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「るいのファーストキスっていつ?」
俺は、るいとの夕飯の時間、何を思ったのか突然そんな問いかけをしてみた。
それは多分、ただ単純に気になったからだ。
ちなみに、俺のファーストキスが高2だっていうことはるいに知られている。
相手が元会長だと言うことも。
その件では、少しるいと喧嘩になった。
まあその話はさておき、そこで気になったのはるいのファーストキスがいつなのか、ということだ。
凄まじくモテるるいのことだ、小学生の頃からその唇が狙われていたってなんらおかしくはない。
るいにその気がなくたって、押し倒されてブチュっとやられちゃってるかもしれない。猛烈なファンに。
それを聞いたからって、どうしようもないけど、るいのことはいっぱい知りたい。
もう過ぎたどうしようもないことでも、知りたいのだ。
俺の問いかけにるいは、暫し黙り込み、そして徐に口を開けた。
「高2。」
「……って今じゃん!…あれ?ちょっと待って…」
予想外な返答をされ、俺は驚く。
そして、俺はハッとする。
「….…アキちゃん…としてたやつ?」
そうだ、るいとアキちゃんはキスをしたことがある。あれは思い出したくない記憶。
そう言えばアキちゃんと以前ファーストキスの話をしたことがあるが、アキちゃんは俺がファーストキスの相手だと言っていた。
でも俺は知っている。
俺とする前に、アキちゃんがるいとキスしたことを。
だから、アキちゃんのファーストキスの相手は実質上、るいなのだ。
しかしるいは、「なんだそれ」とすっとぼける。
おいおい、俺は見たんだぞ。
忘れもしない記憶。
俺はあの時のシーンを思い出しては、そういやあの時ショック受けたよなあ、俺。としんみりするのだ。
まったく、アキちゃんは可愛い顔をしてやることがドス黒いんだから。
だってアキちゃん俺のこと好きだから、俺がるいを諦めるように、ってるいにキスしたんだよ?
他にもるいとキスしたい人いっぱいいるだろうに、そんな理由でるいとキスをしたアキちゃんって、ちょっと凄い。
おっと若干話が逸れてしまったが、つまり俺はるいとアキちゃんがキスをしたことを知っている。
そしてるいのファーストキスが高2だと言うのなら、相手がアキちゃんという可能性はかなり高い。
クッソ、お前ら互いにファーストキスの相手なのか!?とアキちゃんとるいに対して悔しい思いをしていると、るいはまたすっとぼけたことを言ってきたから、俺はもう呆れるしかなかった。
「航としたやつだけど。」
………おいおいちょっと待てよ、と。
俺はさも当たり前だと言うように言ってきたるいに、呆れてなにも言葉がでなかった。
俺とるいがはじめてキスをしたのはアレだ。Eクラスの教室で、アキちゃんとの会話をるいに聞かれ、俺のるいへの気持ちがバレた時。
るいは、あれがファーストキスだと言ってるのか?その前にアキちゃんとキスしてるクセに?
「お兄さん、すっとぼけるのにも無理ってもんがあるよ。俺はしっかりこの目で見てるんだからな、アキちゃんとるいとのキスシーン。」
「だからなんだそれは。」
おいおいおい。まだすっとぼけんのか!?しかもなんかムッとした顔し始めるし!!!ムッとしたいのは俺の方だ!
「してたじゃん!放課後、2人しかいない教室で!るいだって知ってんだろ!?俺がたまたまその場に出くわしてしまったこと!!!」
「なに言ってんの?あんなんちょっと口元が接触しただけだろ、キスとか寒くなること言うなよ。」
「口元の接触…それをキスと言うんでしょぉがああ!!!」
俺はるいの発言にガタリと椅子から立ち上がって言い返すと、食堂利用者の視線が一斉に俺に突き刺さった。
おっと興奮しすぎたな。失礼。
と思いながら椅子に腰を下ろすと、俺の正面に座っていたるいが今度は椅子からゆるりと立ち上がり、俺の隣の席の椅子を引き、その椅子に腰掛け、俺の首に片腕を回してきた。
なんだよまだ飯食ってる最中なのに。
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