた手が、スッと股間に降りてきたではないか。


「え。」


そしてその手は、もみっと俺の股間を揉み始めた。


「え、いや、おい、ちょっ」


もみ、もみ、緩やかに動いているるいの手に、身体がゾクッと反応する。

え、待って、まじ待って、

勃つからやめろや!!!


俺はるいの手の上から自分の手を重ね、動きを止めさせようと力を込める。


しかし、それと同時にるいの足が、俺の両足の間に割って入ろうともぞっと足を動かしはじめる。


こいつ実は起きてんじゃねえの!?


るいにそんな疑いをかけながら、俺は股間を押さえながら膝を曲げた。


少しるいの足が俺の足から離れた瞬間を狙い、俺はドスッ!とるいに向って蹴りを入れる。


「ぅぐっ…!」



るいの呻き声が聞こえ、チラリとるいの方へ視線を向けると、るいは半目を開けて口を開いた。


「…航いきなり何すんだよぉ…」


どうやら今ので目が覚めたらしい。

だが俺は何も言わずに再び目を閉じた。


数分後、やっぱりるいは、抱き枕のように俺の身体に腕を巻き付けてくるのだった。


…もういいや、好きにしろ。


寝ている時までやめてくれ おわり



チョコよりも美味しい


キッチンに立ち、エプロンを身に付け、スマホ片手に真剣な表情でスマホ画面を見つめている航は、「よしっ。」と気合いを入れるような声を出し、スマホを机の上に置いて、パキパキと板チョコを割り始めた。


「お〜、なんか俺今すっげえお菓子作りしてるって感じ。」

「チョコ割ってるだけじゃん。」

「ん?なにか言ったかい?」

「…や、言ってない言ってないよ。航くん頑張って。」

「うむ。」


余計なこと言って航の機嫌を損ねさせるとまずいので、俺は大人しく航のお菓子作りをしている姿を見守ることにしよう。

あの板チョコは、俺に贈られるトリュフになる予定なのだから。それがどんな姿で現れようと、俺は笑顔で『ありがとう』と言って受け取りたい。


それからトリュフ作りを始めて数分。


「ぅおおっと沸騰したぁあっ!!!なに!?この次どうすんの!?おい!るい!!!」

「へ?」


自分一人で頑張りたいと言っていたから俺は黙って見守っていたのに、航はお鍋を前にして俺の名を呼び振り向いてきた。


ぼーっとしていたからなんのこっちゃわかんねえけどとりあえず航の元へ歩み寄りコンロの火を消すと、航は「ふぉっ、サンキュー。」とほっと一息つくように息を吐きながらお礼を言ってきた。


「…大丈夫?一緒に作るか…?」

「大丈夫大丈夫、あっち行ってて。」


う〜ん…心配だ。

あのチョコレートがちゃんと食えるものになるのか…。

しかしここは航を信じて、出来上がるのを待とう。と再びお菓子作りに励む航を見守っていると、だんだん眠気がやってきてしまった。


ほんの少し、うたた寝してしまってハッと顔を上げた時、そこには頬にチョコレートを付け、人差し指で溶けたチョコレートをすくい取り、ペロッと舐めては美味しそうに口元を綻ばせている航の姿があり、俺はそこで、理性を保てなくなった。


ゆらりと立ち上がり、航の元へ歩み寄ると、航は「ん?」と振り向いた。


航の腰に腕を回し、そのまま身体を引き寄せると、「うわっ!チョコ!チョコつく!」と言って航は慌てふためいている。

が、俺はそんなの構わない。

航の頬に付着したチョコレート、それから、指にもついているチョコレート、順にチュッ、チュ、と舐めとった。


航の指を口に咥え、チュゥッと音を立てながら吸い上げる。チラリと航を見上げると、航とバッチリ目が合った。


「ねぇごめん、俺トリュフより航くん食べたい。」


せっかく作ってくれてるのにごめんね、と思いながらも、我慢ができない。


容器に入っていた溶けたチョコレートを指ですくい取り、わざと航の鼻にチョコレートをピッと付け、俺はそんな航の鼻を、ベロンと舌で舐めとった。


「ぎぇっ!」


ブルッと身体を震わす航の口の中に舌を入れ、航の舌を絡め取る。


「んぁ…!」


甘い甘い航とのキスをして、俺はもう一度航を見つめ、お願いした。


「…航…、ダメ…?」

「……くうぅぅっそぉぉお!!!!!しょうがねえ野郎だなぁおめえさんはよお!!!」


航は悔しそうに地団駄を踏みながらも、俺のお願いに頷いてくれたのだった。


その後ベッドで、
彼を美味しくいただきました。


チョコよりも美味しい おわり



雰囲気イケメンのマスクの下


「お、見て見て、雰囲気イケメン発見。」

「おお、ほんとだ。雰囲気イケメン。」

「マスク取ったらそうでも無い系だったりして。」

「あー、それあり得るわ。」


それは、風邪気味のるいを連れて街へ出かけた時だった。

マスクをしたるいを、観察するように視線を向けてくる女の子2人組の会話が聞こえてくるではないか。

ハッ、失礼な奴め。他人を観察して失礼なこと言いやがって。なーにが雰囲気イケメンだバカ野郎。るいは正真正銘のイケメンだ。


俺は、女の子にムッとした表情で視線を向けると、女の子はハッとしたような顔をして、今度は俺に視線を向けて来た。


「やっば、今の聞かれた?連れの人に睨まれた…!」

「てか連れ結構イケメンじゃない?」

「うん。私タイプかも。」



なにこっちを見てコソコソ話してやがる!?今度は俺の悪口言ってんだな!?そうなんだろ!!!


