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「夏木…くん?…だったっけ?」
「うん?そうだけど。」
「夏木くんって神谷先輩と知り合いなの?」
「神谷先輩?…あ、佑都?」
休み時間に俺に話しかけてきたのは、小柄で可愛らしい見た目のクラスメイトだった。
なにこの子、むちゃくちゃ可愛い。髪ふわふわで目大きくてうさぎちゃんみたい。…って男子に言うのは失礼だろうか。
…え、ところでこの子、男の子だよね。可愛いすぎて性別まで疑ってしまうレベル。
「うん、さっきも親しげに話してたし。」
「家が隣同士で幼馴染みなんだよー。」
「そうなんだぁ!羨ましいなぁ…。」
うん?……羨ましい?
俺はうさぎちゃんの言葉に首を傾げた。
つまりこのうさぎちゃん、佑都と親しくなりたいのだろうか。
「聞いていい?」
「うん、いいよ。なぁに?」
「君、佑都のこと好きなのか?」
「えっ…!!えーっと…。」
あ、顔が赤くなった。
好きなんだ、この子。佑都のこと。
「俺ら昨日入学したとこだよね?どうして佑都のこと知ってんの?」
俺ははじめから気になっていたことを尋ねてみる。初等部、中等部がある学校だってことは知っているけど、まさか佑都が中等部の生徒にまで知られていたということだろうか。
「それはね、僕中等部から持ち上がりで高等部に入学したんだけど、中等部の新聞部が高等部から高等部の新聞記事よく貰ってくるんだ。それファイリングされてて図書室で読めるんだけど、去年の今頃の新聞記事は神谷先輩の内容で大半占めてたんだよ。“外部入学” “特待生”っていう話題プラスなんてったって超美形っていうのが騒ぎの原因だよね。だってほんと、神谷先輩かっこいいんだもん。僕去年の文化祭と体育祭見に行っちゃったよ。だから高等部早く上がりたかったんだ〜僕!」
と、うさぎちゃんは頬を赤く染めながら熱く語ってくれた。っていうかまだまだ語りたそうだ。ちくしょー、佑都のやつ。こんな可愛子ちゃん虜にさせやがって。男だけど。
「ふぅん、そうなんだ。教えてくれてありがとう。」
「ううん、全然いいよ。それでね、あのね、
夏木くん…。」
おやおや、なにか俺に頼みごと?
まあある程度予想はできるけど。
「あ、佑都の寝顔写真が欲しいとか?」
俺はいたずらな笑みを浮かべて、携帯画面をうさぎちゃんに見せてみた。
「わわわ!!ちょっと!不意打ちとかやめて心臓に悪いよ!」
うさぎちゃんは顔に両手を当てながらもやはり写真が見たいのか、指の隙間から携帯画面を覗いていた。面白い。
寝顔でこの反応ならば、風呂上がりとか着替え中の写真ならばもっと面白いことになりそうだ。
「この写真見せたこと内緒なー?佑都に怒られるから。」
「そ、そんなの言えないよ!って僕が言いたかったことはね、神谷先輩と喋ってみたいんだ!」
ほほぅ、つまり俺にセッティングしてくれってことでいいのだろうか。
「じゃあ行く?佑都のとこ。」
「え?え?一緒に来てくれる?」
「いいよ。じゃあ次の休み時間な。」
俺の提案にうさぎちゃんは、凄く嬉しそうに頷いた。
その後うさぎちゃんは、これからよろしくね。と俺に手を差し出した。
彼の名は 松波 柚鈴 (まつなみ ゆず)。見た目も可愛いけど、名前もなんだか可愛い気がする。
「柚鈴って呼んでね?」って可愛く微笑まれ、「よろしく」と手を握り返した。
はじめてできた同じクラスの友達は、とっても可愛い佑都のことが好きな子だった。
「たっのしみだな〜!神谷先輩のとこ行くの!」
「スキップるんるんだねぇ柚鈴ちゃん。」
「ちょっと!“ちゃん”は要らないよ?」
「ちゃん付けた方がしっくりくるよ?」
「え〜〜?」と言いながらも柚鈴はにこにこと嬉しそうに笑っている。それほど佑都に会いに行くのが楽しみなのだ。まるでこの子、恋する乙女のようである。男だけど。
こうして休み時間、俺達の教室の下の階に訪れた俺と柚鈴。上級生の領域に来た柚鈴は、少しびくびくし始めた。さっきまでのテンションは一体どこへ行ったのか。
「神谷先輩は僕達と同じSクラスだから、この階の1番奥の教室だよ。」とやや震えた声で話す柚鈴。
どうやら上級生が怖いらしい。廊下にうろついている上級生らしき生徒を見ては、びくっと肩を震わせた。
あまりに柚鈴がびくびくするので、柚鈴の腕をガシリと掴みそのままズイズイと引っ張って歩く。
「うわっうわっ、待ってよ光!」
「あ、ここじゃね?2年Sクラス…あ、ほら。」
教室の扉の上にそう書かれている文字を見て、教室の中を覗いた。
「佑都く〜ん、どっこかな〜?」
「ちょちょちょっと光っ!!?」
教室内に響いた俺の声で、柚鈴は一層慌て始める。そんなに慌てていてももう無駄だ。
俺の声で、教室に居た生徒は皆こちらに注目しはじめたのだから。
そして俺は、教室の奥で目を見開いてこっちを見ている佑都を見つけた。
驚いてる驚いてる。俺は心の中でクククと笑う。
「キャー!神谷先輩見つけたわよ、松波さん!」
「えっ!えっ!えっ!?」
どうしていいのか分からず、柚鈴は顔を赤くしながら挙動不審になっていた。
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