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「あ、クソカベ!これ誕生日プレゼント!良かったら使ってねー!」

「うおおおお!!!りなちゃんが俺に!?誕生日プレゼント!!?うおおおお!!!」

「そんな大したものじゃないけどねー。」

「いやいや!やばい!嬉しい!ありがとう!!」


シンプルにラッピングされた袋をりなちゃんから受け取ったクソカベは、嬉しそうに興奮しながらラッピングのリボンを解く。


「りな何あげたんだ?」とるいも、それからみんなもりなちゃんからの誕生日プレゼントに興味津々で、クソカベの手元を覗き込む。

袋から出てきたのはペンケース、シャーペン、ノートとそれからお菓子がちょこっと。さすがるいの妹チョイスなだけあって、黒地のシンプルなデザインのペンケースはるいが使ってそうな感じのものだ。


「おー、いいじゃん。クソカベ大学でちゃんと勉強しなきゃだからな。」


と、プレゼントを眺めながら口を開くるいに、「そうそう、そう思って文房具にしたんだよ!」と言いながら、りなちゃんは得意げな表情でポンとクソカベの肩に手を置いた。

りなちゃんからのボディータッチに、クソカベはプレゼントを貰った時以上の興奮を見せている。


「これで勉強が捗りそうだぜ!」と喜んでいるクソカベの元へ今度はりとくんが近付き、りとくんはクソカベの頭上で持っていた袋を逆さにし、バラバラとクソカベの頭に何かを降らせた。


「クソカベハピバー。」


ぼたぼたと床に落ちるのはうまい棒で、その数およそ30本ほど。


「おお!弟も俺にプレゼントを!?」


床に散らばったうまい棒をかき集めながら喜ぶクソカベに、「俺の金じゃねえけどな。」と一言口にするりとくん。そんなりとくんに向かって「シーッ!」と人差し指を立てているりなちゃんを見て、周囲のみんなは悟った。こいつらさては母ちゃんから貰った金でプレゼント買ったな?と。

そんな話題から逸らすように、るいが「お前ら飯食ったのか?」と話題を振る。


「俺適当になんか食ったらバイト行くからな。」


そう言いながら、るいは冷蔵庫の中を覗いている。


「腹減ったー、兄貴なんか俺にも作って。」

「あっ!りなも!!オムライスがいい!」


料理のできるるいお兄ちゃんに甘えている矢田兄妹につられるように「俺も」「俺も」とモリゾーやクソカベが言っているから、その後俺たちは結局みんなで飯を食いに行くことになった。

バイト前にみんなの飯を作るのはさすがのるいお兄ちゃんもめんどくさかったようだ。そりゃそうだ。


「俺焼き肉ー。」

「お、いいね焼き肉。」

「じゃあ焼き肉行く?」

「このへんどっか焼き肉屋あんの?」


りとくんが焼き肉と言い出したことにより、雄飛、なっちくん、モリゾーが焼き肉屋へ行く方向で話し始めてしまっている。


「焼き肉だって。るいバイト前にキツくね?」

「キツイ。」

「りなも焼き肉やだー。」

「じゃああいつら焼き肉屋行かせて俺ら家で適当に食う?」

「オムライス!りなチーズインオムライスがいい!」

「航は焼き肉行かなくていいのか?三人分くらいならオムライス作るけど。」

「俺はるいと一緒でいいよ。」


バイト前のるいに焼き肉屋に行かせるのも可哀想で、まあ行きたいやつは焼き肉屋行けって感じで話していると、クソカベが何か言いたげに無言でこっちを見ている。


「あ、クソカベもオムライスがいいってか?」


そう問いかけると、クソカベはコクリと頷いた。

多分こいつはオムライスっつーより、りなちゃんが居る方に居たいだけだ。





航先輩と矢田先輩の家を出て、焼き肉屋へ向かうのはりと、なち、モリゾー先輩と俺の四人だ。


なんかちょっと変な組み合わせだな?

