幼少期航の苦い思い出 [ 10/87 ]


※ S&E next→ 第33話
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その1:正月に俺のお年玉でゲーム買ってそのまま家持って帰られたことある。


正月での一番の楽しみは、お年玉を貰う事だ。

お年玉貰ったら、半年ほど前からずっと欲しかったゲームを買おうと決めていた。

その時は、母ちゃんの兄夫婦とその子供、つまりは俺のいとこが家に来ていて、お年玉を貰った俺や兄ちゃん、そしていとこの大和はみんなで行ったデパートのおもちゃ売り場へウキウキしながらゲームを買いに行った。

俺は迷わず欲しかったゲームを買うが、大和はあれもこれも欲しそうに悩んでいる。


「航どれ買った?」


そう大和に聞かれたから、「俺はこれ。」って袋の中からゲームを取り出して大和に見せると、大和は「それ面白そう。」って興味津々。


「ちょっとならやらせてやってもいいぜ!」って、テンションが高くウキウキな俺は、ウキウキしながら大和にそう言ってやると、「よっしゃ〜じゃああとでやらせろよ!」って大和が喜んでいるから、俺は「うん!」って笑顔で頷いた。

結局この時、大和は自分のお年玉でゲームを買わず、俺のゲームを一緒に楽しんでいた。


「じゃあ大和そろそろ帰るで」って、大和のお母さんが大和に声をかけている時、大和は「ん〜。」と返事をしながらも夢中でゲームをしている。


大和たちは車で来ていたから、車に乗り込んだ大和は、「じゃあ航、海渡またな〜!」って手を振っているから、俺も「またな〜!」って手を振り返す。


大和が帰ったあとに、俺はじゃあゲームしようかなって思った時、俺はハッと周囲を見渡した。


「俺のゲームないっ!!!」


その頃、大和は車の中で、楽しく俺のゲームで遊んでいた。


俺のゲームを持って帰ってしまった大和は、帰ってから大和のお母さんに物凄く怒られたらしいが、俺は当然だと思いながら、大泣きした。


「俺のゲーム返せ〜!!!うわぁぁん!!!大和のあほ〜!」



その2:ちっちゃい頃、あいつが口に入れた牛乳顔面にぶっかけられた事とか。


あれは、俺がまだ幼稚園児だった頃だ。

一つ年上のいとこの大和は、小学生になりたてで、「俺牛乳飲めるようになってん。」って自慢気に話してくる。

どうやら大和は牛乳が今まで飲めなかったらしいが、わりとどうでもよかった俺は「ふぅん。」って興味無さ気に大和の話を聞いていた。

すると、「見とけよ?」と大和は鼻を摘みながら口の中にゴクゴクと牛乳を流し入れた。

うわあこいつ変な飲み方するなぁ。って、俺はポカンとしながら牛乳を飲む大和を眺めていたのだが、その次の瞬間、大和は「ゲハッ!ボホォ!!!」っと結構グロい音をさせながら牛乳を吐き出したことは今でも鮮明に覚えている。

その吐き出された牛乳は、大和の真正面にいた俺の顔面に見事にぶっかけられ、俺は一瞬頭も視界も真っ白になった。


「うわぁぁんかぁちゃぁあぁあん!!!やまとにかけられたぁあ!!!」


俺は髪や顔面が牛乳まみれのまま、母ちゃんに泣きつきに行くと、母ちゃんは「ええ!?航ビショビショやん!」と言いながらとりあえず俺の顔をタオルで拭いてくれる。

すぐそばで「ガハッ!ゲホ!」と噎せている大和は、大和のお母さんに「あんたなにやってんねん!はよ航くんに謝り!!!」ってクッソ怒られていた。ざまあ。



その3:サンタクロースは近所の家のじーさんって教えられて、近所のじーさんに欲しいもの言いに行ったこととかもあったな…。


冬休み、小学2年生のいとこの大和がうちに遊びに来ていた。

その時小学1年生だった俺はまだサンタさんがいることを信じていたのだが、大和は俺に驚くべきことを教えてくれたのだ。


「航、あそこで庭掃除してる白ひげのじーさんおるやろ?あのジジィ間違いなくサンタや。」

「えー!?嘘ぉ!?あのじーさんが!」


俺はその時、キラキラと目を輝かせた。
まさかこんな身近にサンタがいるとは。


「クリスマス明後日やから欲しいもんはよ言いに行かな!」


大和が俺にそう言うから、俺は「うんっ!」と張り切って頷くと、すぐさま白ひげのじーさんの元に駆け寄った。


「ん?どうした?」


じーさんは目の前に現れた俺を不思議そうな目で見てくる。

俺はそんなじーさんに、手を合わせてお願いした。


「サンタさん俺な、ラジコンかゲームがほしい!!!」


するとそのじーさんは、「ほぇっ!?」とびっくりしたような声を出した。

それから困ったように俺に告げる。


「うぅむ…。困ったな。残念ながらわしはただのジジィや…。」


そう言われた瞬間、俺は頭が真っ白になり、その場から動けなくなった。

すると、大和から話を聞いたらしい兄ちゃんが俺の元にやって来てくれて、そのじーさんに「弟が勘違いしてしまったんです、すみません…。」と謝ってくれたあと、俺の手を引いて家に帰った。


家に帰ると大和は「わははは!!!わたるのあほ〜!」って笑ってて、俺はそんな大和が憎くて憎くて、兄ちゃんにしがみつきながら大号泣した。


「うわぁぁぁあぁあん!!!!!やまとひどいぃ〜!!!」


その年のクリスマスは、今までで一番豪華なプレゼントを貰った。どうやらあの白ひげのじーさんが、母ちゃんに俺がほしい物の話をしてくれたとか。


幼少期航の苦い思い出 おわり


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