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「メール返ってくんの?」

「んー、びみょう。」

「返ってくるかわかんねえのに送んの?」

「返ってくるかもしんねえだろ?」

「矢田くんからのメールってどんな感じ?」


「ちょっと見せて?」と言うなっちくんは、俺のスマホを奪い取った。


「あっまだ見せるとは言ってねえ!」

「いいじゃんいいじゃん。」

「俺とるいのらびゅらびゅメール…。」

「……そんなにらびゅらびゅ感は感じられないけど……。」


俺の発言になっちくんは、渋い表情を浮かべながら、チラ、と俺に視線を向けてきた。


【 へえ 】

【 ふーん 】

【 あほだな 】

【 わかった 】

【 はいはい 】


「てか短っ!メール短いな!句読点すら見あたんない!!!」

「いいんだよ!メール読んでくれてるだけマシだろ!?」

「……わっ…航っ!おまえがそんなに健気なやつだったとはっ!俺見直したぞっ!」


なっちくんはそう言って、俺の身体を抱き枕のように抱き締めた。


「そうだろ!?俺ってまじ健気すぎて自分で自分を褒めてやりたい!!」

「あー自分で言っちゃうとちょっとイメージダウン。」

「じゃあ今のなしで。」


なっちくんは俺の身体から手を離し、俺のケツを枕にして寛ぎ始めた。しかもいまだに俺のスマホはなっちくんの手にある。いつまで俺とるいのらびゅメールを見る気だ。


「なんかさあ、お前結構頻繁に夜矢田くんの部屋から出てくるって話聞くけど?」

「うん。出てくるよ。って大橋マジでポテチと白ご飯交互に食うんだな、キモ。」

「キモい言うなうめえよ。」

「話逸れるから大橋お前ポテチ持って向こう行っとけ。」

「ええ、俺だって話聞きたい。」

「航夜矢田くんと何やってんの?エッチ?」

「おっ、モリゾーいきなり本題いったねえ。」


クソカベがモリゾーの発言にニヤニヤとした嫌な表情を浮かべた。


「あっ!!!クソカベてめえ納豆食い終わったんならとっとと残骸外に捨ててこいや!くせーんだよ!」

「ああもうほら話逸れる。日下部、ダッシュでそれどっか放ってこい。」

「えええ今このタイミングで?俺だって話聞きたい!」

「いいから早く!」


モリゾーはクソカベにそう促した。
ようやく納豆の入った入れもんが消えてくれて俺はホッと一息。


「で。え?なんだって?」

「いやだから、夜は矢田くんとエッチしてんの?って。」

「……なんだって!?!?!?」

「あーしてないしてない。モリゾー、航ウブだからそんなん絶対してないよ。」


なっちくんは俺の返事を聞く前に、モリゾーにそう言った。そのなっちくんの手にはいまだに俺のスマホ。

そろそろ返せ、という意味でスマホに手を伸ばすが、ひょいと遠ざけられてしまった。クソ。るいから返事が返ってたらどうしてくれる。


「えー、じゃあマジで夜なにやってんの?」

「予習復習。」

「えっまじで?」


とここで、暫くキムチを食っていた村下が驚いた顔で俺に視線を向けた。


「キムチ食い終わったんならお前もそれさっさとどっか持ってけよ。」


真顔で告げると「あ、うん。」と立ち上がり、部屋を出て行く村下。と入れ違いにクソカベが部屋に戻ってきた。


「納豆を食った手はちゃんと洗ったか!?」

「お前どんだけ納豆嫌いなんだよ!別に納豆触ってねーから大丈夫だって!」

「ああもう話逸れるからまじでクソカベ帰ってくれ。」


モリゾーにもクソカベと呼ばれてしまったクソカベくん。残念ながら俺の部屋で納豆を食べてしまった奴が悪い。


「つーか真剣に頭良くなる航とかヤなんだけど。航来年Eクラス卒業とかやめてね。」


真面目な顔して口を開くなっちくんの手には、やはり俺のスマホが。返せ、と手を伸ばせばやっぱりスマホから遠ざけられてしまった。クソ。てかそろそろ尻が重たい。頭を退けろと言う意味でケツの位置をずらせば、今度は俺の背中に頭を置かれてしまった。


「いーや、俺はEクラス卒業するぞ。だって俺がずっと頭悪いままだとるい勉強教えてくれてんの水の泡だろ?」

「えー、ちょっと待ってよ、航いないと俺ビリ候補じゃん。」

「俺がずっとビリだと思ってんなよ!?」

「いや、ぶっちゃけ航がビリなのって昔の話だから俺らそろそろ頑張んねえとまずいぞ。」

「だよな。つーか航とクラス離れんの普通にヤなんだけど。つまんねーし。」

「あらやだ、大橋いい事言ってくれんじゃん。一緒にEクラス卒業目指そうぜ。」

「言っとくけど俺だってビリとか関係なく航と離れんのは嫌だからな!」

「いやだからお前俺のあいふぉん返せって。」

「へい!なっちくんパス!」


なっちくんからスマホを取り返そうとすると、要らん事しいのクソカベがなっちくんへ手を伸ばした。「はい」とあっさり俺のスマホをクソカベに手渡してしまうなっちくんてめえ!


「はーいくっついてー」と俺のスマホをこちらに向けながらそう言ったクソカベに、なっちくんはのしっと俺の背中にのしかかって来てスマホに向かってピースをしている。


「は?」と声を上げた頃には、『カシャ』とおんぶバッタのように俺の上に乗っかったなっちくんとのツーショット姿が、俺のスマホで撮られてしまった。


この時点でなに人のスマホで写真撮ってんだ、くらいにしか思っていなかった俺だが、クソカベはなんとその写真を、るいに送信したようで、俺はそのことを数分後に知ることになる。


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