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あーあ、なんかもうめんどくせえ。
この学校めんどくさすぎ。なにが自覚だよ、影響力だよ、知らねーよそんなの。なにが親衛隊だよ、うざってえ。俺が何したってんだよ、勝手にやってろよ。バカバカしい。
一人で考えれば考えるほど、投げ遣りにやってきて、憂鬱になってきた。
そもそも俺は、めんどくさがりな性格なんだ。度重なる面倒ごとにそろそろ俺も、我慢の限界ってものがある。その限界が、今なのかもしれない。
あーあ、昼休憩終わる時間だけどもうなんでもいいわ。別に俺午後から特にやることねえし。もう体育館戻んのもめんどくせえ。
無責任にも俺は、その後の生徒会の仕事を放棄した。
「ゆーうーとー。」
体育館を出てフラフラと外を歩いていると、背後から名前を呼ばれた。光だ。なんだあいつ、俺の後ついてきたのかよ。
「なんだよ。ついてくんな。」
「やだー。連れション連れションー。」
「あほか。来んな。」
つーか便所行かねーし。
行く当ては無いが、光から離れるためにスタスタ歩み始めた俺の後を、光はタタタ、と駆け足になってついてきた。
「うぜえ!どっか行けよ!」
「佑都機嫌わるー。」
「お前がうぜえからだろ。」
「やさぐれんなよ。ゆずちゃん怪我したのは佑都の所為じゃねーよ。」
「うっせえな!どっか行けっつってんだろ!」
「行・か・ね・え!あ、そうだ。弁当食お。中庭で弁当食べよう。」
光に荒い口調で怒鳴りつけても去ってはくれず、弁当を持った手の反対側の手で俺の手首を強引に掴んで引っ張った。
「うぜえよ光。」
「知ってるー。」
「なんでお前は昔から俺の言うこと聞かねえの?」
「佑都に構って欲しいからー。」
「あほか。あ、違った、バカか。」
「どっちでもいいよー。」
言っても言うことを聞かない光にズンズン手を引かれ、中庭まで連れて来られた。
なんで俺が光のいいようにやられてんだよ。むかつく。つーか食欲ねーよ。
しかしベンチに座った光は、弁当をさっそく食べ始める。「はあ。」と重いため息を吐いて、俺も光の隣に腰かければ、光は「ふふっ」と満足そうな笑みを浮かべた。超むかつく。
「おいしい。からあげ弁当だよ。佑都いらねえんならちょうだい。」
「やるかボケ。」
光は俺の弁当に手を伸ばしてきたので、ひょいとそれを光の手から遠ざけた。
無かったはずの食欲だが、隣で美味しそうに食べられると、俺もなにか口にしたくなってくるもので。
無言で弁当の蓋を開けて、割り箸を割ると、また笑みを浮かべて光が俺を見てきたので、なんかむかっとしたから頭を一発しばいた。
「なんで叩くんだよ!」
「なに笑ってんだよ。」
「落ち込んでる佑都は似合わないなあと思って。」
「別に落ち込んでねえよ。」
「ふうん?ならいいけど。佑都が自分を責めたって、ゆずちゃんが可哀想なだけだし。」
「は?意味わかんねー…。」
なんだよ、俺が自分を責めたらゆゆが可哀想って。
別に俺は、自分を責めているつもりはない。
ただ遣る瀬無い気持ちにはなる。
俺が原因でゆゆが階段から突き落とされたとなれば、勿論ゆゆには申し訳ない気持ちになる。だからって、俺はどうすればいいのか。どう対処すればいいのか。先程会長から聞いた話について考えてみても、やっぱりただ遣る瀬無い気持ちになるだけで、ぶっちゃけ頭ん中ムシャクシャしててなにも考えたくねえ。
「ゆずちゃんは佑都のこと大好きだから、きっと佑都の所為とか思ってないし、それなのに佑都が自分の所為だって思ってたらゆずちゃんがっかりすると思う。
あ、そうだ。これ食ったらゆずちゃんとこ行こう!!」
光は弁当を食べる手を止めて、突如そんなことを言いだした。
「行こうってお前、ゆゆがどこ居んのかわかって言ってんのかよ。」
「え、保健室じゃない?」
……ああ。…なるほど。
そういやゆゆ、怪我したんだったな。
そう思ったら、またなんか自分の中でずぅんと気分が重たくなった。
「…お前一人で行ってこいよ。」
「え、佑都も行こうよ。」
「…俺が行ったらダメだろ。」
「なんでだよ。」
「お前会長の話聞いてなかったのかよ。俺には自覚が足りないとかなんとか言われたんだぞ。また俺がゆゆと会ってどうすんだよ。」
俺がそう言うと、光は何故かにっこりと笑った。なんでそこで笑みを浮かべるんだ。意味わかんねーよ。人のことバカにしてんのか。
…と俺は不快感を露わにするようにムッとすると、光はにっこりと笑ったまま、口を開いた。
「大丈夫だって、もう絶対ゆずちゃんに手出しさせねえからー。俺に手があるんだー。」
そう言って光は、ふふんと気分良さそうにそう言った。ますます意味不明だ。
ひょっとしてなんか仕出かすんじゃねえだろうな。勘弁しろよ。
「変なこと考えてんなよ。」
「んー?変なことー?」
こいつ絶対変なこと考えてる…!!!
にこにこ笑いながら再び光は、弁当を食べる手を再開させた。
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