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3つ目のアトラクションを降りれば、ぐーと腹の音が鳴り、お腹が空腹を訴える。
ひとまずなんか昼飯を食おう。と昼食を摂りながら、「次はどこ行く?」とパンフレットを眺めているるい。
「行くとこはもう決めてある。」
そう答える俺に、るいは何か言いたげにジーと俺のことを見つめてくる。
チューとストローでジュースを吸い込みながら、るいのことを見つめ返した。
暫しの沈黙後、るいは恐る恐る問いかける。
「…………絶叫系?」
「いえす!!!!!」
俺は間髪入れずに頷いた。
るいは「あああ…」と絶望的な表情で頭を抱える。しかし、パッとすぐに明るい表情に切り替え、口を開いた。
「あ!なあ航パレード見たくない?」
「パレード?いつ?」
「もうすぐパレードあるっぽい!」
「まじか!!!!!」
「あっパレード見たい?やっぱ見たいよね?じゃあこれ食ったらパレード見よっか!」
「あほ!パレード前に人気アトラクション並ばねーでいつ並ぶんだよ!!!」
「…、えぇ?」
「ほら早く食えって!!!あ、ジュースは持って並ぼう!!!」
「えぇぇ?ちょっ、航くーん?」
るいはパレードという単語を聞いてせかせかとし始めた俺に状況が把握できず戸惑っているようだ。
まあまあ。すべて俺に委ねるが良い。
いかに多くのアトラクションに乗れるかは、このパレードの前後で決まるのだ。
「行くぞるい殿!傾斜45度の急流滑りへ!!!」
「えっ!?…きゅっ、…きゅッ!?!」
「ほらきゅっきゅきゅっきゅ言ってねーで行くぞ!!」
俺はおぼつかない足取りで歩くるいの手を引いて、目的のエリアへと足を進めた。
「あ、あああ、あれに乗るってか…!?」
「うん。」
エリアに到着すると、バッサーと水しぶきを上げて下る急流滑りが堂々と存在している。
そんなアトラクションを見てしまい、るいは乗る前からよろりと身体の力が抜けたようにふらふらし始める。
お兄さんしっかりしてください。
「あ、俺身長制限引っかかってるかも」
「あほか。」
どうやら正気を失っているるいは、列の入り口にある身長制限の図に頭を合わせて間抜けなことを言っている。
恥ずかしいからやめてくれ、とるいを引っ張って列に並んだ。
「ちょっと待ってくれよ、あれに乗るってまじか?マジで言ってんのか?あんな水の中にあるレールを走るなんて危険だろ、傾斜45度?45度っつったらこんなもんか?これをお前、下るって?水の上を下るって?ハッ正気の沙汰じゃねえよ。やめた方がいい、水に滑ってレールから車輪が外れたらどうするんだよ。いやそもそも車輪とかあんのか?まさかレールの上にボート置いてるだけとか言うんじゃねえだろうな?」
「よく喋るな。」
「……………45度。」
「うん。45度。」
るいは腕を使って45度くらいを表している。恐らくイメージトレーニングをしているのだ。
「るい、そんなに考えなくても一瞬で終わるから。」
「ハァ、ハァ、ハァ、やべえ動悸が」
「がんばって。」
絶叫系だと分かった上で並ばせるのは初めてだけど、こりゃ大変だ。るいは心を落ち着かせるのに必死である。
困ったことにこれまたこいつイケメンだからすげえジロジロ見られてるんだけど、「ふぅ、はぁ、」とか言ってるから「あのかっこいい人さっきから大丈夫かな?」というような目で見られている。
「連れの俺がこんなに平然としてたらまるで心無いやつみてーだな。」
「…航、…俺のこと好きならさ、…こんなに怖がってる俺を見て、やっぱりパレード見よっか。…ってならねえ…?」
「怖がってるるい見る方が楽しい。」
「………心無いな。」
「ドボンするの楽しみだなー」
「…はぁ。エロい航想像して落ち着こ。………エロい航想像して落ち着こ。」
「何故2回も言った。変態だなおまえ」
「あ、ダメだ、想像したらヤりたくなるからダメだ。」
「今お前俺の裸体想像しただろ。最低」
「航くんなにかおもしろいこと言って。」
「ふとんがふっとんだ!!!」
「……笑えねえ。」
「だろうね。」
おもしろいことは振ってこられると逆に言えなくなるのだ。
とても優しい俺は、待ち時間のあいだるいが心を落ち着かせられるように、ずっとダジャレを言っていたけど、るいはひとつも笑うことはなかった。
「ああぁぁぁ…なんかここ涼しくなっていってね!?……なんか涼しくなっていってね!?」
「いちいち2回言わなくてもいいから。」
「なんであの高さから下るのにだんだん列下がっていってんだよ!おかしくね!?」
「そりゃあボートでグーンと昇ってからザッパーンっていくからだよ。」
「あああああぁぁぁぁぁ」
るいは髪をグシャグシャとかきむしって取り乱した。
クスクス笑い声聞こえるんだけど絶対笑われてんのこいつだ。
きっと今のるいは『残念なイケメン』と言われていることだろう。
「やばーい、すごい怖がってるー。大丈夫だよって頭撫でてあげたいねー」
「あー撫でてあげたーい!」
………ん?なんだって?
俺は背後から聞こえてきた会話に耳を疑った。
チラリと背後を見ると、女性2人組がるいを見て喋っていたから、俺は「チッ」と舌を打つ。
おまえこんなに醜態晒しても女の子に悪く思われねえとかさすがにちょっとむかつくぞ。
「お前頭撫でられるキャラじゃねえだろ!キャラぶれしてんじゃねえよ!!!」
「いってえ!?!?」
俺はとてもいい音をさせながらるいの頭をパシーン!!!と叩いた。
すると頭を抱えたるいが俺をジトリとした目で見る。
「航くん?………俺が如何なる時も航に優しいと思うなよ!?!?寮に帰ったら俺に絶叫系乗らせたことを後悔させてやるからな!!!」
「痛い痛い痛い!!!痛いから!!!進んでる!前進んでるから!!!」
るいは俺の首に腕を回してギュウギュウと締め付けてくるが、そうしている間にも2、3メートル列は進み、俺は必死に前!前!と指を指した。
やっぱり背後からは、クスクスと笑い声が聞こえていた。
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