懲りずに今度は俺を見てコソコソ話している彼女たちに、俺はだんだん腹立たしくなってきた。


「ゴホゴホッ…あー喉イガイガする。」


しかし腹立たしい気持ちになっている俺には気付いていない様子のるいは、しんどそうに咳をしている。


しんどいところすまぬが、俺は今とても悔しい。

俺のダーリンは雰囲気イケメンなんかじゃねえ!と大声で叫んでやりたいくらい悔しいから、その気持ちを俺は抑えきれずに「フガッ!!!」と声に出してるいのマスクを剥ぎ取ってやった。

いや、フガッ!と声に出たのは俺ではなくるいの声だった。


突然るいのマスクを取った俺に、「なんだよいきなり!」と驚きの声を上げるるい。


俺はここで、再び彼女たちに視線を向けると、彼女たちはポカンと口を開けてるいを見ていた。


「返せよ!俺の風邪菌が手につくぞ!」


るいはそう言いながら俺の手からマスクを奪い取って、再びマスクをつける。


突然るいのマスクを剥ぎ取る行動に出た俺の考えていることなど知りもしないるいは、「ったく航は。」とかなんとか言っているが、俺はそんなるいの声よりも、その後の彼女たちの会話を耳を澄ませて聞き取って、にやにやと笑った。


「……今見た?」

「……見た。」

ガチ・イケ だったね。」

「うん。ガチ・イケだった。」


へいへ〜いマスク取ったらそうでも無い系とかほざいてたのはどこのお嬢さんだ〜い?


「…ん?航なににやにやしてんだ?」

「いやぁ、雰囲気イケメンのマスクの下はガチイケメンなんだぜ?ってさ。」

「(??)ふうん、そっか。」


航の言っていることがちんぷんかんぷんだったが、あまり深くは突っ込む元気の無い、風邪気味るいであった。


ゴホゴホ!あーつらい…。ゴホ!…航くんとチューできない。つらい。」

「あ、そっち?」


雰囲気イケメンのマスクの下 おわり



航くん可愛いっ(>∀<)


航が見たいと言い出したから、レンタルショップで新作のホラー映画を借り、家に帰ってさっそく約二時間程度のホラー映画観賞を行なった。

予想以上の迫力と恐怖に、航は度々俺の身体にしがみついては薄目でテレビに視線を向けている。

そんな航の様子に俺は、最高だな。とあまりの航の可愛さに身体が震えた。

ホラー映画は別に好きでも嫌いでもないけど好きになりそうだ。


ホラー映画を見終わってから俺は、さて、風呂に入ろうか。あ、航も一緒に入る?と聞こうと思いつつ聞かずに先に風呂の準備をしていると、航は何故か驚いたように俺に問いかけてくる。


「えっ!るい風呂入んの!?」

「え?うん。」


なにをそんな驚く必要があるのだろう、と思いながら頷くと、航は素早く自分の分のタオルと下着を準備し始める。


「俺も一緒に入る。」


そして、俺から誘う前に航がそう言ってきた時、俺はピンときた。

あ、こいつ、
一人で風呂に入んのが怖いんだ。

そうと分かれば、俺は自分の口角がニッと上がってしまって、咄嗟に口を手で隠した。


「え、今日は別々で入ろうよ。」

「え!?やだ!なんでそんなこと言うんだよ!俺が一人で入んの怖いって分かっててわざと言ってるだろ!いじわるすんな!」

「…ふっ。ごめんね、航が可愛いくてつい。」


なんと。航には俺の考えが全てお見通しだったようだ。必死で俺にそう言ってくる航さえも可愛い。

あまりの可愛さに思わず笑い声が出てしまった。


ちょっと膨れっ面で風呂場に向かう航。


「風呂場から赤い液体出てきたシーンとかなかなかグロかったよな。」

「ちょっ!思い出すだろ!言うなって!」

「あ、ごめん。」


先程のホラー映画の内容について話しかけると怒られた。やっぱりあのシーンがあったから一人で風呂入んの怖かったんだな。


「俺先に頭洗う。」

「洗ってあげようか?」

「いい。猛スピードで洗う。」

「ふぅん。」


俯いて、航はわしゃわしゃと素早く頭の上で泡を立てはじめた。

と思いきや、手を止め、目をチラッと開けて俺に視線を向けてくる。


「ん?」と首を傾げるが、航は何も言わずにまた俯いて髪を洗うのを再開した。

かと思えば、また手を止めチラッと俺を見てくる。


「ん?なに?なんもいじわるしないって。」


とか言いつつ、航がまた俯いて髪を洗い始めた瞬間、俺は航の背中に触れ、ススス、とゆるく手を動かした。


その瞬間、航はバッと顔を上げて叫んだ。


「バカぁ!!!やめろよ!!!」

「ふふっ。航くん可愛いっ(>∀<)」



何をしても可愛すぎる航に、俺はちょっと遊びすぎてしまったようだ。

それから暫くの間、
航は口を聞いてくれなかった。


航くん可愛いっ(>∀<) おわり


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