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俺の学校生活は、日々真面目に授業を受け、放課後は隆と時間を共にしながら淡々と過ぎていった。


6月上旬には宿泊学習後初めて学校での行事があるようなので、その行事に関する話をするために放課後生徒会室にて、俺たち生徒会役員は久しぶりに集まった。


俺と隆はそれぞれ一番離れた席で座っていたが、不意に俺は隆と目が合い、副会長が話をしている最中だというのに隆が俺に向かってバチンとウインクをしてきた。そんな隆の不真面目な態度を見逃さなかった副会長は、即座に隆に問いかけた。


「隆?今度なにがあるかちゃんと分かってる?」

「え?今度?なんすか?」


隆は副会長からの問いかけに、あっけらかんとした態度で聞き返す。


「…はぁ。自分が去年経験した行事くらい覚えとけよ。」

「あ、挨拶運動すか?」

「そんなのでいちいち会議しないって。隆色ボケしてんなよ?」


副会長は隆の発言に少し苛立ったような口調で注意しているが、隆は副会長に『色ボケ』と言われるとまた俺の方を向き、ペロッと舌を見せてくる。

だからそれだよそれ、そのいちいち俺の方を見てくる行動も『色ボケ』と言われる原因だ。

俺はとても“生徒会の先輩”とは思えない隆の態度に呆れた顔を向けて「はぁ」と息を吐くと、そんな俺を見てクスッと笑う副会長。


「新見あとでちゃんと躾けといて。」

「…ふふ、…分かりました。」


まるで犬みたいな扱いをされている隆に、俺は笑いが込み上げてきてしまったのだった。


「もぉー。隆2年に上がってから本性現しすぎだろ、前はもうちょっと大人しかったのに。話中断させんなよな。スポーツ大会だよ、スポーツ大会。」


副会長はぶつぶつとぼやくように隆の文句を言いながら、俺たちにプリントを配った。

日時や過去の種目の例、雨天の場合は体育館で球技…などと書かれており、各クラスでアンケートを取ってから種目を決定させるらしい。


「明日は体育委員と生徒会で集会あるから忘れんなよ。隆、祥哉に言っといて。」

「あーはい。」


祥哉先輩は陸上部の大会が近いようなので、そっちを優先してるらしい。そう言えば中本と小西もそんな話をしていたな、と部活に励む彼らの会話を思い出した。

スポーツ大会当日の生徒会は体育委員のサポートとして動くようなので、「1日の流れをしっかり把握するように」という副会長の締めの言葉に頷いたところで、その日の生徒会の活動は終了した。


そういや違和感無くいつも副会長が生徒会を仕切ってるけど、会長はただ話を聞いてるだけだった。

2年生の1人は色ボケしてて不真面目だし、1人は陸上部との兼部だし。この生徒会を纏めている副会長は大変そうだ。


「りゅうわんちゃん、お手。」

「ワン!」

「いい子いい子、じゃあ帰ろっか。」


さっそく俺は、生徒会室を出る前に副会長に言われた通り躾けとやらの真似事をしながら隆の手を握って手を引いていると、俺と隆を見て生徒会役員一同に笑われている。


「隆と新見はもうすっかり仲良しだな。」

「今考えたらやっぱ付き合ってるフリしてた時ってかなり不自然だったよな。わざとらしくいちゃいちゃしてて。なんであんなのに騙されたんだろ。」

「ほんとにな。今の隆見てたらニセとガチでは雲泥の差があるよな。」

「うんうん、顔がまずヘラヘラしすぎ。鼻の下伸びてるよな。」

「伸びてる伸びてる。あと常にエロいこと考えてそう。」

「うん考えてるね。」

「ちょっと二人とも俺の悪口言い過ぎじゃないすか!?まだ騙したこと根に持ってんすか!?」

「いや別に?思ったこと喋ってただけだよ。」

「あっそうですかぁ!そんじゃあ俺はもう先帰りますからね!!おつかれっした〜。」


隆は会長と副会長に自分の話をされていて、聞いていられなくなって逃げ出すかのように、俺の手を引っ張りながら生徒会室を出た。


「あっお疲れ様でした!杉谷くんまた明日!」

「うん!また明日!」


俺が慌てて杉谷くんにそう声を掛けているあいだ、会長と副会長は「隆生意気だな〜。」と言って笑う声が聞こえてきた。

多分隆は、二人に根に持たれているとかではなく、ただからかわれているだけなのだ。


生徒会室を出た後、「そんなに鼻の下伸びてねえだろ。」と言って鼻と口の間を指で押さえている隆。


「副会長が喋ってる時にウインクしてきたり舌出したりするからそんなこと言われるんだって。」

「倖多が俺の方見てくるからだろ?」

「は?俺のせい?隆さすがにそれはちょっと子供っぽすぎる。」

「嘘だって、ごめん、もうしないから。」


俺の『子供っぽい』という言葉に、隆は少し反省してくれたようだけど、反省しているようなことを言いながらもぶちゅぶちゅと俺の頬に唇を寄せてキスしてくるから、本当に反省しているのかは分かりゃしない。


出会った時はたった一つ歳上の先輩ってだけで大人っぽく見えていたのに、きっとかなり猫を被っていたんだろうなぁと分かるくらい、今俺の隣にいる隆はやんちゃな子供のようだった。


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