1 [ 2/20 ]

俺、茅野 翼(かやの つばさ)には、小学校からの付き合いである親友が一人居る。

親友、なんて言葉は口に出したことはねえけど、クラスが違っても放課後はいつも一緒に居て、些細なことで喧嘩はするけどいつの間にかいつも通りに戻ってて、互いのことをよくわかり合っている、そんな関係で、多分一言で表せば“親友”と言う言葉がふさわしい。


「おい湊!お前俺のベッドで寝んなよ!」


今日も俺の部屋に訪れていた親友、一条 湊(いちじょう みなと)が、俺が風呂に入っている隙に俺のベッドで眠っていた。

Tシャツが大胆に捲れ上がり、乳首まで丸見えの状態で呑気によだれを垂らして眠っている。


「布団敷いてやっただろうが!そっち行けよ!」


ペシン!と音をさせながら湊の腹を叩いて怒鳴ると、湊は「んぅ…」と小さく唸り声を出しながらゴロンと寝返りを打った。


そして、俺の枕を抱いて再びすやすやと寝息を立て始める。


「ったく、もう!しゃあねえなぁ!」


結局湊が泊まりに来る日は、いつもベッドを占領され、俺が床に敷いた布団で寝る羽目になるのだが…


真夜中、眠っている俺の身体の上にドスン!と寝相が悪い湊が落ちてくるのは毎度のことだ。


「ちょっ、おい!重っ…!」


そして枕の次は俺を抱き枕にする始末。

見事に俺の胸元に回った湊の腕に、俺が夜中まったく眠れなくなることなんて、こいつは知る由も無いだろう。


何故なら俺は、一生告げる気なんて無いけれど、こいつに恋心を抱いているから。


こうして一晩だけ、湊の体温を感じながら過ごせる時間が、俺にとっては日々のご褒美のようなものだった。

[*prev] [next#]

bookmarktop



- ナノ -