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【 file8:るいの***の誘い方 】
「……るい?」
「ん?」
「あの、この体勢でのおべんきょはちょっと無理かと。」
「なんで?」
「……いや、あの、」
集中できないのですよ!!!!!
俺はくぅっ!とシャーペンを握りしめてからバンっ!とシャーペンを机に叩きつけ、振り返った。
「俺の尻に股間ひっつけてんのはわざとかな!?」
「うん。」
……う、うんってそんな…あんた…
俺の問いかけに真顔で頷いたるいに、俺は項垂れた。
前まではあんなに俺に真面目に勉強しろって言ってた人とは思えないくらい俺に勉強させる気があるのかと思ってしまうるいの様子に、俺は暫し戸惑ってみせる。
…と言うのも、るいが風呂に入ってるあいだ、せっせとるいの電子辞書を借りて英単語の意味を調べていた俺だが、いつの間にか風呂から出ていたるいが俺の身体を股で挟んでいい匂いをさせて俺の背後に座ってきたのだ。
これはもう俺に勉強させる気ないと見た。
「るいきゅん?あなた自分の予習やらなくていいのかな!?」
「もうやってある。」
「……いつやったの?」
「この前まとめてやった。」
さすが。
学年首席様をなめちゃいかんな。
「航も予習くらい一気にしとけよな。」
「おいおい…、お前さん俺の頭をなめちゃいかんよ?」
「でも航やればちゃんとできてるからまじなバカじゃねえよ。」
「褒めてんのか貶してんのかわかんねえな!?」
「俺が航を貶したことあるか?」
「貶してばっかだったじゃねえか!」
「…おっと、そうだったな。」
るいはわざとらしく口を押さえた。
俺はるいに言われたことは基本的にほとんど覚えている。バカでガキでクソガキで悪ガキで生意気で、えっとまあ結構口悪く罵られてたかな。懐かしい。
「今の俺は悪ガキか?」
「んーん。」
「生意気?」
「んーん。」
「バカ?」
「んー。うん。」
「おい。」
そこは頷くのか。
俺はちょっとショックだぞ。
「悪いとは言ってねえよ?」
「どういうこと?」
「お前のバカ発言は俺最近結構ツボってる。」
「どういうこった!?」
「雑魚寝をざっぎょしんって言ったの一番笑った。」
「もうそれは言わなくていい!!」
誰にでもあることだ、漢字をそのまま自分の思った通りに読んでしまうこと。え?ないって?俺はあるったら、あるのだ。
「雑魚って単語は読めるだろ?」
「読めるよ?」
「じゃあなんで雑魚寝になるとざっぎょしんなわけ?」
「だからその時たまたま読んじゃっただけだって言ってんだろ!?るいしつこいぞ!」
「だっておもしろいんだもん。」
るいはクスリと笑って俺の首に腕を回した。
やっぱり勉強させる気ねえな。
つーかまじでるいの股間ひっついてる。
「るいひょっとして誘ってる?」
「あ、やっと気付いた?」
……うわ、こいつ。
俺は無言で勉強を再開させた。
file8:るいのえっちの誘い方 おわり
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