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それから寮内を私服で歩く俺たちは、かなり目立った。俺たち、って言うか、るいが、だ。


「矢田くんが私服!かっこいい…!」


そんな声がチラホラ聞こえる中、るいは澄ました表情で歩いてる。すげえ。


「矢田くん私服姿まじかっけえ…!」


皆が羨むるいの真隣で、まじまじとつま先から頭まで見つめて、周囲の生徒の真似をするように言えば、るいはまたジトーとした目で俺を見てきた。

その目、今日何度目だよおい。でもそんな目で見られてもかっこいいことに変わりはねえから照れちゃう。やめろよぉ〜。おい〜。


バカみたいに照れながらキャップのつばをいじっていると、るいは俺を置いてスタスタと先に行ってしまったから、俺は慌ててその後を追いかけた。



「で、どこ行くんだ?」

「んー、るいどこ行きたい?」

「はあ?お前行きたいところねえのに誘ったのかよ。」

「いやいや!るい、きゅん、と!おでかけがしたかったのだよ!」

「あーはいはいそうですか。じゃあもう適当に行くからな。」

「ラジャー。」


こうして寮の外に出た俺とるいは、白い雲がぷかぷかと浮かんでいる青い空の下、アスファルトを並んで歩み始めた。


「どうする?バス?電車?ちなみにバスなら多分20分後くらいに来る。」

「じゃあ電車。」


携帯で時刻を調べてくれているるいに即答する。するとるいは、呆れた表情で俺を見た。

「お前待つ気まったくねえな。言っとくけど駅までの距離の方が遠いんだからな。」

「よし。お手手繋いで歩こう。」

「ガキのお守りみてえだから絶対嫌。」

「なんだとっ!?」


るいきゅんこれをなんだと思ってんだ!?おデートだぞ、おデート!!!

だから俺は、俺の身体のすぐ横でゆらゆら揺れるるいの片手を度々狙った。るいの片手を捕らえて、スッと握る。しかしすぐに振り払われる。その繰り返し。

そんなことを繰り返していると、駅はもう目の前だった。


「どうする?どこまでの切符買う?」

「とりあえず街に出るか。」

「オッケー。どこ行きの切符?」


路線図を眺めながら話していると、「はい。」と切符を渡された。アレ、いつの間に。


「え、いくらだった?」

「早く行くぞ、電車もう来る。」

「え、いくら……」


財布を取り出そうとすると、改札口まで早歩きのるいに手首を引っ張られ、お金を払うタイミングを失ってしまった。


ホームに到着すると間も無く電車が到着し、電車に乗り込む。


「どこでもいいんだよな?」

「うん、いいよ。なあ、切符いくら?」

「…あー。いくらだっけ。忘れた。別にいらねーよ。」


やばい、るいきゅんイケメン…


「稀に発動するるいきゅんの優しさに触れてしまい、僕ちんお腹がいっぱいです…。」

「あとでジュース奢れよ。」

「……は?」


るいの優しさに感動している最中にるいからそんな一言が飛んできて、俺はポカンと口を開けた。


るいはニッと口角を上げて、意地悪な表情を浮かべていた。


電車の女乗客が、そんなるいを熱い眼差しで見ていたことを、俺は知っている。



「右超かっこいいんだけど…!!」

「やばいよね、右…!!」

「えー、あたし結構左好みだよ。」

「いや右でしょ!まじやばい!!」

「左もかっこいいけど右と並ぶとねー…。」


おいそこの化粧濃いガールズ!俺とるいを右だの左だの言いながらジロジロ見てくんじゃねえ!!!そして左微妙とかほざいてんじゃねえ!言われなくても分かってんだよこのくそったれ!!!


あ、でも左好みって言ってくれた子が一番俺的には可愛いと思う上に彼女はなかなかに見る目がある。可愛い子は見る目があるな。そんな彼女にニコリとした笑みを浮かべて視線をやると、赤い顔をして視線を逸らされた。可愛い。満足だ。


「!!!痛ッてええ!!!」


満足気に微笑んでいた俺の頭にグーパンチが飛んできた。

突然のことに、周囲の乗客がギョッとした目で俺とるいを見る。


「ナンパとかいきなりやりだしたら帰るからな。」

「しねえよ!!!」



るいさんはイマイチ分かってないようだな。これは俺とるいきゅんとのおデートであり、まず俺がナンパなどするはずがない上に、そもそもるいきゅんがいるのに女の子と遊ぼうだなんて思わない上に、寧ろるいきゅんが逆ナンされないか俺はとても心配なのである。


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