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光星と郁馬はぎこちない様子ではあるものの徐々に話せるようになっていき、三人で互いの学校の話などをしながら昼ご飯を食べた。ちなみに食べたものはべつにどこにでもありそうなチェーン店の安い牛丼である。金欠DK郁馬のチョイスだ。
午後からは光星に俺が通っていた高校を紹介しようと電車に乗って高校へ向かい、高校の最寄り駅で降りて駅から数分歩く。
高校の前まで辿り着くと、光星は「お〜…すげえ綺麗だなぁ。」と興味津々で校舎を見上げていた。俺は「誰か知ってる人いーひんかな?」って校門から中を覗いてみるものの、残念ながら偶然誰かに会えることは無さそうだ。
「ここの大通りをずーっとチャリで走って通学しててん。なぁー郁馬!」
「うん。永遠居んようになってから毎朝だるくて遅刻しそうになってる。」
「俺が原因みたいに言うな、元々朝は弱かったやろ。」
「でも永遠が居たから頑張って起きて一緒に学校行ってたんやもん。永遠が居な俺遅刻しちゃう。」
「知らんがな。」
いつまでも俺にこっちに戻ってきて欲しそうにする郁馬に少し冷たい態度を取ったらぐにっと頬をつねられた。
「痛いな!やめろ!!」
「あーあ、やっぱつねり甲斐あるわ永遠のほっぺた。家持って帰りたい。」
「あかんわ。持って帰んな。」
永遠とぐにぐに俺の頬を摘んで引っ張ってくる郁馬にも素っ気なく返している俺の隣では、何が面白かったのか光星がクスクスと笑っていた。
ここの道をこう行って、ああ行って、って話が通じてるか分からないけど光星に前の家への行き方とかを説明しながら歩いたら、光星は俺の話をずっと相槌を打ちながら聞いてくれていた。こんな話を聞いても面白くなかったかもしれないけれど、ちょっとでも引っ越し前の俺のことを興味持ってくれていたら嬉しい。
歩いていたらすぐに時間が経ってしまい、日が沈んできたところでそろそろホテル方面に向かうことにする。
「永遠二泊三日って言ってたよな。」
「うん、明後日の夕方に帰るで!」
「嫌や。帰んな。」
「郁馬もいつか俺の今の家遊びに来て!」
「うん、そのまま住まわせてもらうわ。」
冗談を言っている郁馬の言葉をスルーして駅に向かって歩いたら、またぐにっと頬をつねられた。でもちょっと優しいつねり方であまり痛くは無い。
「大学もやっぱそっち行ったままなん…?」
「うん、郁馬はどうするん?進路決まった?」
「…全然。永遠のところ行きたいって言ったら親に却下されたし。」
「言ったんや。」
「永遠がこっち戻ってきてくれたら嬉しいねんけどなぁ〜。」
チラチラ、と目を見ながら言われても、もう戻らないったら戻らない。郁馬が戻ってきて欲しいって態度を見せれば見せるほど光星の顔には苦笑いが浮かび、郁馬には悪いけど俺は光星を安心させたくて、郁馬への返事はちょっと素気なくなってしまった。
17時を少し過ぎた頃に俺と光星が泊まるホテルに到着し、チェックインをしてから帰るのを渋る郁馬とはお別れした。
明日もまた会えるから、って手を振ったら、しょんぼりしながら帰っていく。ちょっと可哀想にも思えるが疲れを溜めないために俺は早く部屋に行きたい。
それにほら、…な?
