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「晴くーんチャイム鳴りましたけどー。」
「うん、鳴ったねー。」
「戻んねーの?」
「うん。だってむぅちゃんまだ寝てるし。」
晴はずっとこの調子だ。
むぅに対してデレデレデレデレ。
「ふーん。」
「寛人は戻んねーの?」
「晴いるならいる。」
「ふーん。」
こうして暫くの間、とても静かな時間が続く。
晴はずっとむぅの寝顔を眺めていて、楽しそうだ。俺は……ぶっちゃけ結構暇。
話しかけたら怒られそうだよなー。むぅちゃん起きる!とか言って。
「はー。」
ひっそりとため息をついたところで、「あ、むぅちゃん起きた?」という晴の声が聞こえた。
「にゃぁ〜。」
鳴き声を漏らして、クワァと欠伸をするむぅ。
「ふふふふむぅちゃん超可愛い。」
ニヤけた顔でむぅを眺める晴。
晴に抱っこされているむぅは、ふとこちらを向いた。
「ん?」
おや。目が合った。
ほら、やっぱむぅ、俺に構われてーんじゃねえの?とか思ったりして。
するとその直後のことである。
なんてこった!!!
すりすりすり…
むぅは晴の胸にすり寄った。
…違う…あいつ違うぞ…
俺に構われたいんじゃねえ…
俺に喧嘩売ってやがる!!!!!
俺は、この時生まれて初めて猫に敵意を向けたのだった。
「…ん?寛人なに怖い顔してんの。」
「…いや。別に。」
「にゃ〜。」
……むぅ、てめえ………
言っとくけど俺の晴だぞ!!!!!
それからというもの、いつもは気まぐれに晴の元に寄ってきたり、立ち去ったりするむぅが、今日は何故かずっと晴にくっついていた。
まあ当然、俺はおもしろくねえわな。
晴ずっとむぅに構いっぱなしだし。
のんびり穏やかな時間は好きだが、こうも俺自身を放置されていると話は別である。
「むぅくんちょっとこっちおいで?」
「あ!こら!俺とむぅちゃんのイチャラブタイム邪魔すんな!」
「…チッ。」
晴にそう言われてしまってはもうどうしようもない。
俺は大人しくむぅが晴から離れるのを待った。
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