航先輩がいないからそう感じてしまうのだろうか。…いや、モリゾー先輩と日下部先輩がセットで居ないからだろうか。この二人はいつも一緒のイメージがあるから。


「りと、顔に出てるぞ。」

「なにが?」

「“航焼き肉行かねーのかよー”って。」


なちとモリゾー先輩が並んで歩いている後ろをりとと並んで歩くと、つまらなさそうな表情をしているりとの顔が横から見てもよく分かる。


「残念だったな、焼き肉って言い出したのお前だからな。」

「だって焼き肉食いてえし。モリオの奢りなー。」

「…は!?痛ッて!!!」


突如りとは、モリゾー先輩に八つ当たりするように先輩のケツを蹴りつけた。


「おい弟!歳上相手に暴力的すぎるぞ!兄ちゃんに言いつけてやる!」

「食い放題でよろしくー。」

「俺の話を聞いてんのか!?おい!弟ぉおお!!」

「うわこっち来んな、変態が移る。」


モリゾー先輩がりとに絡んできたことにより立ち位置が変わり、なちが俺の元へスススと歩み寄ってきた。

モリゾー先輩はあれで怒らないのだから、実は結構懐が深い人なんじゃないか。とか思ったりして。


「…りとくんが居ると雄飛はすぐりとくんの方行っちゃうよなー。」

「あ、わりぃ、つい。」

「別に良いけど。ちょっと妬けちゃうだけだから。」


それだけ俺に言ったらどうやらなちはスッキリしたようで、なちのその後はいつも通りだ。

妬けちゃうとかはっきり言われるとなんかごめん。ってなるけどりと居るとどうしてもそっち行っちゃうんだよなぁ…。そこんとこ恋愛とか友人関係を上手くできない俺のダメなところだ。

…と反省していたそばから、焼き肉屋に到着しテーブルへ案内されると、なにも考えずりとの隣に座った俺は、ちょっと反省が足らないようだ。

なちが何か言いたげに一瞬こっちを見たことは気のせいでありたい。


「さぁ、雄飛ちゃっちゃと肉焼けよー。」

「りともやれ。」

「お前一番歳下だろーが。」

「都合いい時だけ歳下使うな。」

「あ、そっかお前ら一つ違いか。」

「そうっすよ。こいつ次男坊だからあんまり歳上に見えなくないっすか?」

「あー、矢田くんがしっかりしてるから甘えたに育っちゃったんだなー。」

「うるせえぞモリオ、お前も早く肉焼けよ。」

「うわー、なんか弟昔の航っぽいわー。あいつも焼き肉行ったらなんもしねえでひたすら肉食ってたからな。」



……お、航先輩の話題が出た途端りと大人しくなった。

思い出すように語りながら肉を焼くモリゾー先輩は、「よーし、焼けたぞ弟。」とりとの皿に肉を放り込む。

やっぱりモリゾー先輩、懐深いっす。


「ところでモリゾー先輩は日下部先輩になんかプレゼントしたんすか?」

「あっバカ雄飛!ご飯中に聞いちゃダメだって!」


なんとなくモリゾー先輩にそう問いかけると、横から慌ててなちが口を挟んできた。

「は?」と首を傾げた直後、モリゾー先輩はにっこり笑って口を開く。


「テンガとAV〜。あいつすっげえ喜んでたわ。あ、りなちゃんには内緒な〜。」

「…てんが?なにそれ。」

「ふぁっ!?弟テンガを知らないだと!?そうか…。さすがの矢田弟様には不必要だもんな。」

「いやこいつ童貞っすよ?お前オナニーしねえの?」

「ゆ、雄飛!飯中!今飯中だろっ!」

「え?弟童貞?まじ?」


興味津々なモリゾー先輩に、りとは何食わぬ顔をして無言で肉を食い続けていた。いやいやお前返事しろって。


その後、異色のメンバーでの飯の時間は、モリゾー先輩を中心にエロ話で盛り上がってしまったのだった。

ちなみにエロ話中のモリゾー先輩は、とてもイキイキしていた。


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