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暖かいハルの腕の中。

オレは、ゆっくり目を閉じる。

とても居心地がいい。

睡魔はすぐに訪れた。



オレははじめて、ハルの腕の中で昼寝をした。

ハルの身体はとてもあたたかい。だからいつも、その身体にくっついて眠ってしまうのだ。

けれど今日は、うんとハルを独り占めするって決めたんだ。オレはハルから離れず、時を過ごす。

ヒロト、今日は我慢しろよ。

そんな思いを抱きながら、オレはゆったり流れる穏やかな時間を過ごした。



「にゃぁ〜。」



目を覚ましたオレは、大きなあくびをする。

暖かいハルの腕の中は、ほんとうに居心地が良く、よく眠れた。


機嫌が良いオレは、ハルの身体に擦り寄る。ハルは嬉しそうにオレを見る。

ハルはオレが大好きだから、いつもニコニコととても嬉しそうな顔でオレを見るんだ。

オレは、そんなハルの笑顔が好きだ。



でもそんなハルを、むっとした不機嫌そうな顔で見るヒロト。

その顔通り、ヒロトは不機嫌なんだ。

ハルがオレばっかり構うから。

すりすり。わざとオレはハルに擦り寄る。ヒロトはもっと不機嫌そうな、そして怖い顔をした。


挙句、むすっと拗ね始めたようで、無口になったヒロトにオレはなんだかちょっといじわるしすぎたかなって思って、数分後ハルの腕の中から抜け出して、ヒロトの足に擦り寄ってから、2人の側をそっと離れた。


「あー、むぅちゃんもうそっちいっちゃうの?」

「にゃ〜あ。」

「また明日も俺と遊ぼうねー。」

「にゃ。」

「はー、やっと俺の時間がきたか。」

「はあ?寛人の時間?」



オレが立ち去った後、背後からは嬉しそうなヒロトの声が聞こえてきた。

はいはい、お邪魔なオレはとっとと奥に行きますよ。



「うわっ!おいこら!暑苦し!!」

「おいおい、むぅは良くて俺はダメってか?」

「ダメダメ。むぅちゃんは別格だからな。」

「はあ〜?その返答には納得いかんな。」

「はあ〜?意味わかんねーよ。」



2人から少し離れた場所で丸くなる。

仲が良さそうな2人の会話が聞こえてくる。

オレはそんな会話を耳にしながら、もう一眠りしようと目を閉じた。


心地よい風がふいている。


オレは、こんな穏やかな時間とこの場所の空気と、そしてここにいつも現れる彼らが大好きだ。



『暖かいハルの腕の中』おわり


2015.04.04〜05.21
拍手ありがとうございました!


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