姉ちゃんがうざい [ 17/20 ]

「翼ぁ!!パソコンフリーズした!直して!」

「ちょっ!?姉ちゃんいきなり部屋入ってくんな!!!」


バーン!と突然、3つ年上の大学生である俺の姉貴に部屋の扉を開けられた。

幸い、いかがわしいことはしていなかったからいいけどノックくらいはしてほしい。


「あ、湊くん来てたんだーごめんねー、ちょっと翼借りる。」


姉ちゃんは俺のベッドに寝転がっていた湊に気付いてそう声を掛けたあと、俺を強引に引き摺り、姉ちゃんの部屋のフリーズしたパソコン前に座らされた。


「それいきなりどうやっても動かなくなったんだけどどうしたらいい?」

「強制終了しろよ。」

「どうやってやんの?」

「あ〜もうめんどくせえな!」


これくらい自分でなんとかしろよと思いながらパソコンを直していると、姉ちゃんがその隣で「そういえば最近湊くん毎日来てない?」と湊の話を持ち出してきた。


「ああ、来てるけど?」

「あんたら彼女いないの?あんたはさておき湊くんとかめっちゃモテるでしょ。かっこいいし。」

「…姉ちゃんうっぜ。俺だって別にモテないことはねえし!」

「だったら彼女作りなさいよお!いつまでも湊くんと連んでたら湊くんだってあんたの所為で彼女できないでしょーが!!!」

「あーはいはいわかったわかった、パソコン直ったからもう行くわ!」


姉ちゃんのうるせえ小言に付き合ってはいられず、俺はさっさと姉ちゃんの部屋を出て自分の部屋に戻ってきた。


「おつー。」

「はぁ…。姉ちゃんまじうぜえ。」

「なんか言われてたな。声ちょっと聞こえてきた。」

「まじか。」


あのクソ姉声でけーからな。

次から姉ちゃんが家に居る時はできるだけ湊を家に呼ばない方がいいかもしれない。また余計な事を言われ兼ねない。


「俺とばっか連んでると湊に彼女ができないって怒られた。」

「おぉ、間違いねえ。つば姉よくわかってんじゃん。」


湊はそう言いながらベッドから身体を起こし、ベッドに凭れかかる俺の背後から腕を回してくっついてきた。


「昔から翼が俺の彼氏みたいなとこあったからな。」

「湊がワガママばっか言ってくるからじゃん?」

「でも翼俺の言うこと聞いてくれんじゃん。」

「聞かなきゃお前拗ねるじゃん。」


とか言って、まあ実は惚れた弱みみたいなもんだけど。湊のワガママを聞くのが俺は嬉しいのだ。


「拗ねたらほっときゃいいのに結局聞いてくれるからなぁ翼は。いつもサンキュー、すっげー好き。」


…と、不意打ちでチュッと口端にキスされた。

湊がデレた。いきなりそういうのダメだ。ムラムラするから。


口端だけじゃ物足りず、身体の向きを変えて湊の唇に今度は俺からキスしようとした時、


「ちょっと翼ー!再起動してからやっぱりまだパソコンの調子良くないんだけど!」


バタン!と再び、姉ちゃんに部屋の扉を開けられてしまった。


湊との距離約15センチほどの状態で、俺は咄嗟のことに反応できず、カチンコチンになって固まる。


「ん?あれ?二人ともなにやってんの?」


ああもう姉ちゃんまじうっぜえ…!


なんとか言い訳をしようと考えていると、先に口を開いたのは湊だった。


「つば姉ちゃんさあ〜、空気読めよ。」

「えっ!?」

「今イイトコだったのになぁ?翼?」

「えっ、いや、その、」

「えぇ!?まじで言ってんの!?」

「いやいや冗談!湊の冗談だから!!!」


こいつ姉ちゃんにバラす気か!?

慌てて首を振った俺に、湊は愉快そうにニタニタ笑っている。


「ああもうびっくりしたぁ〜。一瞬湊くんの趣味疑っちゃった。」

「…姉ちゃんうっぜ…。」


このクソ姉は弟の俺を見下しすぎだ。
自分のことは棚に上げていつも俺のことを小馬鹿にしてくる。


「湊くん好きな子いないのー?せっかくの高校生活、こいつとばっか連んでたら時間もったいないって!」

「姉ちゃんまじでうざすぎる。」


余計なことを湊に話しかける姉ちゃんに俺はうんざりしていたところで、湊が恥ずかしげも無くサラリと一言。


「俺好きな人と毎日一緒だし。」

「あれ?そうなの?」

「そそ、だからご心配なく〜。」


そう言いながらしれっと俺の指に指を絡めてきた湊。

姉ちゃんはそれに気付かず「まあそれなら良いけど」と言って納得している。

バカな姉貴だ。その相手は俺なのに。


姉ちゃんがうざい おわり

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