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ぷっくり頬を膨らませてスマホを見ている人が一名。


「どうしたなっちくん、ほっぺたリスみたいになってんぞ。」

「雄飛が最近後輩の話ばっかしてくる!!」


なっちくんは不満そうにそう言って、バンバン!と両手で机を叩いた。


「うるせえうるせえ。」


机を叩くなっちくんの手を掴みやめさせると、今度はブー垂れた子供のように唇を尖らせ変顔をし始める。


「後輩できて嬉しいんだろ?あいつ面倒見良さそうだしなあ。」


思ったことを口にすると、今度はシュンと落ち込むように机に突っ伏したなっちくん。


「わかる、わかるよ。面倒見良いんだろうなあって。だからさ、俺は単純に羨ましいんだよ。」

「俺ら先輩だもんな。後輩と先輩じゃそりゃ態度は変わってくるしな。」

「あぁぁっやだやだやだやだやだ俺にだけ優しくしてほしいの!!!!!」

「切実な訴えだなおい。でもそれ直接言うなよ、あいつめんどくさがりそう。」

「そんなこと言うなよお!!」


ほら、もうめんどくさいやつになってる。なっちくんはちょっと涙目だ。

直接言うなよとは言ったものの、こんな嫉妬爆発させてるなっちくんに言われたら雄飛喜ぶかもな。さすがに雄飛の感情までは分からず、雄飛ならどうだろうな?と想像する。

まあ俺ならるいから『俺にだけ優しくしてほしい!』とか言われたら何言ってんだこいつ、ってなるけどそもそもるいはそんなこと言わねえからな。


「なんかな、ミッキーって子が小動物みたいだとかいちいち俺に話してくるんだけどこれ絶対優しくしてるじゃん!?やだやだやだやだやだやだ、」

「チッ、うるせえな。」


おっといけない、舌打ちが出てしまったわ。

俺はわざとらしく口を手で押さえると、なっちくんはジトリとした目を俺に向ける。『やだ』言い過ぎ。俺のダーリンの名をそんなに連呼するんじゃねえ。


「るいるいるいるいるいるい」

「はい?」

「いや、なっちくんやだやだやだやだやだって言いまくるから俺はるいるいるいるいってな。わはは。」


そんな冗談を言っている俺を冷めた目で見てくるなっちくん。いやまあ悪かったよ。なっちくんの心情を考えると冗談言ってる場合じゃなかったな。失敬失敬。


「ゴホン、まあさ、嫉妬する気持ちはよくわかる。でも信じてやれよ?そこが欠けるとおしまいだから。」


咳払いをして仕切り直し、なっちくんに俺なりのアドバイスをすると、なっちくんはシュンとしながらも「うん…」と小さく頷く。


「高校ん時に俺と雄飛が仲良くしててさ、るいと喧嘩したの知ってる?」

「あ、なんかそんなんあったかも。」

「あの時雄飛がるいに言ってくれたこと、すげー覚えてんだよね。俺のこと、信用してあげてください、って。人にそう声をかけてあげれる雄飛のことだから、そりゃやっぱ自分も信用してほしいだろうし。なっちくんのこと信用してるから、後輩の話とかもいろいろ聞かせてくれるんだと思うぞ。」

「……そういや矢田くんも、雄飛にめっちゃ嫉妬した時あったらしいね。なんかそんな話聞いたわ。」

「そうそう、大喧嘩したなぁ。なっつかし。」


なっちくんの話を聞きながら、自分の過去を振り返る。

あの時雄飛が居たから、俺はるいと喧嘩して、向き合って、そんで今の俺たちがいる。だからもし、雄飛がそんな状況にあった時、俺もるいも全力で手助けするだろう。


そりゃあできれば喧嘩はしてほしくない。

だから、なっちくんにはどうか、雄飛のことを信じてあげてほしいと心からそう思う。


雄飛は俺にも、るいにとっても、大好きで大切な後輩だから。


29. 先輩を側で見ていたい おわり


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