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もうちょっとで、俺たちの学校は文化祭準備が始まる。文化祭準備が始まる前の生徒会役員は、とても忙しくなる。

だから最近、るいと会う日が減った。…が、まあ朝一緒に学校行ってるし、休み時間ちょこちょこ喋ってるしで不満は無い。


「やっぱ文化祭はさー、女装とかやってみたいよなー。」


そんなことを言って俺の目の前で夕食のオムライスを食べているのはなっちくんで、「あーいいね。セーラー服とか着てみたいね。」と返事をする。


「うわー、航が着たら微妙そう。」

「お互い様だろ。アキちゃんが着たら絶対似合うと思うから笑えなさそうだけど」

「俺らで笑いとるか。」

「そうだな。」

「やだよ、僕は航のかっこいい姿が見たいよ。」

「アキちゃん、俺らのクラス多分笑い取ることしか考えてねえよ。」

「絶対やだ!僕は航の気持ち悪い姿は見たくない!」


俺の隣に座ってそう言い張るアキちゃんは、そう言いながらバクバクと牛丼を食べている。


「かわいいアキちゃんが凄まじいスピードで牛丼食ってる姿もできれば見たくねえけどな。」

「僕今日お昼ごはん抜いたから凄くお腹減ってるんだよね!」

「あっそう。」


まあアキちゃんのお腹減ってる事情はどうでもいいとして。


「去年俺らやる気無さすぎたし今年はちゃんとやりてえな。」

「よく言うよ、俺らっつーか航がやる気無かったから俺らみんなやる気出せなかったんじゃん。」

「だってさあ、俺担任に余計なことしようと考えんなとか言われたから、あーそうじゃあなんもやんねーよって。」

「あーはいはい、なんか覚えてるわそれ。」


だから去年の文化祭は、あまり楽しくなかった。馬鹿騒ぎしたかったけど、担任すげえうるせえし。チクチク小言言われんのうざってえしな。…と去年の今頃のことを思い出しながら、パクリ。カレーライスを口に含んだ。

その時、食堂がザワリとざわついた。


「あ、航航、矢田くんきた。」


なっちくんが俺にそう教えてくれるが、俺の隣ではアキちゃんが「あーテンション下がったー」とぼやいていた。

食堂の入り口を見れば、るいと仁が食堂へ入ってきていたから、それで少し食堂内がざわついたのだ。いやあしかし俺のるいきゅんは相変わらず人気者だな。俺の、るいきゅん。


るいと仁は食堂利用者の視線を浴びながら、カウンターで飯を注文している。そして飯を受け取って、仁と会話をしながらテーブルに向かっていったるいは、俺の存在に気付くことなく奥のテーブルに腰を下ろした。


「航声掛けてくれば?」

「あーうん、今カレー食ってるし後でな。」

「航あっちの席移ったら?」

「ちょっとーなっちくん航に余計なこと言わなくていいよぉ?今航僕らとごはん食べてるんだからぁ!」


そうなっちくんに文句を言っているアキちゃんに、なっちくんは無言でオムライスを食べるのを再開させた。


「なっちくんってさ、ひょっとしてるいにびびってる?」


そこで俺はふと、思ったことをなっちくんに問いかけるとなっちくんは勢い良く「うんうんうん」と首を縦に振って頷いた。


「えーなんでビビるの?」

「この前なっちくん、俺にベタベタくっついてるところるいに見られたから。」

「えっ!なっちくんも航のこと好きなの!?」

「いや悪ふざけで。」

「そんなら僕なんかいっつも航にベタベタくっついてるよ?でも別に矢田くんなんか怖くないし。なっちくんも堂々としとけば?」

「晃って怖いもの知らずなだけじゃない?」

「そんなことないよ。はい、航あーん。」


アキちゃんはそう言いながら、俺が最後に食べるために取ってあるゆでたまごを丸ごと箸で挟んで俺の口元に持ってきた。


「おいおい、ゆでたまごは最後に取ってあるんだからな!」

「えー、せっかくあーんしてあげようとしてるのに?」

「てめえゆでたまご丸ごと食わす気か!?」

「がぶっていきなよ、がぶって。」

「無茶言うな。」

「おもしろくなーい。」

「晃、わざと矢田くんの前でやってる…?」


震える声で言ったなっちくんは、チラリと視線をるいが座るテーブルに向け、しかしすぐにバッとまた視線を元に戻した。

そんななっちくんの言動に、俺も視線をるいの方に向けてみると、るいは箸を持つ手を止めて、ジッとこっちを見ていたのだった。


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