りとのマザコン観察(中学生) [ 17/87 ]
『母さん、俺が荷物持つよ。』
『母さん、夕飯作るの手伝おうか?』
『母さん、風邪?休んでていいよ。』
母さん、母さん、母さん……って、
兄貴……、マザコンじゃね?
…と、俺は口に出したことは無いがずっと思っていた。口に出したところで、母親の手伝いをする息子の何が悪いのだと反感を買うだろうから、きっと言わない方がいい。
りなも『お母さん、お母さん』といつも母さんに甘えているけど、娘と息子じゃちょっと見方が変わってくる。
ある日家族で買い物に行った日、母さんと兄貴は俺とりなと父さんの前で並んで歩いていた。
兄貴の身長はとうに母さんを越している。後ろから見ると、カップルのように見えなくも無い。
父さんにコソッと「兄貴と母さんが夫婦みたいに見える。」と言ってみると、父さんは一気に機嫌を悪くして兄貴から母さんを引き離した。
その後不思議そうにしながら兄貴は「なんか知らねえけど父さんに怒られた…」と言って俺の隣に並んできた。兄貴はちょっと凹んでてウケる。
しかしその後、すぐに調子を取り戻した兄貴がまた母さんの隣に行き、「あ、母さんこの服どう?」って母さんに服を勧めていたから、俺はやっぱり兄貴ってマザコンだと思った。
「るい向こう行ってろよ!まいちゃんに似合う服は俺が選ぶ!」
そしてまた父さんに追い払われてションボリしながら俺の隣にやってきた兄貴。
「じゃあさ、兄貴、俺ら別のとこ行ってるから金くれって父さんに言ってきて。」
「はあ?なんで俺が。自分で言えよ。」
「いいから。早く。」
兄貴にそう頼んで父さんのところに行かせると、数分後兄貴は1万円札を手にして俺とりなのところに戻ってきた。
よしよし。さすが兄貴。
俺やりなだったらこうはいかなかった。
きっと父さんは、母さんを一人占めしたかったから兄貴にどっか行ってろという意味で金を渡したのだろう。うっしっし。兄貴ナイスだ。
その後俺たち兄妹は、父さんから連絡が来るまでゲーセンで遊んだ。
父さんから連絡が来て、母さんと父さんと合流すると、母さんは手にショッピングバッグを持っている。
「母さん荷物持とうか?」
いち早く母さんに歩み寄った兄貴に父さんが気付き、父さんは素早く母さんからショッピングバッグを奪い取る。
なに母さんの荷物の奪い合いしてんだよ。と俺は呆れながら観察していた。兄貴はちょっとむすっとしていたから、やっぱりマザコンだと思った。
兄貴が高校生になり、寮に入ってからは、度々母さんとメールのやり取りをしているようだ。
俺は母さんとそれほどメールのやり取りなどしない。だから結論を言えば俺が普通。
兄貴はマザコン。
りとのマザコン観察 おわり
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