4 [ 77/188 ]
その後るいは、俺の背をベッドの上に寝かし、洗面所へ向かい、手を洗って俺の出した精液の処理もしてくれた。
ベッドの上でグッタリとしていると、「ふっ」と俺を見て笑ったるいが、濡れタオルで俺の精液で汚れたアソコや腹を拭いてくれる。
少しだけスッキリすると、るいは俺のパンツとズボンを上げてくれて、「今日泊まってく?」と問いかけてきたから、俺は「うん。」と即答した。
だって動きたくないから。キモチイイコトした後だから、目がとろんとしてきて、すぐに寝れそうだ。
るいのベッドの上で大の字になり、目を閉じれば、すぐに睡魔がやってきた。
「風呂入ってから寝ろよ。」と言っているるいの声は微かに聞こえたが、俺は「んー…」と返事をしながら、結局そのまま爆睡した。
次に目を開ければ、石鹸の良い匂いを漂わせたるいがすぐ隣で眠っている。上半身裸で眠っていた俺だったが、るいと俺の身体に掛けられた1枚の布団をそろりとめくり覗き込むと、るいも上半身裸だったから、ナニとは言わないけどまるで事後のようだと思い、ちょっと照れくさくなったがちょっと待て、俺たちは決してヤっていない。
しかしそれでも照れくさい気持ちになるのは俺がるいの手でイカされてしまったからだが、そう言えばあの時るいのアレもすっげえ硬くなっていた。
俺ばっかりイっちゃってるけど、るいは大丈夫だったのだろうかと思ったが、まあそんな疑問は一時忘れて、俺はまだふわりふわりとした眠気が残っているから、せっかくだからとスリ、とるいの胸元に顔を寄せて、るいの腰を抱き締めて眠ってやった。
*
午前7時ちょっと過ぎ。
隣の矢田会長の部屋から、微かに話し声がする。俺、生徒会に所属している、1年Sクラス 古澤 貴哉(ふるさわ たかや)は、話し声が聞こえてくる部屋の外の声を聞くため、玄関のドアに耳をつけて、外の様子を窺った。
『なんか身体すげえベトベトする。』
『だから風呂入ってから寝ろっつったじゃねえか。』
『だって眠たかったもん。』
『部屋戻ったらちゃっちゃと風呂入って、8時前には食堂行くからな。』
『あのさあ、誰の所為でこうなったと思ってんだ?そもそもるいがとっととイカしてくれてたら、俺はこんなに疲れなかっ『声でけえって、まだ寝てる奴いるかもしんねえんだから静かにしろよ。』…あなた、ちょっと人のアレ握ってる時だけ別人になるのやめてくれないかしら。』
『お前も握られてる時は別人だけどな。』
『ファー!!!!!なんなんだよこのドS野郎!!!』
『ちょ、うるせえ…!叫ぶんじゃねえよ!』
『アイタっ。』
恐らく友岡先輩のだと思われるその声を最後に声は聞こえなくなり、ガチャ、と部屋の鍵を閉めた音がして、外はシーンと静かになった。
……やっぱり友岡先輩、あの後泊まったんだ。
俺は、昨晩の事を思い出して、ゴクリと唾を飲み込んだ。
自室で勉強をしていると、喘ぎ声が聞こえてきたのだ。それは多分、友岡先輩の喘ぎ声で、俺は隣の部屋で行われていることを想像する。
隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきたのは初めてで、俺はノートに走らせていたシャーペンを持つ手がついつい止まってしまった。
気持ち良さそうで、でもちょっと苦しそうな喘ぎ声だったが、喘いでいる時点できっと気持ち良いのだろう。
矢田会長とエッチをしたら、きっと凄く気持ちいいだろう、と矢田会長のことが好きなクラスメイトが会話しているのを聞いたことがあるが、何を根拠に。と思っていた。
しかし、隣の部屋から聞こえてくる喘ぎ声はとても気持ち良さそうで、無意識にシャーペンを机に置いて、恥ずかしながら俺の手は、無意識に陰部へ伸びていた。
