3. 好きなタイプ教えてね [ 67/163 ]
【 3. 好きなタイプ教えてね 】
「るいくんはどういう子がタイプ?」
3年Sクラス、生徒会副会長をやっていた僕は、後輩の拓也が生徒会に連れてきた1年Sクラス 矢田 るいくんが、タイプだった。
拓也もかっこ良くて好きだったけど、それよりもるいくんの方が、僕のタイプど真ん中だ。
一見無愛想な感じだけど、たまにクスリと声を漏らしながら見せる笑顔が、僕は大好きだった。
「…タイプ…っすか。」
るいくんは僕の問いかけに、困ったように黙り込む。すぐに答えられないるいくんに、僕はクスクスと笑った。
るいくん可愛い。
こういう、恋愛とかに興味無さそうな感じが、またクールで魅力的。
「僕はるいくんがタイプー。」
「…ありがとうございます。」
るいくんが生徒会に入ってから、僕はこうして、結構毎日るいくんにアピールをしている。
でもるいくんは、僕が先輩だから丁寧にお礼を言ってくれるけど、それ以上のことはない。
それから3年生の僕は、るいくんが生徒会に入ってからすぐに、生徒会引退の季節が来てしまった。
もっと一緒に活動したかったのに。
僕は悲しくなって泣いてしまった。
「副会長、またいっぱい顔出しに来てくださいよ。待ってますから。」
泣いてしまった僕に、るいくんは笑みを浮かべてそう言ってくれた。
僕はたまらずにるいくんの胸に飛び付いた。
生徒会役員のみんな、僕がるいくんのこと好きなの知ってるから、またやってるよ。っていう目で見てくる。
でも僕は、今までで一番強い力で、るいくんに抱きついた。
するとるいくんは僕の頭をなでなで、と撫でてクスクスと笑っている。
僕はその時、たまらなくなって、るいくんに本気の告白をしてしまったのだ。
「るいくん、好き…。僕と付き合って」
その時のるいくんは、驚いてキョトンとした表情を浮かべていた。きっと、僕が本気で好きだとは思ってもいなかったのだろう。
るいくんは困ったように僕の頭を撫でていた手を止めた。
「…ありがとうございます。俺も、副会長のこと好きですよ。先輩として…。」
付き合えない、ごめんなさい、とは言われなかったけど、“先輩として好き”という言葉が、僕にはやけに胸に響いた。
遠回しに断られていると気付いて、僕はるいくんの身体から手を離す。
「るいくんの好きなタイプって結局どんな子なわけ?」
僕はパッと気持ちを切り替えるように、明るく振る舞うと、るいくんはその問いかけに答えてくれた。
「……好きになった子がタイプ、…ですかね…。」
るいくんは困りながらも、そう教えてくれたのだ。
「好きになった子がタイプ〜?えー、一体どんな子なんだろうね?」
「…俺も分かりません。」
るいくんはそう言って、僕に笑みを見せてくれた。
あまり僕がるいくんに振られた、という空気を表に出さないるいくんのおかげで、僕は高校を卒業するまでの間、生徒会役員たちの様子を度々見に行くことができた。
かっこいいるいくんを見るたびに、僕はドキドキしたり切なくなったりしてしまったけど、僕はるいくんに告白したことを後悔はしていない。
何故なら僕の卒業の日、るいくんは僕に言ってくれたから。
「先輩の気持ち嬉しかったです。いつも俺に構ってくださってありがとうございました。お元気で。」
僕は、卒業式の日は泣かないって決めていたのに、涙が出てしまった。
「るいくん好きな子できたら教えてね。」
最後の僕の言葉に、るいくんは笑って頷いた。
それからおよそ半年後、るいくんは僕との約束を守ってくれた。
【 バカな子がタイプなのかもしれません。 】
るいくんは、僕に
そんなメールをくれたのだった。
【 好きなタイプ教えてね 】おわり
2015/12/09〜2016/01/15
拍手ありがとうございました!
[*prev] [next#]