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「…はは、さすが航。やることが違うな。」
「ですよね!!俺はじめて友岡くんのこと尊敬しそうになりましたよ!!候補ら、るいに怒鳴られてる友岡くん見て顔ひきつってましたから!!ナイスでしょ!!」
仁は始終楽しそうに、今日のことを話し終えた。俺は、乾いた笑みを漏らしながら、その感想を述べる。
まあ話を聞けば仁が笑いたくなるのは分からなくもない。もう真面目とか不真面目とかの問題ではなく、如何に航がバカかということを分からされる出来事だったな。
「…まあ、確かに矢田の苛立ちの原因が航ってんなら大丈夫そうだな。」
「ほらーだから言ったじゃないですかあ!」
得意げな表情を浮かべる仁。なんかムカつくな。
まあいいや。とムカつく仁から視線を逸らし、矢田を見た。
「矢田ー、またなんかあったら相談しろよー。あ、航のことならいつでも任せろ。」
コーヒーを飲み干したので、そろそろ帰ろうかと立ち上がり、いまだにイライラしている様子の矢田に声をかけると、矢田はキリッとした表情を向けてきた。
そして、「結構ですっ!」とキリッとした顔をしている矢田のその口から、キリッとした返事が返ってきた。
おいおい、人がせっかく面倒なこと引き受けてやろうとしてんのによお。と思いながら、俺はふっと笑みが漏れる。
ああ、航を譲りたくないんだな。
まあイラついてんのは今日だけだろう。
明日にでもなればきっと落ち着いてる。
なんにも心配いらねーな。
「じゃあ俺帰るわーまたな。」
軽く手を振りながら背を向けて出入り口へ向かうと、「心配かけてすんませんでした。」という小さな声が聞こえたので、俺は笑いながら「いいや全然」と返事して、生徒会室を後にした。
可愛い可愛い後輩の心配などお安い御用である。
その翌日、俺は機嫌良さそうに航を連れて歩いている矢田を見たから、ああ、うまくいってんだな。と思い少し笑みがこぼれた。
後日、偶然校内で会った仁にその後のことを聞けば、仁の予想通り航候補者らは全滅したようだ。
航のあまりに凄まじい暴れっぷりを見たものは、あれは真似できない。と感じたのと、矢田の凄まじい怒りっぷりを見たものは、目が覚めたように自分の行いを改めなおしたのだとか。
まあ航だから矢田はボロクソ怒るんだろうけど。それでも一時期は矢田に怒られる航に憧れて不真面目気取ってたんだよなあ。としみじみと思い、いやでも改めなおせたのなら良かった良かった。
とまったくの無関係な俺だが、事が解決したことにホッとしたのであった。
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「…あ、あれれぇ?る、るいきゅん昨日のこともう怒ってない?俺の反省してる気持ちが伝わったかな?ん?」
「次バカなマネしたら俺はお前を昨日の倍の力で締め付ける。けどまあ今回は諸事情があってだな。お前にはある意味感謝してるからもう怒ってない。」
「…諸事情?ん?なにそれ。」
「お前には全然関係ないこと。」
「俺が感謝されるようなこと…あっ…あの窓ガラスいわく付きだったとか?」
「……バカだなあ、航は。」
その日の矢田生徒会長は、昨日とは打って変わり、穏やかな表情を浮かべていた。
4.矢田生徒会長の悩み事 おわり
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