7. 佑都と光のクリスマス [ 159/163 ]

※ hirudr!完結後のおはなし

〜 光高校1年、佑都高校2年 冬 〜


「ねぇねぇ佑都、クリスマスって24日か25日どっちがメインだと思う?」

「どっちでも良いだろ。」

「じゃあ佑都はどっちが良い?」

「どっちでも良い。」


まじでどっちでも良くて光の問いかけにそう答えたら、光はちょっと拗ねるように口を膨らませた。そんな光を無視して俺は実家に帰るために数日分の下着や服を適当に鞄に入れる。

ちなみに冬休みに入ったばかりの今日が23日で、明日がクリスマスイブだ。まさか俺に何かお願いでもあるんだろうか?と光の方に振り向いたら、光はまだ拗ねるようにムスッとした顔をして無言で俺の部屋のテレビを見ていた。


「光、クリスマスケーキでも食いてえの?」


さすがに無関心すぎたか。と光に俺から話しかけたら、光は何か言いたそうにしながらも何も言わずに「んん…。」と目を泳がせている。


「明日家帰る時買って帰れば?」


さらに続けてそう言ってみるが、光はまた拗ねるようにムッと唇を尖らせた。…一体なにが不満なんだ?


「おい、なんなんだよさっきから。」


意味不明な光の態度にイラッとして、むぎゅっと光の顎を掴んだら、さらに不機嫌そうにムッとした顔をさせてしまった。光のご機嫌取りをするようにそのムッとした唇に軽く唇を重ねたら、光の顔はすぐに機嫌が良くなるようににこにこになる。


「クリスマス俺となんかしたいの?」

「うん!」

「なにすんの?」

「佑都とデートしたい!」


一度キスをした後はコロッと態度が変わり、期待たっぷりの目をしてそう言われてしまった。……デートって?なにすんのがデート?二人で出掛けるだけでいいのか?


「明日家帰る前に寄り道するのでいい?」

「うん!イルミネーション見て帰りたい!」

「分かった。じゃあイルミネーションな。」


それくらいなら全然、と快く頷き、光にも実家に帰る準備をさせた。光はずっと鼻歌まじりで機嫌良さそうに、鞄の中にボスボスと服を詰めていた。


そして翌日、朝から実家方向へ向かう電車に乗る。隣を歩く光はずっと「ジングルベル、ジングルベル」と歌っていて上機嫌だ。


「佑都昼ご飯何食べたい?」

「あー…ご飯なぁ。なんでもいいよ。」


どうやら光は俺に適当な返事をされるのが嫌なのか、『なんでもいい』って言った瞬間にちょっと無表情になった。

光の顔を見ただけでわりと感情が読み取れてしまい、続けて「あー…やっぱうどんかラーメン食べたいな。」って言い直したら分かりやすくにこっと笑顔になり、「鍋焼きうどんがいいな!」と言い出した。


「おぉ、良いな。鍋焼きうどん。」


全然クリスマスっぽくねえけどいいのか?いや、ていうかクリスマスってまじでなにする行事?デートってどこ行けばいいんだ?まったくわからん…。


「鍋焼きうどんであったまってからイルミネーション見に行こう!」

「うん、じゃあそれで。」

「ツリーの前でチューしたいな!」

「は?冗談だろ?」

「…言ってみただけでーす…。」


デートもイルミネーションも可能な限り光の希望を聞いてやりたいと思うけど、さすがに人前でキスはあり得なくて真顔で返せば、光はシュンとテンションを落とした。


繁華街にやって来て、光が行きたがった店について回ったりしてから、昼時になりうどんの店に入る。寒い日に食べる温かいうどんはめちゃくちゃ美味い。


腹も膨れたところでまた街をうろつき、光は一軒の服屋の前で立ち止まり、ジー…とマネキンがつけているマフラーを見つめ始めた。


「ん?マフラー?欲しいの?」

「佑都とおそろいでつけたい!」

「…え、……おそろい?」


いや、無理です。てかまず派手だろ、このマフラー。…って、赤、青、ベージュ、3色のチェック柄でおしゃれだとは思うものの俺が身に付けるには少しキツく感じてしまい、そんな感情が顔に出てしまっていたのか光はすぐにまた「…言ってみただけでーす…。」と言ってその場から立ち去ってしまった。

多分光は、俺と“恋人らしい事”をしたいんだろうけど、俺に恥じらいがありまくりなのと俺の性格てきにとても光の希望を叶えてやれそうにないことばかりだ。


クリスマスの楽しい雰囲気とは真逆に、光の表情をどんどん曇らせていってる気がして、これはちょっとまずいな…と少し焦ってしまい、光が他の商品を見ている間に店員さんにコソッと話しかけた。


「…あの、すみません、…あそこのマネキンがつけてるマフラーありますか?」

「あ!はい!すぐにご用意しますね!」


店員さんがそう言って商品を取りに行ってくれた隙にお金を用意していたら、「ん?佑都なにやってんの?」ってマフラーを買おうとしているのを光に見つかってしまった。


「こちらでお間違いないですか?」

「…あ、はい合ってます。」

「え?佑都買うの!?」

「うるせー!!お前のだよ!!」


バン!とお金を受け皿に置いてから、店員さんの手からマフラーを奪い取って光の首に巻いたら、店員さんと光に「「わっ」」と同時に驚かれてしまった。


「えっ!!佑都買ってくれんの!?」

「うるせえからお前あっち行ってろ!!」

「あ…5000円でよろしいですか…?」

「はいそれで!!」


あっち行ってろって言ったのに、光はずっとパァッと嬉しそうな笑みを浮かべながら俺をジッと見上げている。


「佑都これクリスマスプレゼント!?」

「うるせえな!そうだよ!!お前早くあっち行ってろよ!!」

「やったぁ!!佑都からプレゼント貰った!!」

「だからうるさいってお前、あっち、行ってろ!」

「お姉さん見て見て、佑都に貰った!」

「ふふふ…、お客さまよくお似合いですよ。タグお切りしますね!」

「えへへやったぁ!!お姉さんありがと〜。」


テンション高く店員さんにまで絡み始めてしまった光に、にこやかに受け答えしてくれる店員さんは俺の顔を見るとクスクスと笑ってくる。そんな店員さんの反応に俺は顔から火が出そうになるくらい恥ずかしくなってしまい、お釣りを貰ったら素早く光を引き摺って店を出た。

その後の光はまた「ジングルベル、ジングルベル」と歌い出し、うるさいくらい上機嫌だ。



「光さんそれでクリスマス満足してくれました?」

「うん!佑都ありがとね!大好き!!」


夕方になり空が暗くなってきた頃イルミネーションの前まで来ると、光は恥ずかしげもなく大声でそう言いながら俺の腕に抱きついてくる。

ああ…もういいや、今日だけな…。って、恥ずかしさに耐えながら、光を腕に抱きつかせながらイルミネーションを見て帰った。


クリスマスの過ごし方は俺にはまだまだよく分かんねえけど、来年からはプレゼントくらいは用意しておけば、まあそこそこそれらしくはなるかな……って、俺は少しだけ学んだのだった。


佑都と光のクリスマス おわり


[*prev] [next#]

bookmarktop

- ナノ -