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「おい祥哉!!!さっきお前の後輩とやらが倖多に絡んできたんだけど!!倖多に絡むなって言っといてくれよ。」

「あれ?もう中本の話聞いたんだ?俺が新見に紹介したんだよ。新見と友達になりたいらしくてな。」

「はッ!?!?」


俺が 新見に 紹介した ???


昼休みが終わる間際、席に座っていた祥哉に話しかけた俺に返ってきた言葉に、俺は唖然としながら祥哉の顔を見つめた。


「まじでただ友達になりたいだけっつってるし別に良いだろ?」

「全然良くねー!!友達とか絶対嘘だろ!!」

「俺の後輩を疑うのかよ?」

「寧ろお前がもっと後輩疑えよ!!!さっき俺と倖多がいるところでそいつ昼飯くらい一緒に食えねえの?みたいなこと言ってきたんだぞ?」

「それは隆がずっと新見と一緒にいるから、昼休みくらいは譲れって暗にお前に言ってるんじゃねえか?」

「………ああ、なるほど。」


いやいや、俺納得してんな。昼休みを譲れって?俺が?譲る?なんで俺があいつに譲らなきゃなんねーんだよバカかよ。

倖多にお願いされたらそれはしょうがないと思うけど、あいつから言うのはおかしい。倖多が俺と昼も一緒に居たい場合のことは考えねえのかよ?そしたらお前は、ただの邪魔もんだぞ?

ああッさっき聞けば良かった!!倖多は俺と昼休みも一緒に居たい?って聞けば良かった!!周りには俺ばっかりが倖多と一緒に居たいように思われてるのかもしんねえ。いや実際その通りだけど。


「でも俺は譲んねーよ?」

「だろうな。」

「そもそもお前なんで紹介なんかしたんだよ!」


『だろうな』じゃねーよこの元凶野郎。

ガッ、と祥哉の肩をグーで殴ると表情を変えずに「痛い。」と肩を押さえる祥哉。


「ぜってー倖多には近寄らせねーし。」

「でも俺は、新見も友達欲しいかと思って。」

「本当に友達目的だったら良いけどな!」


イライラを吐き出すように祥哉にそう言ったところで、教室に先生が入ってきて俺は大人しく席に着いた。


本当に友達だったら、俺だって倖多と友達の時間を邪魔しようなんて思わねえ。でも違うだろ?結局みんな、最初は良い人面して近付いて、後から恋愛感情とか出してくるだろ?ひどければ身体の繋がり求めてくる奴だって。

そんな可能性がある奴を、俺は倖多の友達とは認めない。





「中本、さっそく今日隆に文句言われたぞ。」

「祥哉先輩こんにちは。まじっすか?」

「ぜってー倖多には近寄らせねーってよ。」


放課後になり部室で練習着に着替えていると、後から部室に現れた祥哉先輩に話しかけられた。


「えぇ…そこまでします?なんか束縛っぽくないっすか?新見くんが可哀想っす…。」

「今日隆と一緒に居る時話しかけたんだろ?どういうつもりで話しかけた?」

「いくら瀬戸先輩が新見くんの恋人でも、昼飯くらいは話せる時間貰えねーかなと思って。」

「あーやっぱそんな感じだよな。」

「ダメっすか?」

「あからさまに新見を誘うのはやめといたほうが良いかも。隆って基本この学校の奴みんな信用してねえしお前のことも本当に友達目的か?って疑ってる。」


祥哉先輩はそう言ったあと俺から距離を取り、さっさと着替えを始めてしまった。

モヤモヤモヤ…とまた蓄積されていくモヤついた気持ち。せっかく新見くんと知り合えたのに、会えば声をかけられるようになったくらいでは全然満足できない。


もっと親密になりたい。けれどあの先輩がいる以上、俺が新見くんに接することができる時間には限りがあり過ぎる。


せめて昼休みだけでも…、そんな気持ちで今日は新見くんと瀬戸先輩が一緒に居るところをわざわざ狙って声をかけたけどそれは失敗だったようだ。

瀬戸先輩への喧嘩を売る気持ちが前面に出過ぎてしまったかもしれない。

気持ちが先走って破滅の道に進んでしまっている。

…ああ、時間を巻き戻したい。


新見くんに近付きたいなら、なにがなんでも下心は隠して、瀬戸先輩にも警戒されることなく徐々に親しくしていくんだった。


自分の失敗に後悔しながらも、俺は全然諦めるつもりなんて無い。

あの束縛に近いくらい新見くんに張り付いている先輩から、新見くんを引き離したくて、引き離したくて、俺の心は密かに嫉妬の炎を燃やしまくっていた。


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