お楽しみはここからやもん。
人気の無いホテルの廊下を光星の腕に抱きつきながらるんるんと歩いたら、光星は照れ臭そうに笑っている。この後思う存分イチャイチャできると思ったらテンション上がるな?な?光星。
部屋の前に到着して、扉の横にあるカード差し込み口にカードキーを差し込み扉を開けた。少し狭めの部屋にベッドが二つ並んでいる。でも綺麗なお風呂とトイレに大きなテレビもあって申し分のない部屋だ。
「…ご飯何時に食べる?先にお風呂入る?」
光星をチラッと見上げてそう問いかけたら、緊張しているのかガチガチに固まっていた光星がうんうん、と頷く。
「…あ、一緒に入る?」
「えっ…あ、うん…」
「光星緊張してるやろ。」
笑いながらそう言ったら、やっぱり図星だったのか光星は何も返してこなかった。
「…なぁ、もうしちゃってもいいで?」
光星は本番をするまでずっとガチガチになってそうで、それならもう早いこと済ませようと光星の身体に抱きついて誘ってみると、光星の顔はすぐにカァっと赤くなった。
「俺先にシャワー浴びてくるわ。汗かいて気持ち悪いし。」
そう言って光星を部屋に残し、さっさとバスルームへ行って身体を念入りに洗う。
バスローブがあったからバスローブのみ身に付けてバスルームを出ると、ベッドに腰掛けていた光星はサッと両手で顔面を覆って膝を曲げてベッドに倒れ込んだ。なにしてんねん。
「…あぁぁっ」
「光星はシャワー浴びひんの?」
「…浴びる。」
のっそりと起き上がった光星は、ぐったりした様子でジーパンのファスナーを開けながらバスルームに向かっている。さてはもう勃ってるんやろ。光星くんやらしいなぁ。
にやにやと笑いながらベッドの上に寝転がり、スマホをいじって光星が出てくるのを待っていたら、しばらくするとパンツ一丁で髪が濡れたワイルドな光星が着ていた衣類とバスタオルを両手で鷲掴みながら出てきた。
「着替え持って入るの忘れた…。」
「バスローブ着たら良かったやん。」
「……あ、そっか。」
「俺もう今パンツ穿いてへんで?」
テンパってるのか少し抜けたことを言っている光星に俺はチラッとバスローブの裾を上げて見せると、俺の露わになった太腿を見て光星の顔がまたカッと赤くなった。
「…はぁ…やべ〜…ほんとに良いんだよな?」
「うん、いいよ。」
顔面に片手を当てながら深い息を吐き、チラッと俺の顔を見つめながら聞いてくる光星に、俺はベッドの上で光星の方へ両手を伸ばしながら返事をすると、光星は衣類とタオルを投げ捨てて俺の元へ歩み寄ってくる。
そしてぎゅっと両腕で抱き締められ、二人でベッドに倒れ込み、光星はぶちゅっと深く、俺の唇に口付けた。
「ン…っ!…ぁっ」
すぐに光星のキスは舌を絡めたディープなものになり、キスされながら縛っていたバスローブの紐をほどかれる。
すでにもう俺の姿は全裸のようなもので、光星は俺の身体に触れながら唇だけでなく顎、首筋、鎖骨、いろんなところにキスしてきた。
徐々に下へ降りてくるキスは胸元で止まり、光星は舌を出して舌先で俺の乳首を弄ってくる。
「あっ…、んっ…!それこしょばい…!」
身体がぴくっと反応し、少し善がるような態度を見せたら、光星はそこが唾液まみれになるくらいしつこく舐めて、吸ってきた。
それと同時に俺の股間に手を伸ばされ、すでに勃起して硬くなっていたモノを握られ、扱かれる。
「ハァ…、ッ…こぉせー待ってっ…、俺ばっかりされてたらすぐイってしまう…っ」
込み上げてくる快感に俺は焦ってしまい、身体を起こして俺のモノを握る光星の手を掴んだら、光星は俺に欲情した目を向けてくる。
チュッと一度だけ光星にキスして、俺はベッドの下に放っていた鞄の中から持ってきていたローションを取り出した。
「ちょっと待っててな、…俺光星とするためにちゃんと準備してきてん。」
そう言いながらパカッとローションの蓋を開ける俺の手元を、光星はじーっと興味深そうに見つめていた。
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