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「てかまじで神谷様…じゃなかった、…佑都、親衛隊いるって知らなかったの?」


そう話を切り出したのは、俺の正面に座る将也だ。そもそも知らなかったの?と聞かれても、そんな居て当たり前のような語り口調で話されることがびっくりだ。


「生徒会長とかにはなんかそんなのがいるとは聞いたことがある。」

「あー、そっかわかった。佑都はそもそもそういう話全般に疎いわけね。」


そう言いながら、うんうん。と納得したように一人頷いているのは凛ちゃんだ。因みにもう俺は凛ちゃん呼びで定着した。
つーか疎いっていう言い方は失礼ではないか?興味が無いだけなんですがね。言ったところで時間の無駄だから言わないけど。ええ、どうせ俺は疎いんですよ、っと。


「あぁ、そうそう。だから俺に話がわかるようにわかりやすい説明よろしく。20文字以内で。」

「神谷佑都には親衛隊たるものが発生している…はい20文字!!」

「あーうん、そだな。わかりやすい説明どうもありがとう。…つまりそーいうことですか…。」


軽く冗談で言った20文字以内という規則に沿って答えてくれた向井の回答に、俺はガクリと肩の力が抜けた。


「つーか親衛隊ってなんだっけ…。」

「なんかさっきも似たようなこと言ってたな佑都。おいー大丈夫かよ、学年主席。」


そう、先程“ファンとは何か”と思ったすぐ後にこの仕打ち。なんだ今日は厄日か?


「…てかなんで俺に親衛隊とか…。」

「え、超かっこいいから。」

「…向井、お前なんか変なフィルターかかってんじゃねーの…。」

「佑都まじ自覚ねーのな!そりゃ1年間親衛隊の存在にも気付かねぇわけだ、納得!」


そう言って軽快に笑う、茶髪頭に黒縁眼鏡をかけた男……先程から俺の正面に座る将也の隣に座っている、勇大だ。

彼は少々毒舌家である。思ったことを素直にズバズバと口にするタイプのようで、俺は勇大の言葉に多少のダメージを食らった。

自覚って一体なんの自覚…。
俺はそもそもそこから分かっちゃいないのだ、自覚のしようもないではないか。


「いや勇大、佑都は自覚ないってもんじゃないんだ。そもそも興味が無さすぎんの!自分自身にも!!」


猛が張り切った口調でそう語った。…っておま、なに人のことわかりきった口調で話してんだよ。もうつっこむのも疲れたわ。


「でもさー、親衛隊のことはまじで知っといた方がいいと思うんだよねー、俺。」


突然真面目な顔をして話し出した向井に、場の空気が一変する。


「あぁ、それは俺も思う。多分光、目付けられてるしちょっと危ないかも。」

「は?どういうこと?」


この話の流れで突然光の名が出てきたことに驚いた。


「光ってあれでしょ?幼馴染み。」

「今かなり噂になってるぞ。」


凛ちゃんに続いて将也が言う。

確かに光は目立っているが、それと親衛隊とどう関係があるというのか。


「つーか俺親衛隊の会話聞いたことあるけど、えげつないぞ、あれ。『幼馴染みか何か知らないけどウザイよね!』っつってたぞ。佑都の幼馴染みのこと。」

「は?なんでそいつらが光をウザがんの。俺だろ?光をウザがる立場は。」

「あらー、佑都って幼馴染みまじでうざいんだ!仲良いと思ってたんだけど。」


驚いたように言う凛ちゃんの言葉に猛が横から口を挟んだ。


「あ、違う違う。愛のあるウザがり方ね?仲はすっごい良い。」

「猛うぜー。愛のあるとかキモいって。」

「これこれ。こんなウザがり方。」

「なるほど?そりゃ親衛隊も刺激するわな。」


猛の話にうんうんと納得したように頷いている勇大が言った。


「親衛隊を刺激?」


意味がわからん。
つーかさっきからまじで俺だけ話についていけてない。


「あーもう佑都がついてこれてない。まじで疎いな。鈍感なの?」

「お前結構ズバズバ言うよな、腹立つわ。」

「あははー、ごめんごめん!」


謝る気ねぇだろお前。

へラリとした顔の勇大に、俺はさらに腹立つのであった。


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