大和と航のはじめまして(航幼少期) [ 9/87 ]
俺のお父さんには妹が一人いる。
俺が5才の時の正月に、はじめておばあちゃんの家に親戚で集まっていたのだが、その時にお父さんの妹もやって来て、その人は子供を2人連れていた。
「はじめましてー、大和くんのいとこの海渡と航ですー。仲良くしたって?」
お父さんの妹は、そう言って俺に“いとこ”とやらを紹介してきた。
「かいとでーす。」
1人は俺よりひとつ年上。
よろしくー、とくだけた様子で俺に自己紹介をしてくる。
しかしもう1人はべそをかいているようで、何も言わずに俺からそっぽ向き、お父さんの妹にしがみついた。
俺よりひとつ年下だから、4才。
4才の航は、まだ母親にくっついてばかりの甘えん坊だった。
「航、大和くんやで。あんたのいとこ。一緒に遊んでおいで。」
トントン、と航の肩を叩いて、俺の前に航を立たせるお父さんの妹に、航はむっすりした顔でぎゅっと両手で自分の着ている服の裾を掴んでいる。
その手をそっと握ると、航ははじめて俺に視線を向けてきた。
「…なんかしてあそぶ?」
「……かくれんぼがいい!」
航に向かって問いかければ、航はべそをかいていたくせに、一瞬で満面の笑みを浮かべてそう言った。
航は、とても人なつっこい子だった。
「おれがかくれる!」
航はそう言って、タタタと部屋を走り始めた。
「こら!航!走ったらあかん!」
お父さんの妹に、部屋の中を走り始めた航は大声で叱られている。
甘えたで、べそかいてて、やんちゃ。
これが、友岡 航の第一印象だ。
その後、隣の部屋の押入れの中に隠れていた航は、自分からかくれんぼしたいと言い出したくせに、押入れの中でぐっすり眠っていた。
そんな航をおんぶして、親戚一同が集う部屋へと顔を出す。
「航寝ちゃってた。」
「あーもー。大和くんごめんね、ありがとう」
お父さんの妹は、そう言って航の身体に手を伸ばす。
俺はその瞬間、まだ、もうちょっとだけこうしてたかったな、って思った。
何故なら、俺の背中で眠っている航が、
すごくすごく、可愛かったからだ。
大和と航のはじめまして おわり
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