3 [ 130/188 ]
*
翌朝、航はガニ股で俺の隣を歩いていた。
「……お尻むずむずするの?」
「うん。誰かさんの所為でな。」
「……。」
ジト目で見られて、返答に困る。
とりあえずなでなで、と航の尻をズボンの上から撫でてみると、航はほんのりと頬を赤く染めた。
「撫でられたら余計むずむずするわいっ!」
「あ。わりぃ。」
「俺をお姫様抱っこしろ!!」
「あっはい。」
「嘘に決まってんだろ!!」
「……。」
素直に航の言うことに頷いているものの、航は俺に口調を荒げて話してくる。
どうやらえっちするにあたって航に対してNGなことは、激しいピストンのようだ。そうは言っても、初めての時より全然昨晩の航は元気そうだったから、少しずつ慣れていってはくれないだろうか、と思うけど。
「あとあの体勢はもう絶対ダメ。」
「ん?あの体勢?」
「俺が座ってするやつ。」
「ああ。あれ超よかった。俺好き。」
「だめっ!!だめだからな!!」
航は念を入れるように言ってきたが、それには頷けねえな。だってあの体位はすごく気に入ってしまったのだ。
「あと後ろから突くのもだめっ!!」
「ダメなこと多いな。何ならいいんだ?」
「俺もコンドームをつけること。」
「いきなりコンドームの話かよ。」
この子はどうやらコンドームに関する関心がとても高いようで。そんな話題になった時、ひょっこりと俺と航のあいだに、仁が姿を現した。
「えっコンドームがなになに!?つか、なに朝っぱらからえっちなおはなししちゃってるわけ!?」
「来んな。お前帰れ。」
ウザい絡み方を仁にされてしまい、俺は持っていた鞄で仁の頭を殴りつけた。しかし仁はへこたれることなく俺と距離をとり、航の隣に行ってしまう。
「えっちする時、るいだけコンドームつけるのはズルイよな?」
「え?そう?エッチは生のが気持ちいらしいけど??え、てか友岡くんまたるいとヤったの?」
「うん。1年分くらいのえっちした。もう暫くはえっちしない。」
航の発言に俺は『冗談だろ?』という目で見ていると、「友岡くーんお隣に不満そうな顔をしているお方が居られますけどー」という仁のツッコミが入った。
そんな仁のツッコミに、航は俺へと視線を向ける。
「精々3日分くらいだろ。」
「とりあえず1ヶ月はヤんねえ。」
「お前そんなに保つの?」
「なにが?」
「それで1人こそこそオナニーしてたら怒るからな?」
「ゃ、やんねえから!」
航は真っ赤な顔で頷いた。
「…うわー、生々しい会話…。朝っぱらから聞く話じゃなかった。」
「もっと生々しい話聞かせてやろうか?この人、俺がもう無理だって言ってんのに体勢変えてヤりはじめるから。ひどいと思わねえ?」
「友岡くん、るいの体力舐めちゃだめだよ。この人体育でマラソンしたあとでも涼しい顔してるんだから。」
「あっ!いや!でもちょっと待てよ?昨日はヤり終わった後くたばってたぞ!るい体力落ちたんじゃねえの!?」
「そうだなあと1ラウンドはできるようにお互い鍛えような。」
「…あっ…いや、…結構ですよ。」
自分から俺の体力が落ちたんじゃねえのとか言ってきたクセに、俺の発言で航は焦った表情を浮かべたから、俺はニヤリと笑って航に迫った。
「さっそく今晩続きする?」
「いやむりむり!」
「だってほら、昨日は俺がくたばっちゃったから。」
「…もっと早くくたばってくれてもよろしくてよ。」
「え〜?そしたら航くんのこと満足にしてあげらんないじゃん。」
航に迫り、腰に腕を回して、片手を航の尻の割れ目をなぞるようにズボンの上から触れながら、トン、と壁に航の身体を追い込むと、航は「いやいやいやいや」と首を振った。
「るい、そろそろみんな見てるからやめた方がいい。」
そして仁に冷静なツッコミを入れられる。
「は?」と顔を上げると、そこはもう食堂の出入り口付近で、周囲にいた生徒たちがまじまじと俺たちの様子を窺っていた。
しれっと航の身体から手を離し、何食わぬ顔で食堂に足を進める。
「仁くんあの人なんとかして。」
「ごめん無理。」
こそこそと航と仁の会話が聞こえてきたが、俺は素知らぬふりをした。
*
「航、今朝矢田くんに迫られてたらしいな?なんかショックで泣いてた奴居たらしいぞ。」
俺が登校してきて早々、クラスメイトはそんな話題を俺に振ってきた。
「は?いやいや泣きたいのは俺の方。」
「は?なんで?」
「連日でえっちされたら俺の尻が死ぬ。」
「え?航矢田くんとエッチしたの?」
「…あっ、いや…。」
いよいよ航とるいのえっち事情が、人々に知れ渡りはじめたのだった。
26.航とるいのえっち事情 おわり
next >>> おまけ
【 航からのオーケーサインが出るまでの流れ 】
[*prev] [next#]