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中本は食堂で少しだけ俺たちと話した後、「友達待たしてるんで」と言って席を立った。そんな中本の後ろ姿を、ムッと不機嫌そうに眺める隆。
「倖多あいつと昼飯食うのか?」
「うん、せっかくああ言ってくれてるし、昼くらいは一緒に食ってみてもいいかと思って。」
「…ふぅん。下心見え見えだったらやめとけよ。」
「下心あるように見えました?」
「ないこともないと思う。」
なんとなく俺はもぐもぐとご飯を食べていた祥哉先輩に視線を向け、問いかけてみると、そんな返事が返ってきた。
「ないこともないような奴を倖多に紹介すんなよ!」
「すまん。軽はずみなことしたかもとは今になってちょっとだけ思ってる。新見も友達欲しいと思って。」
「友達ってのはな、そんな紹介とかでわざわざならなくても勝手になってるようなもんなんだよ!!」
隆の声を祥哉先輩はうるさそうに少し顔を引いて話を聞いている。
『友達は勝手になってるようなもん』…か。
その隆の発言はすごく自分の考えと似ていて、気が合うなぁと思いながら、ガミガミとうるさく祥哉先輩に向かって話しかけている隆を見て、俺はこっそりと笑った。
中本のことは俺もまだどういう奴かわかんねえから、接していくうちに仲良くなれそうなら徐々に仲良くなっていくだろうし、そうでなければ疎遠になっていくだけだろう。
数回話してみた印象だけで仲良くしないのも失礼かと思って決めたことだから、昼休みに試しに友達作りの時間として過ごしてみようかと思ったのだ。
「新見、何かあったら俺に言えばいいから。中本には俺から注意してやれるし。」
「いや俺に言え!俺が文句言ってやる!!」
「あ、ありがとうございます。……お二人とも頼りにしてますね。」
隆は頼りに、って言うか無駄に喧嘩売りそうで心配になるくらいけど。そんな会話を最後に、中本に関する話は終了した。
*
そして翌日はいつも通り隆と登校し、授業を受ける。
2時間目は体育の授業だったが、整列時に隣のクラスの列に中本の姿を目にして、そう言えば中本は隣のAクラスだったなと思い出した。
今授業ではバドミントンをやっているけど、隣のコートで中本はクラスメイトとわいわい賑やかに打ち合いをしている。陸上部なだけあって運動神経が良いようで、バドミントンでも機敏に身体を動かし目立っていた。
「あっごめんね、新見くん!変なところに打っちゃった…!」
俺は適当にペアになったクラスメイトと打ち合っていたが、彼は下手くそな上に俺に対して控え目な態度で接してくるから少々やり辛い。
「あーいいよいいよ。」
変なところに飛んでいったバドミントンのシャトルを拾いに行こうとしていたら、俺が拾う前にひょい、と誰かに拾われる。
「はい。倖多昨日ぶり!」
そしてそう言って俺にシャトルを差し出してくれたのは、中本だった。
「おー!サンキュー。中本体育同じだったんだな。」
「おう!倖多いるな〜と思いながらさっきから気になってたんだよ。」
「俺もさっき中本いるな〜と思ってた。」
軽くそんな会話を交わしていたら、「おい中本何やってんだ!抜け駆けしてんな!」という声が向こうのコートから聞こえてきて、中本は振り返り「チッ」と舌打ちしている。
「うぜー、あっじゃあ倖多またな!」
「うん。」
中本は俺に手を振りながら、爽やかにコートへ走っていった。
かなり、話しやすさはある。初めて話した時のようなたどたどしさもなく、もうすっかり友達になったようなやり取りに感じられる。
ちょっと中本のことを警戒しすぎたかもな…なんて思いながら、俺もクラスメイトの元に戻る。
そう言えば中学の時もバドミントンしたな〜、と思い出した。中学時代の友達とは互いに笑顔で、楽しくできたのに…と思ったら、俺は少し、“友達”という存在が恋しくなった。
授業が終わり、体育館を出ようとした時、「倖多!」と背後から名前を呼ばれ、振り返れば中本が駆け足で俺の方に向かって来た。
その後を中本と一緒にバドミントンをしていた人が追いかけている。
「今日昼飯一緒に食わねえ!?あっこいつも俺と同じ陸上部なんだけどこいつも一緒に!」
「どうも〜小西(こにし)って言いま〜す。」
中本に指をさされ、ヘラヘラと笑いながら俺に自己紹介してくれる小西くん。
「あ、じゃあ小西くんも祥哉先輩の後輩なんだ?」
「そうっす〜。あ、小西でいいっすよ。」
「あ、俺も敬語じゃなくて大丈夫なんで。」
「了解っす〜。」と返事してくれる言葉がすでに敬語だがひとまずそれは置いておき、二人とも祥哉先輩の友達だということに安心し、俺は心良く昼飯の誘いに頷いた。
隆には中本と小西っていう中本の友達と3人で昼飯を食うという連絡をしておくと、しょんぼりとした絵文字付きの了解メッセージが返ってくる。
そんなにしょんぼりしなくても、どうせ放課後になったらすぐ会うのにな。
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