子供を甘やかしちゃうパパ [ 19/87 ]


※ 父の日の数日前の矢田家のおはなし


「お父さんお父さんお父さんお願い!今度父の日にプレゼントあげるからお小遣いちょうだい!?」

「いやおかしいだろ。」


可愛い可愛い我が娘が、可愛い顔をして俺にお小遣いをせびる、いつも通りの休日。


「じゃありなはいくらのプレゼントをお父さんに買ってくれるんだ?」

「お父さん!プレゼントは値段じゃないよ!愛だよ、愛!!!」

「はぁ…。愛、か…。…ほらよ。無駄遣いすんなよ。」

「お父さんありがとう!!!」


あぁ…、可愛い娘の愛に負け、父、お小遣い日でも無い娘に5000円を与えてしまった。お母さんには秘密だぞ…。


娘はおしゃれをして出掛けて行った。

ハッ…!

まさかデートじゃねえだろうな!?

俺としたことが…迂闊だった…

デートのためのお小遣いを与えたくはないのだ。そこをちゃんと聞いておくべきだった。


「ああぁぁぁ…っ」

「なに頭抱えてんの?」

「…おお、りとか。」


お前起きるの遅すぎだぞ。

時刻は12時前。

ボサボサな寝癖頭をした次男りとが、だらだらと自室からリビングへ現れた。


「いやあのな、りながおしゃれをして出掛けて行ったからまさかデートか?と思ってな。」

「あいつ彼氏いねーだろ。」


りとは興味無さげにそう吐き捨て、コップ一杯のお茶をゴクゴクと飲んだ。


「彼氏いなくても男と出掛けるってこともあるかもだろ。」

「心配なんだ?」

「あぁ。変な男に娘はやらん。」

「じゃあどんな男ならいいの?」

「いや、どんな男もダメだ。…そうだな。百歩譲って航のような礼儀正しい子なら認めてやろう。」

「…ふぅん。」


りとは興味無さげに相槌を打って、そっぽ向いた。お前は妹が心配じゃねえのか。

お父さんは突然娘の彼氏を紹介されても困るぞ。


「あ、父さんちょっとコンビニ行きたいからお金ちょうだい。」

「ったくお前らは!!!俺をなんだと思ってるんだ!?」

「お父様ですね。」


「…はぁ。こんな時だけ様付けか。で?お前は父の日にいくらのプレゼントをくれるんだ?」

「プレゼントは値段じゃなくて気持ちだろ?」

「はぁ…まったく。都合の良い兄妹だな。…ほらよ。無駄遣いすんなよ。」

「サ〜ンキュ〜父さんなんかいる?」

「じゃあポテトチップス。」


以前、家にあったポテトチップスを食べたらりなに物凄く怒られたが、お父さんだってたまにはポテトチップスが食べたい。


りとにポテトチップスを頼むと、りとは陽気に鼻歌を歌いながら出掛けて行った。


あぁ…あいつら家にいないだけで静かだな。

と、静かな空間に少しうとうとしそうになったところで、側に置いていたスマホが着信を知らせた。


【 るい 】と表示しているスマホ画面。


なんだなんだ?お前もお小遣いが欲しいって?

いや、まさかな。

長男、るいだけは、今まで一度もお父さんにお小遣いを求めに来たことがない。


「もしもし、るい?どうした?」

『あ、もしもし?父さん久しぶり。今度の日曜家にいる?』


お、その日は父の日だな?


「おう、いるいる。」

『オッケー、わかった。じゃあ日曜日に。』


るいはそれだけ言って通話を切った。

日曜日帰ってくるんだな?

だってその日は、父の日だから!


いや〜相変わらずお兄ちゃんはさすがだな。

りともりなも、少しはお兄ちゃんを見習ってほしいものである。


るいには今度、お父さんが好きなものを買ってやろう。


子供を甘やかしちゃうパパ おわり


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