「古澤!古澤!古澤!」
矢田会長と友岡先輩の会話を盗み聞きしたその後、学校へ行く準備をして食堂へ行き、朝食を食べていた俺の元に、仁先輩が駆け寄ってきた。
2年Sクラス 真山 仁先輩は副会長だが、恐ろしく副会長という言葉が似合わないため、後輩は皆仁先輩と呼んでいる。
「どうしました?」
仁先輩に問いかけると、仁先輩は俺の耳に口を寄せて、ヒソヒソ話をするように口を開いた。
「昨日さ、るいの部屋から喘ぎ声聞こえてこなかった…?」
「あ…。」
問いかけられた内容に、俺はなるほど、と理解する。仁先輩も矢田会長の部屋の隣だから、俺と同じように友岡先輩の喘ぎ声を聞いたのだ。
「…あの、はい。実は…聞こえちゃいました。」
少し恥ずかしくなりながら答えると、仁先輩の頬も少し赤くなっていて、恥ずかしそうに「やっぱり…」と呟いた。
「ってことはさ!?とうとうあの二人ヤっちゃったの!?」
「…さあ、どうなんでしょう…?」
「古澤ちょっとるいに聞いてみてよ!」
「ええ!?俺がすか!?嫌ですよ!仁先輩の方が矢田会長とよく話すじゃないですか!」
「聞き辛いじゃん!!」
「俺だって!!」
そんな会話をしていると、「なんだよお前ら騒がしいな。」と背後から矢田会長の声がしたから、俺と仁先輩の肩はビクリと跳ね上がった。
まるで俺と仁先輩を迷惑そうに見ている矢田会長だが、そもそもこの騒がしい原因は矢田会長あなたなのですが。という思いで矢田会長を見ていると、隣の仁先輩もそう思ったのか、むっとしながら仁先輩は、「お前らうるさすぎんだよ!」と勢いのままに矢田会長にそう言った。
「はあ?」と不思議そうに首を傾げる矢田会長の背後では、これまた不思議そうに俺たちの様子を窺っている友岡先輩。
「なにがだよ。」と矢田会長が仁先輩に問いかけると、仁先輩はこれまた勢いのままに「友岡くんの喘ぎ声だよ!!!」と叫んだから、その瞬間友岡先輩は、恥ずかしさのあまりか顔を真っ赤に染めて、「ハァァっ!!!」と謎に息を吸ったあとその口を塞いだ。
「…おい息しろよ。」
「ぶはっ!!!!!」
なにこの先輩天然なのかな……
奇妙な反応で喘ぎ声を指摘されて恥ずかしがっている友岡先輩にそんな感想を抱いていると、仁先輩は先程俺にヤったかどうか聞けとか言ってきたくせに、「お前らヤったの!?」と堂々と聞いていたから、俺は仁先輩すげえ、とちょっと尊敬した。
「ヤってません!!!!!」
真っ赤な顔をした友岡先輩がはっきりと否定しているが、ほんとかどうか分かりゃしない。
「嘘つくなよ!?あんあん聞こえてたんだからな!!!」
「あんあん!?言ってねえよ!!!お前耳腐ってんじゃねえの!?」
「よく言うよ!友岡くんイクイク言いまくってたくせに!」
「ファー!!!!!最悪だ!!!だだ聞こえじゃねえか!?穴があったら入りたい!!!!!」
「ほらな!やっぱあんあん言ってたんだろ!?ヤったんだろ!?」
「だからヤってねえよ!!!いやこれまじな話だってなあるい!?」
「どっちでもいいけどお前らここでそんな大声で話していい会話だと思ってんの?」
「はっ!!やだもっと早く言えよ!」
矢田会長に言われて、友岡先輩と仁先輩の会話が朝食を摂っていた生徒たちに聞かれていることに気付き、また友岡先輩は恥ずかしそうに息を吸った。
バカな先輩って分かってたけど、ほんとうにこの人バカだな、と俺は思った。
結局、矢田会長と友岡先輩がヤったかどうかという結論は、矢田会長の「どっちでもいい」と言う発言により、有耶無耶になってしまったのだった。
15.イジワルなキミの手で おわり
[*prev] [next#]